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どうしてそうなるの



 部屋で寝る支度を整えていると微かな耳鳴りが響いて「なんだろう?」って思う間もなく、くるんと一回転しながら突然露草が現れた。


 思わず枕を抱きしめて固まった私を見て青い小鬼は少し不機嫌そうな様子でお布団の上にぽすりと着地する。

 その表情の険しさが意味することを想像すると怖いけど聞かずにはいられない。


 私は枕の角をぎゅっと握りしめてドキドキしながら尋ねた。


「お、お帰り……茜どうだった?」

「……心配ない」


 お昼過ぎから茜の様子を見に一旦帰るといって戻ってきたのがこの時間だから七時間くらいか。

 距離を考えれば早いくらいなんだろうけど、もしかしたらパッといってパッと戻って来られるのだとしたら向こうに長くいたことになるし。


 どうなんだろう?


 でも。


「それが“心配ない”って顔なの?なんかあったんでしょ?ちゃんと教えて?」

「心配には及ばんと言っておろうが」


 何度も言わせるなと吐き捨てて露草は自分用の座布団へぴょんと移動した。

 そしてそのままごろりと横になって背を向けてしまう。


 ちょっとちょっと。

 なんなのそれ。


「露草、お願いだから」


 ちゃんと教えてくれないと困る。


 だって茜が苦しむ原因になっているのは私のせいで、そのことでなにか困ったことになっているんだとしたら責任は私にあるんだから。

 もしなにかできることがあるのならなにかしたい。


「いつになったら会えるの?ねえ、もしかして……もう、茜には会えないの?」

「…………そんなことはない」


 あまりにも教えてくれないから最悪の状況を考えてしまって洟を啜ると露草の肩がぎくりと跳ね上がる。

 否定はされたけど絞り出すような声は私を不安にさせるだけだ。


「じゃあ教えて。大丈夫だっていうのなら安心させてよ」


 大きなため息を吐いて露草は身を起こし、こちらに背を向けたままだけど座って頭を掻く。

 黒い髪からぴょこんと突き出た二つの角は俯いているからこの角度からでは残念ながら見えない。


「……妖はそう簡単には死なん。そんなこと既に知っておるくせに」

「知ってるけど、知らないことの方が多いから不安になるんじゃない」


 そんな言葉では全然安心できないし、隠されれば隠されるほど怖くなってくるのに。

 露草はどうしてはっきり言ってくれないのか。


「今、茜はどうなってるの?」

「紬が思っている以上に元気だ。心配ない」

「もう。だから私が思っている以上に元気ならなんで会えないの?」


 だっておかしい。

 問題無ければいっしょに来るはずで。


 露草だけ戻ってきたってことはまだ茜は動けないってことでしょ?


 じゃあ元気ではないってことになる。


「紬は茜の方がいいのか」

「へ?なんでそうなるの?」


 拗ねたような口調にやっと私は茜への心配ではなく露草の不機嫌さが気になった。

 ちらっともこっちを見ないし。

 そのうえ「茜の方がいいのか」発言。


 えっと。

 どういうことなんでしょうか?


