馬娘の違和感すごくない?
競馬界では直系の子供を「産駒」といいますがわかりにくいのでこういった用語は避けて記述しております。
いや、あの容姿ではなく設定とストーリーの整合性がという意味で。
多少競馬を好む人間なら知っていると思うが、今の日本競馬界においてはその殆どがとあるオスの馬を血統としている。
サンデーサイレンスである。
このサンデーサイレンスがどれだけ凄いかというと。
「こいつ凄い強い馬だな」といったら、2000年代前半だと大半が「父親がサンデーサイレンス」という状態だった。
そして現在は「この馬凄い強いな」と思うと、祖父が「サンデーサイレンス」という状態である。
最近よく話題になったキタサンブラック(祖父がサンデーサイレンス)も、日本人が一度は聞いたことがある名前であるディープインパクト(父親がサンデーサイレンス)も、人間で言えば実は親戚。(というか現在はそこら中親戚だらけでとあるレースでは出場する馬が全員同じ父親だったとかいうこともあった)
サンデーサイレンスの詳細についてはwikiでも見てもらうとして、どうしてこうなったかというとコイツを父とした息子または娘があまりにも勝ちすぎたからである。
勝ちすぎて種牡馬としての記録を持っているぐらいである。(リーディングサイアーといって、息子または娘が勝利した勝利数の記録が尋常ではなく、10年以上その立場を誇り続けた。つまり息子または娘にあたる存在がみんな化け物だった)
いわばジャンプ漫画でよくある主人公の父親みたいな存在だが、競馬世界では冗談抜きで血統が全てなので、当然「勝ちに行く」となったら父親が偏るなんてよくあることで、こいつの存在によって日本競馬界では逆に「近親相姦になってしまうので交配が大変」ということになってしまっているほどだ。
なんていうかナルトの世界みたいに見えるが「こいつも天才か」みたいな感じの描写はむしろ現実世界の競馬用の競走馬にこそ当てはまる言葉のように思う。
ちなみに主人公のスペシャルウィークとサイレンススズカも両方とも父親(?)はこの化け物であり、
腹違いの姉妹なのだが、その描写全くないね。
おかーちゃんおかーちゃんうるさいんだけどお前ら父親同じだから!
しかもどっちも母親よりも父親の方がヤバいから!
実はこの2名が生まれるあたりの頃、まだサンデーサイレンスはそこまで評価されていなかった。
今日では不動のブランドであるサンデーサイレンス系であるが、サイレンススズカが生まれた頃はまだ「未知数すぎる存在」だったので、種付け料も安かったのだ。(この後一気に高等し、市場が大荒れとなる)
しかしサイレンススズカがデビューした頃にはすでに評価が逆転。
「革命的な存在」としてその直系の子供達は価値を見出されていく。
サイレンススズカはその中でも当事としては突出した存在と称されていたが、
コレが出た頃にはすでに「サンデーサイレンスの血統は強い」という認識が確立されており、一度セリ市(持分という形で馬を購入し、馬主になるための市)に出れば圧倒的な高額で奪い合いが展開される状態で、もうなんていうか「安心と信頼と実績を持つサンデーサイレンス系」みたいなものが出来上がっている。
スペシャルウィークはそんな中で「元は純粋な人の乗る競走馬扱いじゃなかったが、父親が偉大すぎるのに合わせて本人も明らかに体格的に優れレース向きな性格だった」ということから大急ぎで調教してデビューした存在であり、
このあたりは2話のイメージからそこまで乖離しないが
現実世界ではこれがデビューした時にはすでに「こいつ自体が周囲からものすごく期待されていた」りする。(デビューから騎手が武豊である時点で明白)
実際にデビュー戦の時の時点で1番人気である。(まあ、スペシャルウィークがデビューする頃には親がサンデーサイレンスというだけで人気が集中するほどだったんだけど)
なので「なんでこんな大したことないそこらにいそうな馬みたいな」扱いになっているのか?と思うわけである。
むしろ逆に「お前の父親(?)ってあのサンデーサイレンスらしいじゃねえか」みたいな感じでコロコロやジャンプの王道的な展開の方がイメージとして合うのと、騎手という存在がどういう扱いか知らないが
「なんであんなどこの馬の骨ともわからないのが武豊なんだよ!」みたいな展開があってもいいよね。
設定的に見ると「彼女達は馬の生まれ変わり」らしいのだが、だとすると余計に「サンデーサイレンス系」だけのエリート組で構成されてても不思議ではないはず。
特に最初に種付けされた世代はサンデーサイレンスの種牡馬としての能力が未知数すぎるということで純粋な日本競馬としての競争馬としてきちんと調教されなかった連中が結構おり、スペシャルウィークもその例に漏れない。
