メロンパン
真司は、ベッドの上に座り、机の上に置かれた食べかけのメロンパンをぼんやりと眺めていた。
さくら―
いったい誰なんだ。
ハウスの住人なのだろうが、他人の部屋に勝手に入ってくるとは、非常識なヤツだ。
考えると苛々する。
おばさんに文句を言いたい。
でも、自分からおばさんに話しかけるのはしゃくに障る。
どうすればいい。
空腹に暑さも手伝って、さらに不快感が増す。
くそっ!腹が立つ!
タオルケットを床に投げつける。
その拍子にゴミ箱がコトンと倒れた。
そうだ。
そういえば。
たしか―
真司はベッドから飛び降りると、慌ててゴミ箱の中を見た。
あった。
やっぱり。
机の上の食べかけのメロンパンに視線を移す。
同じだ。
同じ包み紙。
どういうことだ。
さくらというあの少女は、真司がハウスに来たあの夜もここに来ていたのか。
わけがわからない。
あまりの怒りに真司は部屋を出た。
女の子の後姿が視界に入る。
さくらだ。
「おい!」
次の瞬間、その小さな後姿が大きく歪み、目の前が真っ暗になった。
「真司くん、大丈夫?」
おばさんが、心配そうに真司の顔を覗き込む。
真司は、ベッドに横になっていた。
気分が悪い。
額には、解熱用の冷却シート。
どうやら、貧血で部屋の前に倒れていたらしい。
さくらは?
思わず部屋を見渡す。
「ごめんね、真司くん」
さくらは?
真司はおばさんの顔をじっと見つめた。
「少しでもいいから、ご飯食べようね」
真司は、はっとしておばさんから顔を背けた。
「お水持ってくるね」
おばさんが部屋を出ていくのを、真司は目で追った。
起き上がって机を見る。
食べかけのメロンパンはなくなっていた。
おばさんが片づけたのか。
それとも、さくらが―