「露草、ごめん。分かんない」

「……やはり空けだ」


 身体を折り曲げるようにして小さくなってしまった露草の背中に手を伸ばしてそっと撫でるとビクリと固くなる。


「露草こっち向いて」

「断る」

「ねえ、露草」

「嫌だ」


 もう、頑固だなぁ。


「こっちを向いてくれないならこっちにも考えがあるよ」

「な、なに――をぉおお!?やめ、やめよ!」

「えへへ。捕まえた。露草ちっさいねぇ」


 えいやっと後ろから抱き上げてつかまえると想像以上に露草は重たかった。

 小さな指や爪や手足から子どもみたいに柔らかいんだと思ってたけど触った感じもちょっと筋肉質でぎゅっと詰まっているような弾力がある。


「お人形とは違うなぁ」

「当たり前だっ!空け、いいから離せ!あちこち触るな!」


 じたばたと暴れる露草を面白がって脇腹をくすぐったり、腕を揉んだり、頬をつついたり、髪に頬ずりしてたらすごい悲鳴を上げられた。


 やめてよ。

 まるで私が襲っているみたいじゃない。


「もう、うるさい。素直に露草がこっち向いてくれれば私だってこんなことしないのに」

「――――お前は!どうしてそう簡単に!約束事を忘れたか!?」

「約束?覚えてるよ」


 腕から逃げ出した露草が恐ろしい目にあったと言わんばかりに怯えた瞳でこっちを見ながら距離を取る。

 怒りながら確認された約束を思い出しながら私は頬を膨らませた。


「“妖魔に軽々しく近づくな”でしょ?あれから狒々には近づいてない」

「違う――いや、違わんのだが!お前の血や匂いが妖を煽るのだとあれほど言っておいただろう!?」


 自覚してくれと懇願されてもなぁ。


「だって露草は無理やり血を奪ったりなんかしないでしょ?友達を信じるってそんなにだめなことなの?」


 疑いながら付き合っていくという考えは私には初めからない。

 だから露草や茜の自制心を私は信じてるし、その信頼を彼らが破るような相手ではないと思う。

 死んでしまったお祖父ちゃんとの約束を律儀に守るほどだから情も深いのは確かだし。


「…………簡単に信じるな」

「なんで?信じるよ。言霊には力があるんでしょ?私が露草を信じるって言えば露草は私を裏切れなくなる」


 彼らの理屈から行くとそうなるんだと思う。

 だからそう口にすることで露草を縛って――ちょっと卑怯だけど。


「私だって誰にでも抱きついたりしないよ」

「それは我が小さいからだろ」

「う、ごめん」


 確かに小さくて可愛いなぁって思ってた。

 だからそこは素直に謝っておく。


「見た目で判断するでない。小さくともお前たちより遥かに長い時を生きている。侮られては不愉快だ」

「はい……すみませんでした」


 下に見ているとかそんなつもりはなかったけど、相手が露草でなければいきなりハグしたりはしないのは事実で。

 つまりそこには気安さという部分だけじゃなくて、これくらいは許されるだろうって甘さや――やっぱり軽視する気持ちがあったんだと思う。


 露草が怒るのも当然だ。


「特に妖は見た目が小さくとも凶悪で力の強い者もいる。心にちゃんと留めておかねばいずれ痛い目にあうぞ」


 再度自覚しろと念押しされて私はしゅんっと項垂れながら小さな声で「はい」と返事をした。


 妖との共存って難しいなぁ。


「もういい。寝ろ」


 落ち込んでいる私を見て畳の上に転がってしまっていた枕を掴んで布団の上に乗せるとぽんぽんと叩いて促してくれる露草はやっぱり優しい。


「一週間ほど経てば茜も顔を出せるようになるだろう。だから気にせず眠れ」

「……ほんとに?」


 こくりと深く頷いた青い小鬼は早くしろと枕を何度も叩く。

 その度に空気が動いて埃が舞う。

 私はキラキラ輝く埃を見て笑いながら電気を消して、ゆっくりと布団に横たわる。

 露草も座布団に移動してゴロリと寝っころがった。

 暗闇の中に露草の目がぼんやりと光って見えているのでこっちに顔を向けているんだと分かる。


「露草」

「……なんだ」

「おやすみ」


 眼鏡を外して枕元に置くと視界がぼんやりとして不明瞭になるけど。

 露草の気配は変わらず近くにあるのは分かる。