ようはスペシャルウィークは突出した才能を持っていたが調教がやや遅れた中で成績を残した(後のサンデーサイレンス系に共通するもの覚えが早いという才能が生きた)存在であり、そういう連中はスペシャルウィークが出る前ぐらいの頃には少なくなくて後で調教師などが「だから乗馬用にするのは勿体無いといったのに」みたいな話が残っていたりする。
だとしたら「今度こそ競走馬として1から育てる」ということでサンデーサイレンス系が集められても不思議じゃない。
まずスペシャルウィークがどうしてあの学校に向かうことになったのか不明だが、周囲の連中も、もっとそういう扱いしてやれよと。
それこそ「学校」レベルでサンデーサイレンス系だけが固められても不思議じゃないんだあの血統は。
というか、一度は日本人も聞いたことがあるであろうディープインパクトあたりの頃になると学校にいるのは殆どが同じ父親か同じ祖父を持つような連中ばかりになり、それ以外は除け者にされるレベルである。
あの作品の矛盾点は恐らく「馬の生まれ変わりで、その生まれ変わりがやはり生まれ変わる前と同じ記録を持ちつつも」なぜか競争結果関連では当事の情勢を微妙に反映しつつ、当事の情勢のイメージをかなり乖離しているという点である。
まあ学校の描写を見るになんか期待されているので、本人に説明しないだけで周囲はそういうイメージを共有しているのかもしれないが、だとすると今度はサイレンススズカの描写は明らかにおかしい。
サイレンススズカがデビューした頃、すでにサンデーサイレンスの子供にあたる存在の優秀さは評価されていた。
そのため新聞には「サンデーサイレンスの血統の中で大物の中の大物」と書かれるぐらいで「周囲はスズカの凄さがわからない」とか「そんなことあるわけねえだろ」というレベルの存在だった。
当事三冠馬となっていたナリタブライアンの騎手をしてデビュー時点で「こいつナリタブライアンに匹敵するぞ」というほどであり、ジャンプ漫画でよくある主人公のライバル的なエリートそのものに近い存在だったりする。(ナルトでいう、うちはイタチレベル)
あのこれまた日本人なら知っている人も多い武豊をして、見た瞬間に「何で自分はこの馬を逃したのか」というぐらいであり、劇中の「凄い才能を持っているが認められていない」みたいなものとは違う。
そのため、サイレンススズカが思ったように成績を出せなかった時に批判されたのは他でもない「騎手」であり、馬のせいじゃないみたいに言われていた。
今でもその評価は変わらないが、当初期待通りに戦えなかったのはどちらかといえば「乗り手である騎手」が性格と特性を生かしていなかった部分が多く、後に「タブー破り」をしてまで、かの有名な武豊が自ら「乗りたい」と指名し、愛馬としてからは圧倒的成績を誇るようになる。
というか武豊になってから死ぬ直前まで負けたことがない。
なんか重大なネタバレのような気がするが、連勝を重ねた結果期待された天皇賞にてサイレンススズカは骨折して競争中止となり、そのまま安楽死という形となって亡くなってしまった。
武豊をして「これまで出会った馬の中でも最強クラス」という馬であり、当事すでに「今世紀(20世紀)最強クラスの逃げ馬」みたいな宣伝がされており(多分日本競馬界では、ほぼその評価で間違いない)、やはりストーリー的には激しく違和感を感じる存在である。
このサイレンススズカとの別れは彼にとって相当ショックだったらしく、自著にもそのことが記述されるが、それだけでなく特番などに出ても名前を出すぐらい思い入れ深い馬だったりする。
その後彼はサンデーサイレンス系の馬にかなり拘りを持つようになり(本人はハルウララで走った後にコメントしたように、強い馬で圧倒的な勝ち方をすることこそ競馬騎手の誉れとしているので当然強い血統に拘る)
そこで見出されたのが他でもないスペシャルウィークなのである。(まあサイレンススズカに乗る傍ら、スペシャルウィークでも武豊はレースしているわけだが、スペシャルウィークデビュー前後の武豊はサイレンススズカを逃しており、同じ血統でサイレンススズカに匹敵するサンデーサイレンスの血統をもつ存在としてあてがわれた経緯がある)
ただし、スペシャルウィーク自体は武豊にダービー初制覇をもたらしたが、サイレンススズカの再来と本人が主張したのは日本人なら1度は聞いたことがある、あの有名な「ディープインパクト」であり、
以前雑誌で「最高の状態の豊さんと最高の状態のディープインパクトと勝負するなんていう不思議な状態になったら今の豊かさんはどの馬を選びますか」の回答に「サイレンススズカ」と即答するぐらいだったりする。
ディープインパクトに勝てる馬はサイレンススズカしかいないということは自著にも書いているぐらいだが(どうしてそうなのかは非常に詳しく記述されているので彼の執筆本を一度見てもらうと面白いかもしれない)
問題は馬娘にそのディープインパクトがいないことだ。
最強すぎて出せないとでもいうのだろうか?
