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さくら  作者: zaku
13/14

輪廻

 「真司くん、あそぼ」

 「真司くーん」

 「ねぇ、真司くん起きてよぉ」

 「真司くーん。あーそーぼー」


 真司は体中の痛みに目を覚ました。

 ここはどこだ?

 左腕には点滴の管がつながれている。

 「真ちゃん!」

 声のする方へ首を傾ける。

 「おばあちゃん…?」

 「真ちゃん。よかった…」

 「おばあちゃん…どうして?」

 「真ちゃんは事故にあったの」

 「事故…」

 ここは病院なのか?

 「真ちゃんは事故にあって、五日間も意識が戻らなかったのよ。おばあちゃん、もう心配で心配で…」

 おばあちゃんは泣いている。

 「お父さんもお母さんも無事だから、何も心配しなくていいからね」

 おばあちゃんは、真司の頭を優しくなでながら言った。

 「おばあちゃん、ちょっと先生のところに行ってくるね」


 どういうことだ。

 意味がわからない。

 五日間も意識がなかった?

 お父さんもお母さんも、生きている…

 真司は真っ白な天井を見つめた。


 コンコン―

 「失礼します」

 一人の看護婦が入ってきた。

 「真司くん、目が覚めたみたいね」

 看護婦が真司の顔を覗き込んだ。

 「よかったね」

 真司はその顔に見覚えがあった。

 「さ、真司くん。熱計りますよ」

 おばさん?

 真司は看護婦の顔をじっと見た。

 「どうしたの?気分でも悪い?」

 真司は慌てて首を横に振った。

 「また夕方来ますね。お大事に」

 その看護婦は検温を終えると、そう言って病室を出ていった。

 これはいったい…

 真司は混乱した。


 しばらくして、おばあちゃんが真司の病室に戻ってきた。

 「おばあちゃん…」

 「何?」

 「お父さんとお母さんは?」

 「今は別の病室にいるけど、大丈夫よ」

 「本当に?」

 「本当に。だから安心しなさい」

 真司は黙ってうなずいた。

 「おばあちゃん…」

 「何?」

 「今日は何日?」

 「今日はね、五月十日よ」

 真司はそっと目を閉じた。

 真司の目から一筋の涙が流れた。



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