明
どうぞ
裏1
わたしは一人ぼっちが嫌だった。孤独が何よりも嫌だった。だから常に誰かが傍にいるようにして過ごしてきた。しかし、それでも孤独の時間は必ず訪れる。世界が止まってしまったかのような、わたしだけしかこの世界に存在しない、そういった恐怖が私を襲う。何よりもわたしは、静寂を嫌った。だから音楽を聴いたり、テレビやラジオをつけていたりと、何かしらの音を欲した。
この渇望を叶えるには、ずっと傍にいてくれる誰かが、わたしだけを見てくれる誰かが欲しかった。
もしも、この先二度とわたしの心の渇きを潤してくれる誰かが現れてくれなければ、わたしはこのまま干からびて死んでしまうのだろうか。もしくは干されたまま生きていくのだろうか。砂漠の中を歩かされ、幻のオアシスを探して永遠にさまよい歩くのだろうか。
わたしはその畏怖を抱きながら生きていかなければならないのだろうか。それはとてつもない地獄だ……。
間1
「がうッ!」
朝になりリビングへ降りてみると、ハナが四つん這いになって犬の鳴き真似をしていた。そのハナの目の前にいる白色が地色の大型犬がいた。その犬は尻尾をぶんぶんと風を巻き起こす勢いで振っていた。そして、ハナを真似してか「ワン!」と吠えるのだった。
「何をしているんだ」
「おはようございます。今日も早いですね。もう少しお休みになられた方がよろしいかと思いますが……」
「気遣いどうも。ハナのおかげで早起きの習慣が身についたようだ」オレは肩をすくめた。
今日は5日間の休みがある伝説のGWの3日目だ。もう折り返し地点に来てしまっている。
「……おはよう、ござい……ます」
椅子に座り、ハナと犬とのやり取りを笑いながら見ていた子が、オレにぎこちない挨拶をした。オレは「おはよう」と、笑いかけた。彼女は小さく会釈をしただけだった。そして、興味の目線をハナたちに向けた。
厚い壁を感じた。まあ、徐々に薄くしていけばいいだろう。
「朝から元気だな」オレはハナの頭と犬の頭を同時に撫でた。右手が犬で左手がハナだ。お互いに嬉しそうだった。オレは思わず声を出して笑ってしまいそうだったが、咳払いでそれを食い止めた。
オレは台所へ向かい冷蔵庫から冷水筒を取り出し、コップの中にその中身の水を注ぐ。そして、それを一気に飲み干した。渇いた喉が潤った。
「加奈ちゃんはどうだい?」
オレは彼女に尋ねた。彼女は「じゃあ……」といって頷いた。オレはもう一つコップを取り出し、それを彼女に渡した。
「みんなは仲良くやっているか?」
オレはコップを片手に壁にもたれ掛った。
「それはもう」答えたのはフウカだった。フウカは深く頷いた。そして、綺麗な白い歯を見せた。「だよね? 加奈ちゃん」フウカはぎこちない手つきで太ももの上に置いていた「コトリ」という名のフランス人形の両手を上げ下げさせていた。
「うん」
照れているのか顔を背けて声を細くしていった。
「はいはい!」
ハナが唐突に犬の物真似をやめて、勢いよく二足で立ち上がった。そして、背筋をピンと伸ばし、手を高々と挙げるのだ。犬も「ワン!」と同調する。
「そうかい。それならいいんだ」オレは水を一口飲んだ。そしてコップを傾けながら、事の顛末を思い返していた。
オレは一昨日まではハナとフウカの三人で暮らしていた。しかし、今はそこに加奈ちゃんという名前の小四の女の子と、この子が飼っているゴロウという犬が加わり、四人と一匹で暮らすこととなった。……とは言っても、一時的に保護してあげているだけなので、いずれはこの家を去ることになるのだが、今はそんな話はおいておこう。
とりあえず、どうしてこうなったのだろうか。オレはそれを回想するのだった……。
間2
二日前、ちょうど今ぐらいの時間にオレはハナによって叩き起こされた。いつもの事だ。だがそれは、今日から休日であるのを伝え忘れていたオレのミスだった。平日なら学校があり、起こしてくれるのは大変助かるのだが、休日ぐらいはもっと遅くまで眠っていたかった。
仕方のない事だと割り切ったオレは「はあ」とため息をついて布団から出た。そしてフウカへ挨拶しに下へ降りる。フウカは相変わらず笑顔で迎えてくれた。