別にあいつ以外にも三冠馬は他にもいるのだが。
さて、そんな感じでなんかディスってる気がするスペシャルウィークだが、記憶が間違ってなければ武豊が乗った馬の中で最も賞金を獲得した馬のはず。
三冠馬にはなれなかったけど、勝ち数自体は少なくなく、出たレースで3着より下だったのは1回だけ。
つまり毎回1~3着に入るという勝負強い馬ではあった。(賞金が高いというのはつまり人気が低い中で勝利したということになるがそういう意味ではいい意味で期待を裏切る名馬とも言えるのと同時に才能的にはそこまで評価されなかったとも言える)
ただし本物の化け物であるディープインパクトは2位に1回なったことと失格になった事以外は全て1位であり、この馬が有名になった要因は大体その「本物以上の強さ」に起因している。(まあ中央競馬の数少ない三冠馬なので強さとしてはスペシャルウィークと比較にならないのは当然)
さて、余談だがディープインパクトが今でも話題になる要因がある。
それは彼の子供がまた優秀だからである。
サンデーサイレンスの直系の中でも突出して優れた成績を出した本人が種牡馬としても尋常でない成績を出すというのは競馬界から考えると実は割と珍しい例だったりする。
やはり人間もそうだが、活躍した人間の子供がまた活躍するという例は少ない。(血統に拘って金を浪費した結果上手くいかず牧場などが潰れたことすらある)
逆に「血統はいいがそこまで活躍しなかった馬と同じく血統だけでパッとしなかった馬から化け物が生まれる」ということはよくあり、最近よく話題になったキタサンブラックはどちらかというと血統はいいが両親の活躍度で言えば劣る存在から生まれた名馬といえる。
いや、だからこそ「活躍した存在から活躍するやつらが生まれ続ける」というのは稀有な例であり、そうなってしまうとその血統だらけになってしまうというジレンマを孕んでいる。(その血統が特定の病気に弱いなどの弱点があると大変なことになったりする)
サンデーサイレンスの場合は日本の競馬の血統に新たな息吹を吹き込もうとした人物が最後の仕事として米国から購入してきたわけだが、
実はサンデーサイレンス自体は母親の血統がそこまで優秀ではなく米国ではそこまで種馬としての評価は高くなかった。(後に米国がこの血を欲しがって子供を購入していくような逆転現象があったが)
母親がの血統が優秀でないから評価が低いというのは、競争馬の世界ではとある常識があったためである。
それは体格や筋肉などは母親から遺伝するがこれはある程度遺伝し続ける特性があるためサンデーサイレンスは母親と同様体格がそれほど良くなく、この遺伝傾向が続く可能性があったためである。
(実際、サンデーサイレンスの子供は生まれた時に体格が良くないケースが多々あり、ディープインパクトも幼い頃は体格が良くなかったしサンイレンススズカやステイゴールドなども体格は小柄)
コレは余談だが、体格や筋肉はメスというが、ではオスは何かというと(骨格)や性格、メンタル面などであるとされる。
特に性格については荒々しい父親だと荒々しい子供になることが多く、メンタル面が強いとメンタル面が強い子供が生まれ続ける傾向がある。
サンデーサイレンスがここまで種牡馬として大成した影響には、勝負を最後まで諦めない鋼メンタルと、強靭な精神力という部分が子供にも遺伝するという部分が大いに関係しており、
事実サンデーサイレンスの直系の子供で活躍する馬はほぼ全て「強靭な精神力を持つ」とされる。
これはスペシャルウィークも例外ではなく「勝ち負けにおいてもっとも重要な要素」であり、100%の力を出し切る性格を遺伝し続けたからこそこの系統が栄えているわけである。(ここはアニメでも描写されている気がする)