 だから安心して目を閉じゆっくりと意識を沈ませた。


 ふわり、ふわり。


 漂っている意識の中に露草の「裏切りなどしない」という囁きが聞こえた気がしたから「うん」と返したけど。


 ふわり、ふわり――夜の中に、夢の彼方に消えて。

 ぷつりと落ちた。



  ★  ★  ★



 本堂での朝のお勤めを終えて日課の水汲みを終え、廊下のお掃除をしていたら大八さんが呼びに来てくれたので食卓に着いた。

 今朝は珍しく宗明さんと宗春さんも揃っていてなんだか特別感がある。


「さてご飯にしましょう。紬ちゃん初の断食お疲れさま」

「はい。辛かったですけどなんとか乗り越えられたのはみんなが一緒に挑んでくれたからで」

「いいのよ。私たちは慣れてるから気にしなくて。断食明けからしばらく脂っこいものや味の濃いものだったり動物性たんぱく質は控えないといけないからたいしたものは出せないけど」


 真希子さんが少し申し訳なさそうな顔をする。

 用意してくれていたのは重湯とお漬物だけだったけど、約二日ぶりのご飯を前に嬉々として手を合わせた。


 因みに断食後でも内臓に負担がかかる等の気遣いは無用の妖である大八さんと露草の前には大量のおにぎりと具沢山のお味噌汁が並べられている


「いただきます!」

「ゆっくり噛んで食べてね」


 重湯ってお粥と違ってほとんど水分だけだから噛んで食べるという真希子さんの言葉を不思議に思いながら木の匙を使って口に運んだ。


「ふわぁあ!?すごい、これ」


 栄養が全て染み出した白いとろみのあるほんのりと暖かい液体が口の中いっぱいに広がって穀物独特の香りが鼻に抜けて最後にお米の甘みが舌に染み渡る。


「美味しい!」


 すごく懐かしい味がするのはきっと赤ちゃんだった頃にお母さんが作って食べさせてくれていた記憶が残っているからかもしれない。


 出汁も入ってないし味付けも全くされていないのに重湯はしっかりとお米の味をしていた。


 自然の優しい味。


 胃の中にゆっくりと落ちていく重湯を噛みしめていると体温がじわじわと上がって行くのが分かった。


「新鮮だわぁ。宗明も宗春も初めて断食修行した後の食事でこんな反応しなかったから」

「別になんということもなかったからね」


 うふふと笑いながら昔を思い出している真希子さんに対して宗春さんは冷たくも見える笑みを浮かべて肩を竦める。

 宗明さんは相変わらず無言で食事を音も無く続けていて、大八さんはおにぎりに齧り付きながら我関せずだ。


「断食しても別になんともないって……宗春さんの食欲どうなってるんですか?そもそもこんなに美味しいご飯を作ってもらいながら無関心だなんて信じられない」


 真希子さんの料理を当たり前のように考えられたらいやだったので「ちょっとおかしいんじゃないですか?」と半眼で睨みつけると宗春さんが嫌そうに顔を顰めた。


「そういえば宗春はもともと食べ物に執着なかったから放っておいたら一食どころか一日なにも食べないくらいだったわねぇ」

「え!?それって異常ですよ!」

「現代人は栄養取り過ぎなんだよ。昔は粗食が当たり前だったし、一日二食でも人は生きていける。身体が動く最低限があれば別に問題ない」


 そう言い捨てて眉間に小さな皺を刻んだまま重湯を食べる宗春さんを真希子さんがにやにやと見ている。


「ねえねえ聞いて。紬ちゃん。宗春ったら小さい頃ね、宗明の好きなものは全部“兄さんのだから”って言って手を着けなかったのよ?」

「え!?なんですかそれ。めちゃくちゃ可愛いじゃないですか!そんな時期もあったんですねぇ」


 今の宗春さんからは想像もつかない健気な弟っぷりに感動していると、当の本人は不思議そうな顔で首を捻りどこが可愛いのか分からないと言いたげだ。


「だって大好きなお兄ちゃんに譲ってあげたんでしょ?それってすごくほんわかするエピソードですよ」

「……ほんっと紬は幸せな思考をしてるよね。僕が兄さんに譲ってたのはなにを食べても同じで別にどうでもよかったからだよ。兄さんは特に好きなものを主張するタイプじゃないし。僕が引いた方が丸く収まるからで――なに、その気持ち悪い顔は」


