ふたり
あれからさくらは姿を見せなくなった。
もう真司の前には、現れないのだろうか。
真司は部屋で朝食を食べながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。
「真司くん、どうかした?」
おばさんが心配して真司の顔を見た。
「いえ…」
「そう。あ、そういえば昨日ね…」
おばさんは気を使ってくれたのか、何気なく話題を変えた。
「あの、おばさん…」
「何?」
「明日から、リビングでご飯食べてもいいですか?」
おばさんは、少し驚いた様子だったが、とても喜んでくれた。
「もちろん。じゃあ何作ろうかしら」
そんなおばさんを見て、真司もなんだか嬉しくなった。
翌朝、真司はリビングへ行った。
「真司くん、おはよう」
「おはようございます」
テーブルには朝食が二人分並んでいた。
「さ、座って」
真司は、おばさんに言われたとおりに席についた。
おばさんが真司の正面に座る。
真司は、ハウスに来て初めておばさんと二人で食事をした。
そう。二人で―
そこにはさくらの姿はなかった。
「おばさん…」
真司は思い切って口を開いた。
「ここにいるのは、僕だけですか?」
おばさんは、少し困ったような顔をした。
「どうしたの?急に」
「いえ、別に…」
おばさんは一息おいて言った。
「もう一人いると思った?」
おばさんの言葉に真司は驚いた。
やはりおばさんは、さくらのことを知っているのか。
「あの…」
「さくらちゃん…」
真司は息をのんだ。
「さくらちゃんは、真司くんなの」
さくらは、僕…?
「さくらちゃんは、真司くんの中の、もう一人の人格なの」