悪魔と天使の関係、【神王教】
とりあえず、俺へのお父様発言は後で問いただすとして、天使の方をどうにかしよう。
「宿まで運ぶか・・・」
なんか、誘拐してる気分だよ、畜生。
「では王。私が先に部屋を用意しておきますので」
「あいよ、頼んだぞ」
「はっ!!命に賭けて」
賭けなくていいんだよ、部屋ごときで。
「よっと、早く宿に行くか。この娘を落ち着かせよう」
「「「「はーい」」」」
というか、なんでこんな面倒事に関わっちゃうんだろう。
「宿って言うよりも、旅館だな」
そこには、老舗日本旅館があった。白米が食いたいな。
中に入ると、靴置きがあった。ここも同じか。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件で?」
奥から和服を着た人が来た。女将さんかな?
「先に来た人がいたと思うのですが」
「ああ、先程の方のお連れ様ですか。では、こちらへ」
女将さん(仮)についていくと凄い高そうな部屋に着いた。
え、ここ?ザルバの奴、店員さんになんて言ったんだよ・・・。
「では、こちらがお客様のお部屋でございます。夕食は、下の階にある宴会場でお出ししますので、6時ぐらいに来ていただけると幸いです」
夕食か・・・。白米あるかな?こっちの世界に来てから、全く食べてないからな~。
日本人は米を食わないと死んでしまう!!
ちなみに、ゴーレムでも食事はできるらしい。
「では、ごゆっくり・・・」
そう言って、女将さん(仮)は立ち去った。
「あ、王。ここの【和菓子】と【緑茶】なる物は大変美味しいですよ」
なんか、先にくつろいでいるんですが・・・。
さて、いろいろ落ちついた所で。
「全て話してもらいましょうか?」
「何で、マスターの事を【お父様】って言ったの?ラトアにも分かるように話してね?」
「返答によっては、あなたの首と体が永遠にサヨナラするけどね」
我らが三人娘が発生させている冷気の影響で、俺達の部屋の気温が-を超えております。
「お、王よ。さ、寒いので、外に行きませんか?」
「ザルバよ、そうしたいのは山々なんだが体がそれを拒否するのだよ」
動いたら、命の危険に晒されそうで。
「で、ですが」
「ザルバ、諦めて二人で和菓子と緑茶を飲もう。少しでも、何かしていたい」
そうでもしないと、気が落ち着かない!!
だけど、このこの部屋のみに発生している異常気象の原因であるディアは、
「ん?・・・ああ、その事か。一応話しておくかのう」
一応って言いやがったよ、こいつ。
また、気温が下がっていくんですけど!?
ザルバは・・・震えすぎて実体を確認できないんだけど・・・。
「それはな、妾の父上がもうこの世にはおらんからじゃ」
え、そうなの?
詳しく聞いたところ、500年前の聖魔大戦という、悪魔と天使と人類の戦争があったらしくその時にディアの父親は戦死したらしい。
「そんな事が・・・」
「大丈夫?辛くない?」
「なるほど、そのような事が・・・」
三人娘が発生させている冷気が収まったため、気温が戻った。
ザルバは・・・
「王、これからもあの三人を怒らせないようにしましょう」めっちゃびびってた。
「うん、そうしよう。そうしないと死ぬ」
俺達はそう、神に誓った。
俺もディアの事情を聞いて、まあ良いかなと思っている。というか、こういう娘には言っても無駄だなと諦めている。
「ところで、この天使の娘はどうするの?」
一応、布団に寝かしてあるけど・・・。
「ああ、彼女はしばらく目は覚めんじゃろう。封印の力は主に天使に作用していたから、ダメージが残っているはずじゃ」
ん、何で天使にダメージがあるんだ?普通、悪魔の方がダメージあるんじゃないの?
「まさかあの教皇、真実を隠しおったな。もしや、理由も・・・」
ん、何の事だ?
「お父様、どうして妾達が封印されておったか、知っておるか?」
「悪魔を封印するのには天使の力を永久に与えないといけないから、一緒に封印されていたんじゃないのか」
ルーティアが教えてくれた事をそのまま言う。
「やはり、そこまで偽りの情報を流したか。あの化け狸め・・・」
おお、なんかお怒りの様子。って後ろからTHE悪魔みたいなオーラが出てる!?
とりあえず、ス●ンド使いと化したディアを宥めて詳しく聞く事に。
「そもそも、妾達悪魔族と天使族は歩む道は違うが、最終的に行き着く場は同じ。だから、敵対せず友として互いに協力しながら生きていた」
へー、意外だな。悪魔と天使って仲が悪いイメージだったけど。
他の皆も、ちょっと驚いているみたいだ。
「そんな中、妾達の持っていたとある『モノ』が欲しがっていた者がいた」
とある『モノ』ってなんなのか、凄い気になる。悪魔族が持っていた物ってヤバいイメージしかないんだけど・・・。
「その者の名は『ハゲーダ・カラカ・ツーラ』。神王教の初代教皇じゃ」
禿げだからカツラ?可哀想に、毛根死滅してないかい?
「そもそも神王教って何だ?」
まず、それが分からないからどうしようも無い。
「いや、妾も敵には興味なかったから知らんのじゃ」
そりゃあそうだ。
「私が教えるわ、神王教の信徒じゃないけど一般常識程度には知ってるから」
おお、ルーティア。こういう人族関係の説明の時は頼りになるな。
「神王教は100年以上前に誕生した宗教で、光属性の適正者の大抵は神王教に入信するわ。確か、教えは『神王様の加護を最も受けているのは、我ら人族である。我らこそ神に最も近き種族である』だったかしら。聞いてて、眠くなってきたからあまり覚えてないけど」
うわー、要はあれだろ?人族至上主義だろう。ないわー。というか眠くなるな、失礼だぞ。
「ところで、ハゲータは何を欲していたのだ?」
あ、珍しくザルバが口を出してきた。いつも黙っているのに。
「それはのう、槍じゃ」
「「「「「槍?」」」」」
悪魔の使う槍って呪われてそうだな。なんとなくだけどね。
「うむ、悪魔族の恩人から授かった槍でな、銘は【増魔槍 グラングル】。永久に魔力を生み出す槍じゃ」
うわ、なんか凄そうな感じだけど・・・神魔炉より少ないだろうな。
「とにかく、グラングルを欲していたハゲータは天使を人質に妾達を誘き寄せ、グラングルを手に入れて妾達を天使と共に封印したのじゃ」
最低だな、やることが。
というか、何でグラングルが欲しかったんだ?
「ハゲータがグラングルを欲していた訳は、当時帝国に滅ぼされたシルア王国にいた大賢者の作った魔道具だと思ってからじゃ」
え、シルア王国?
あれ、もしかして『禿げだからカツラ』さんが欲しかったのってもしかして・・・
「その魔道具の名は【神魔炉】。永久に神の如く魔力を生み出す最高の魔力生成装置。奴はそれが欲しかったのじゃ」
・・・ヤベェ。俺、下手に教会に行ったら神魔炉盗られるかも。
「まあ、教会に行く事ないから別にどうでもいいか」
「妾は、皆の敵をとりたいが、お父様がかまわないなら別に良いかのう」
いや、良いのかよ。
・・・ん?