 ちょっと。

 失礼だなぁ。

 ただ頬が緩んでニヤニヤが止まらないだけなのに。


「やっぱり好きなんじゃないですか」

「はぁ?」


 どうしてそうなるんだと渋面を作る宗春さんの隣でなんだかはらはらとしている宗明さん。

 このまま喧嘩が始まるんじゃないかって心配しているのかもしれない。


「主張しないのにそれが好きだって分かるくらい見てたってことでしょ?宗明さんを」


 宗明さんはきっと好きなものも嫌いなものも黙って食べる。

 簡単に感情を表に出さないから周りはなんでも食べるいい子だなって認識してたと思う。

 そんな中で宗春さんだけは宗明さんの好きを見抜いて、自分は別に好きでもないからって引けるってすごいことだ。

 とくに子どもの時ならなおさら。


 どれだけ見ていたんだろう?

 どれだけ譲ってきたんだろう?


 宗明さんは気づかないまま宗春さんの目に見える言動に戸惑って誤解して。


「ちなみに宗明さんの好きなものってなんですか?」

「それはっ」

「ちょっと宗明は黙ってなさい!」

「ぐっ!」


 狼狽えた宗明さんが口を挟もうとしたのをすかさず真希子さんが阻む。

 宗春さんはその様子を見て一瞬だけおや?と目を見開いた後でとても綺麗な微笑みを浮かべた。


「兄さんはね。甘い物が好きなんだ。とくに和菓子が好きで饅頭やら団子やらに目を輝かせて」

「宗春!」

「なに?別に恥ずかしがることでもないでしょ」

「そうですよ!良いと思います!」


 和菓子が好きで、それをバラされて恥ずかしがるとか――可愛すぎるっ!


「小宮山さん、顔……」

「あ、すみません」


 えへへ。

 軽く睨まれたけどしょうがない。


 慌ててお茶碗を持ち上げてだらしない顔を隠す。


「商店街にある樺島堂って和菓子屋の栗饅頭と塩豆大福が一番好きだから今度行って買って来たら兄さん喜ぶよ」

「え!?ほんとに?」


 いつもいただいてばかりなのでなんらかの形で返したいと思ってたから宗春さんの情報はとてもありがたくて思わず飛びついてしまう。

 ただ宗明さんが焦った顔で「そんなことは!」しなくていいと固辞してくる。


 そうだよね。

 うん。

 宗明さんならそう言うわ。


 こういう時は空気を読まない――断じて読めないんじゃなくて読まないんだと私は確信している――宗春さんが恨めしい。

 有益な情報はこっそり教えてもらえると助かるなぁ。


「なんなら二人で仲良く行って来たら?」

「へ?」


 なんで?

 どうしてそうなるの?


 また意味の解らない嫉妬だろうかとじっとりと眺めるけど宗春さんは涼しい顔で食事を終えほうじ茶を啜っている。


 ぬぬっ。

 読めない。


「宗春、お前はどうしたいんだ……一体。急にそんなこと」


 同じく困った顔で宗明さんは宗春さんの横顔を見つめている。

 真希子さんだけがしたり顔で「そういうこと」と笑っていた。


「えっと……どういうことですか?」

「うふふ。それはねぇ」


 真希子さんが口元を隠すようにして私の耳に顔を近づける。

 内緒話をする時によくするあれ。


 なんだろう?


「つまり、今回も譲るってこと」

「………………は?」

「んもう。紬ちゃん鈍い!」


 鈍いって言われても本当に意味が分からないんですけど。


 なにを譲るって?

 誰が誰に?


 え?ちょっ。

 ちょっと待って――!?