「腕と脚の調子はどうなんだ? 問題は無いか?」
オレはフウカに訪ねた。あれからもう一週間は経ったのだろう。ダルマで腕と脚の無いフウカにそれをプレゼントしてから。
「問題はありませんよ。拒絶反応は起こっていませんし、人格が変わったとかもありません」フウカは笑ってみせた。「腕とかは頑張れば胸のあたりまであげられるようになりました。でも……」フウカは腕を水平に伸ばして胸のあたりまであげた。「これ以上は無理です」フウカはガックリと肩を落とす。「もっと自由に動きたいです」
「まあ、もっと訓練して慣らしていけばいい。それで、フウカが前に言っていたように歩けるようにもなるさ」
「早く歩いてみたいですね。でもその前に、自力で車いすを動かしたいのですが」
「それも練習だな。あとは……腕が取れないようにもう少し太い糸を新調してやるよ。とりあえず焦りは禁物だからな」
「そうですね。ありがとうございます」
オレとフウカはそんな会話をしていた。そうしているとハナもその輪の中に入っていき、会話が弾んでいった。そして、確かオレが切り出したのか、三人でどこかへ外出しようという話になったのだ。せっかくのGWだから、という理由だ。
フウカは、「本当ですか?」と喜びを見せた後、すぐに「いいんですか?」と申し訳なさそうに行った。
オレが「構わない」と言うとフウカに笑顔の花が咲く。どこへ行こうかと話になった時、フウカが動物園へ行ってみたいといった。そして、そこへ行くことにした。電車で一時間ゆられれば着ける場所だったし。
しかし、問題があるとすれば、ハナが思わず白昼堂々と動物たちを食べてしまわないかという事だ。それが懸念材料だった。しかし、まあ何とかなるだろう。とただのハナへの信頼だけをおいた根拠でそれを打ち壊した。
間3
動物園にいる動物たちを目の当たりにしたハナの反応といったら、それは大変なものだった。初めて見たのか、ゾウやキリンなどほぼ全種に興奮を隠せていなかった。目を輝かせて「うー!」と歓声をあげながら跳ねまわったり、一人で勝手に園内を走り回ったり、ついには檻の中へ入ろうとしていたのだった。
オレはフウカの車いすを押しながらハナのその暴走を阻止と、倍以上の労力を使わざるを得なかった。なので、くたくただった。しかし、フウカはにこにこしていて、笑った表情を絶やしてなかったからよしとしよう。
「お疲れ様です」
昼食を取ることになり、ベンチに座り、持参してきたお弁当をハナと食べていた時に、フウカがそう言ったのだ。
「楽しいといえば楽しいけどね」
「それはよかったです」フウカは朗笑する。
「フウカも、食べるか?」
オレは梅が入ったおにぎりをフウカに差し出す。
「私は食べられませんよ。意味がありませんし。私に気を使わずに、どうぞ食べてください。それに、この後もまだまだ見て回りますから、その分の体力をしっかりとつけてください」
フウカは一笑する。それは偽りのない笑いだった。しかし、残念だった。やはり、これはいつも思う事だが、フウカも食事に加われたらいいのにな、と思う。しかし、仕方のないことなのだろう。
「私の体はもう死んでいますから。機能も何もしていません。でも、声が聴こえたり喋れていたりするので、完全に機能が停止しているわけではありませんが。一応、呼吸もしていますが、ただ癖でしているだけで、別にしなくても大事ないのですよ。仮に物を食べたとしても、消化はされずに、胃の中にそのまま残り腐っていくだけです」
フウカは自分の体の説明をする。相変わらず、笑顔は崩さなかった。
「そうか……。フウカは先週にオレが言った言葉は憶えているか?」
「はい。心配はなさらなくても、今の私は十分満足をしていますよ。こうやって誰かと動物園へ行くことや、日の下で食事することは、私にとって夢の中の夢でしたから……。私は、本当に生き返って良かったと思っていますよ。これは本当です」
「オレも今はすごく楽しいぞ。みんなで来られて良かった」
オレはフウカの頭を撫でた。フウカは照れて笑っていた。
その後、オレ達は食事を終え、それからさらに園内を回った。
動物の触れ合い体験だったり、ショーを見学したり、記念撮影をして、休日を満喫した。