当時これを約16億円という米国の競争馬としては破格だが日本としてはバカげた額で購入してきた時、周囲はサンデーサイレンスの体格から「あの馬鹿、アメリカからカバを購入してきやがった」などと嘲笑されるほどだった。
後にそのカバと馬鹿にされた存在が日本の競争馬の中心的血統となるのは皮肉だが。
それが当初の種付け料の低さと、生まれた子供が「競走馬扱いじゃない」といったようなことが発生したわけだが、
連れて来た本人はサンデーサイレンスの血が日本の競馬界を飲み込むと確信しており、実は子供がデビューする前に亡くなってしまったのだがそのような遺言のようなものを残している。
実際にそうなったが、本人はその状況を見られなかったのは悲しいことである。
最後にどうでもいい話かもしれないが、直系の血統を見ると登場人物の大半が日本人といえるが主人公含めた3割ぐらいはハーフであり、主人公は「こいつのとーちゃんは北米の血統」ということでアメリカやカナダなどの血が入るハーフである。
あとどうでもいいが1話に出てきたフジキセキはサンデーサイレンス旋風を巻き起こした代表的な存在で腹違いの姉にあたる。
こいつらもっと日本人らしくない見た目でもよくない?
(もっと言うとディープインパクトは日本国籍なだけの外国人だったり)
それともう1つ最後に。
どちらかというと実はサンデーサイレンス本人の方がよっぽどジャンプ漫画の王道の世界を歩んでたりする。
日本の地方競馬にあたる場所で勝利していたサンデーサイレンスはその能力を買われてケンタッキーダービーという米国では屈指の大会の出場をするわけだが、
この時ライバルとされた相手であるイージーゴアは超一流の血統を両親に持ち、米国では伝説とされるセクレタリアトの再来といわれる、絵に描いたような王道バトル漫画のライバルポジションだったわけだが、サンデーサイレンスが勝利してしまうのである。
しかもこの時のイージーゴアは圧倒的記録で圧勝しており調子が非常によく、1番人気だった。
その後、イージーゴアとはライバルという扱いになるが先に二冠を達成したのはサンデーサイレンスの方。(実は当時からこの二頭の戦いは大変人気があり、サンデーサイレンス自体はグッズなどもよく売れるほど人気がある馬だったが、そんなのが日本に来るなど通常はありえないぐらいである)
なんというか「おい主人公としては間違いなくお前のほうが正しいだろ」ってな展開を見せて米国の競馬界を沸かせ、それでいて尚「血統がねえ・・・」ってことで評価されず、日本に来ることになったわけである。(アメリカではガチで突然変異種みたいな扱い)
逆を言えばそこそこの父と平凡すぎる母を持ちつつ覚醒した超一流がサンデーサイレンスであり、その超一流から生まれたのがディープインパクトやサイレンススズカなどの名馬ということ。
やっぱ主人公違うだろ。
どうでもいい余談。
まるで現実世界がジャンプ的と書いたが、
ジャンプの競馬漫画の主人公のミドリマキバオーの父親のモデルはトニービンで当時として非常に有名な名種牡馬の一方、続編のたいようのマキバオーの主人公であるヒノデマキバオーは祖父のモデルがサンデーサイレンスである。
血統的には続編の主人公の方が化け物の血筋であるといえる。
ミドリマキバオーって実は劇中では凄い血統でジャンプの例に漏れない主人公だったのはあまり知られてないのと、
彼の妹であるマキバコは父親がサンデーサイエンスである最強クラスの血統だったのもあまり知られていないかも。