「いやぁあああ!?ないです!ないです!そんなこと!絶対ありえないですぅ!」

「紬ちゃん、落ち着いて」

「これが落ち着いていられますかぁ」


 だって、だって。

 真希子さんが意味ありげに囁いた内容はとてもじゃないけど正気じゃない。


 宗春さんが譲るのは宗明さんが口にできない好きなものなわけで。

 どう考えてもおかしな仮説で。


 だって。

 宗明さんはこれっぽっちも私に好意など抱いてないから。


 勿体ないほど優しく、良くしてもらってるけど。

 そんな甘酸っぱいような感情は決してないと思う。


「兄さんと一緒なら外出してもいいけど」


 どうする?なんて聞かれて私がここで頷けるほど鉄の心臓は持ち合わせてません。

 確かに久しぶりに外に行って小人さんたちと会いたいなとか思う気持ちはあるけど。


「行きませんっ!」

「残念。兄さん断られちゃったね?」

「……宗春いい加減にしろ」

「大丈夫。あれ、きっと照れてるだけだから」

「宗春さぁああん!?」


 ほんといい加減にしときなさいよぉおお!?


「じゃあおれと行くか?」

「うえ?大八さんと?」


 今まで黙ってたのに急に入ってきた大八さんは指についたご飯粒を舐めとりながらにかっと笑う。

 この状態で緊張する宗明さんとお出かけするより大八さんと行った方が随分と楽しそうだ。

 魅力的な申し出にうずうずしていると「僕は兄さんとなら許すって言ったんだけど?」と低い声が聞こえてきたので諦めた。


「また、今度……お願いします」


 しゅんっと項垂れて大八さんに謝るといい笑顔で「いいって」と返してくれた。

 ああ、大八さん温かい。


「午前中の事務仕事が終わったら呼ぶから」

「え?あ、はい」


 自分が使った分を片付けて宗春さんが立ち上がると宗明さんも同じようにして腰を上げる。

 そのまま台所の方へと消えて、それぞれ別の仕事をするために分かれていく。


 動揺の元が席を外してくれたのでほっとしながら重湯の残りを食べ終えるとすっかりお腹がいっぱいになった。


 ほぼ水分だけどすごく満たされたし美味しかったなぁとお腹に手を当ててほっこりとしていると真希子さんが嬉しそうな顔でこっちを向いた。


「紬ちゃん、ありがとう」

「なにがですか?私、なにかしました?騒がしくしただけじゃ」


 改めてお礼を言われたんだけど、その理由が分からずに首を必死に横に振った。

 でも真希子さんは目を潤ませて優しい表情で私の目を真っ直ぐに見つめてくる。


「宗明と宗春が普通に会話したのって本当に久しぶりなの。きっと十年……もしかしたらもっと前かもしれない」


 思い出せないほど昔なんだと思うと胸の奥がギュッと痛くなった。

 それほどあの兄弟ふたりはすれ違ったまま時を過ごしてきたのか。

 だとしたら真希子さんの喜びやお礼を言いたい気持ちも分かる。


 いや、私はなにもしてないんだけどね。


「だからね。嬉しくて。このまま喋れるようになってくれるといいんだけど」

「……大丈夫ですよ。真希子さん。絡まった糸が解ければきっと仲の良い兄弟になると思います」

「そう……うん。そうよね。ありがとう」

「や、私はなにも」


 手を合わせてご馳走さまをして照れ臭さを誤魔化していると真希子さんが頬をほんのりと染めて「今度宗明とお出かけしてあげてね」なんて言われたら。

 からかわれているんだと分かっていてもどきどきしてしまう。


「もう……免疫ないので勘弁してください」

「あら?宗春ともお出かけしてくれていいのよ」

「真希子さんっ」

「は~い。ごめんなんさい」


 真希子さんが楽しそうに笑うから怒るふりもできなくて。

 久しぶりの賑やかなご飯と空気に心も体も満たされて幸せを噛みしめる。


 きっと解ける。

 宗春さんと宗明さんのこんがらがった糸も。

 そしたらもっと楽しくなるし真希子さんも安心できるから。


 私が間にいることで兄弟ふたりが話せるのだとしたら協力する。

 いくらでも。



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