日が沈んだ頃、オレ達は帰ろうとしていた。電車にまた乗り、一時間経てば家に帰れる。だけど、オレは迷った。このまま帰るべきなのか、と。そこで、オレはどこかホテルか旅館で一泊していこうと発案した。ハナはそれがどういう事なのか理解はしていなかったが、賛成していた。フウカは最初の時は断っていたが、少数派の意見となってしまったので、了承した。
そして、近くに会ったよさそうなホテルで二人部屋を借りて、そこへ三人で一泊するのだった。特に何事もなく、いつものようにハナを寝かせて、フウカはテレビを「コトリ」と一緒に見るのだった。オレは夜遅くまでフウカと会話をしながら、そのまま眠りに落ちた。
ここまでは良かったのだが、問題が起きたのはその次の日の朝だった。
オレはフウカに「もしもハナが部屋から出ようとしたら、ホイッスルを思いっきり吹いて、オレを起こしてほしい」と頼んでいた。朝の四時ぐらいだったか、そのぐらいの時間にそれは鳴った。
オレはあまりの音量に飛び起きた。起きて数秒で状況を理解した。そして、隣の人に迷惑じゃなかったかな? と不安も抱いた。オレは急いでハナを追いかけようとしたが、ハナは音にびっくりしたのか、玄関で腰を抜かしていた。今まで見たことのない光景で唖然とした。
オレはハナの額にデコピンをして叱った。ハナは「ご……ごめ……ん」と反省していた。
「まあまあ。いいじゃないですか。それぐらいで」とフウカが宥めた。
オレは「そうだな」と言ってハナを布団に寝かせた。しかし、ハナの目は開いたままだった。オレはため息をついた。
「どうでした?」
「ああ。ありがとう。自分で頼んでおいてアレだが、目が覚めちまった」
「わ、わたしも!」
ハナも同意見だったらしい。ガバッと上体を起こして、布団から出た。
「ごめんなさい」
「いや、フウカが謝ることではないさ」
「うん!」
「そうですか。ところで、もしよろしければ、散歩でもしませんか? ちょうどいいでしょうから」
フウカがそう提案したのだ。オレは「まあ、いいよ」と即答した。二度寝もできやしない、そう判断したからだ。
オレ達はホテルを出て、そこの周囲を散歩するのだった。
辺りはまだ暗かった。街灯を頼りに道を進んでいった。適当な道を歩いていたら、川の近くにやってきた。その川の向こう側には低い山があった。心地よい川の流れを聴きながら、三人で進んでいく。
すると、目の前に犬がいた。大きな犬だ。犬についての種類はまったく分からなかったが、大型犬であるには違いなかった。その犬はオレ達を見つけるや否や吠えるのだ。オレ達を怪しい人物だと認識したのか、警戒しているようだった。
尻尾を大きく振って、オレ達の進路方向へ走っていったかと思えばすぐに振り返り、戻ってくる。行ったり来たりを繰り返すのだった。
「うー!」
ハナがはしゃいで犬を指さす。
「何か……あったのでしょうか?」
フウカが小首を傾げた。犬の行動を怪訝な顔をする。
「そうだな。ちょっと、行ってみるか」
オレ達は小走りで犬を追いかけた。すると、犬は川の方へ行き、川を横切り、山の方に姿を消すのだった。オレはフウカとハナをその場に残して、一人で犬を追いかけた。山中を走り回っていると、犬がうろうろとしていた。そこに何があるのかと覗いてみると、女の子が横たわっていた。顔や服は土に汚れていて、所々擦り傷があった。息はあり、身体も温かかった。まだ生きているようだった。オレはその少女に自分の上着をかけてから、その子を抱えて、ハナとフウカの元へ戻った。
「その子は……?」
「倒れていた。ただ気絶しているだけで、命に別状はない」
「そうですか」フウカはホッと胸をなでおろした。
「う?」
ハナが少女の頬を軽くつついた。オレは「食べるなよ」と念のために言っておいた。ハナはそんな事はしないだろうがな。
犬が一つオレ達にほえた。そして、オレ達の周りをぐるりと一周する。ハナが犬に近づく。犬はハナを警戒してか、距離を置いた。ハナは物欲しそうに犬を眺めていた。
