輪廻
「真司くん、あそぼ」
「真司くーん」
「ねぇ、真司くん起きてよぉ」
「真司くーん。あーそーぼー」
真司は体中の痛みに目を覚ました。
ここはどこだ?
左腕には点滴の管がつながれている。
「真ちゃん!」
声のする方へ首を傾ける。
「おばあちゃん…?」
「真ちゃん。よかった…」
「おばあちゃん…どうして?」
「真ちゃんは事故にあったの」
「事故…」
ここは病院なのか?
「真ちゃんは事故にあって、五日間も意識が戻らなかったのよ。おばあちゃん、もう心配で心配で…」
おばあちゃんは泣いている。
「お父さんもお母さんも無事だから、何も心配しなくていいからね」
おばあちゃんは、真司の頭を優しくなでながら言った。
「おばあちゃん、ちょっと先生のところに行ってくるね」
どういうことだ。
意味がわからない。
五日間も意識がなかった?
お父さんもお母さんも、生きている…
真司は真っ白な天井を見つめた。
コンコン―
「失礼します」
一人の看護婦が入ってきた。
「真司くん、目が覚めたみたいね」
看護婦が真司の顔を覗き込んだ。
「よかったね」
真司はその顔に見覚えがあった。
「さ、真司くん。熱計りますよ」
おばさん?
真司は看護婦の顔をじっと見た。
「どうしたの?気分でも悪い?」
真司は慌てて首を横に振った。
「また夕方来ますね。お大事に」
その看護婦は検温を終えると、そう言って病室を出ていった。
これはいったい…
真司は混乱した。
しばらくして、おばあちゃんが真司の病室に戻ってきた。
「おばあちゃん…」
「何?」
「お父さんとお母さんは?」
「今は別の病室にいるけど、大丈夫よ」
「本当に?」
「本当に。だから安心しなさい」
真司は黙ってうなずいた。
「おばあちゃん…」
「何?」
「今日は何日?」
「今日はね、五月十日よ」
真司はそっと目を閉じた。
真司の目から一筋の涙が流れた。