「そいつも食べるなよ」ともう一度ハナに注意をした。ハナは「はー」とうなだれた。そういえば朝食を食べていなかったことを思い出した。少女が目覚めるのを待ちながらどこかコンビニでおにぎりとかを買っていこう、そう決めた。
少女が目を覚ませたのはそれから一時間してからだった。オレ達は公園のベンチに座っていた。ハナにペットボトルの麦茶を飲ませてあげているときだった。「うっ……」という少女のうめき声と犬が吠えたことにより、それに気づけたのだった。
「ここは……?」
少女は虚ろな目で頭だけを動かして、自分の状況を探った。
「目が覚めたか。大丈夫か?」
オレは少女に尋ねた。すると、少女はガバッと起き上り周囲を見渡した。
「お父さん! お母さん!」
自分の親を呼んだのだった。その声はとても大きく公園の中に響き渡った。
「落ち着いて。ね?」
フウカがなだめる。そして、犬が少女の傍にかけより、少女に抱き付いた。そして顔を舐める。少女は犬の頭を撫でてあげて、頬ずりをした。
「わたしは……いったい……?」
「まずは、水でも飲みな。話はそれからだ」
オレは少女にペットボトルを渡した。だれも口をつけていないヤツだ。
「誰……ですか?」
少女はオレが差し出したそれを受け取り、ふたを開けて、勢いよく飲みだした。よっぽど喉が渇いていたのだろう。
「君の犬が山中で倒れていた君の元へ案内してくれたんだ」
「ゴロウが……。ありがとう」少女は犬を撫でながらお礼を言った。オレへ向けた言葉ではないのは分かった。まあ、どうでもよいが。
どうやら犬の名前はゴロウというらしい。古風な名前だ。かといって今風のペットの名前など知る由もないが。
「君の名前は?」
「私は……加奈。お兄さんたちは?」
「オレは誠一郎。こっちの元気なのがハナで、車いすに座っているのがフウカだ」オレは全員の紹介をする。
「どうも」少女は会釈をする。フウカが笑いながら深々と頭を下げていた。
「ところで、話をしてもいいかな? どうしてあんな所で寝ていたんだ?」
オレは加奈ちゃんが起きてすぐに親の事を叫んだのが気にかかっていた。何か事件に巻き込まれたのだろうか……。オレは加奈ちゃんの話を黙って聞くのだった。
間4
彼女は岸山加奈という名前らしい。どうやら加奈ちゃんは近くにキャンプへ来ていたようだ。彼女が親に頼み込んでここまで連れてきてもらったようだ。しかし、この年頃の女の子がキャンプを所望するとは、オレな勝手な主観ではあるが、いささか面妖だ。まあ、措いておく。
夜にキャンプ場を離れ、人気のなかった高台へ行き、家族で星を眺めていたようだ。そしてその帰り道に、五人ぐらいの青年に襲撃を受けたようだ。黒いワゴン車に乗っていたようだ。それで、集団暴行――リンチを受けたようだ。しかし、彼女は犬に誘導され、必死にその男たちから逃げ回ったようだ。それで、あんな所で眠っていたのだ。
「そいつらの顔とかは憶えている?」
「暗くて……憶えてない」シュンとなった。首を横に振る。「お父さんやお母さんはどうなったのかな……?」
「大丈夫だ。そう信じろよ。ところで、場所はわかるか?」
「ううん」ゴロウが加奈ちゃんの前に座った。
「ひょっとすると、警察が動いているかもしれませんよ。だから、騒ぎが起こった場所へ行けばよろしいのではないでしょうか?」
「それもそうだな。この子も、警察に預かってもらおうか」
オレ達はそう話し合い、キャンプ場へ向かった。
キャンプ場へつくと、特に変わった様子はなかった。ざわつく様子などはなく、いたって平常だ。ということは、事件はまだ発覚していないのだろう。とりあえず、オレ達は放置された彼女の親の車を調べる事にした。とはいっても、鍵はかかっており、外観しか調査できない。
「どうやら、まだみたいですね」フウカは落ち着いた口調で言うのだった。
「そうだな」オレは顎に手を添える。「警察に言うのが手っ取り早いだろ。その方が確実に見つかりやすい。そもそもこれは大変な事件なんだし、黙っている方が良くない気がするな」
オレは少しだけ心の中で自嘲した。自分自身も事件になるようなことをしているのに、何を呑気なことを言っているのだろうか、と。まあ、関係は無いか。
「それは嫌だ!」
加奈ちゃんは地団太を踏む。そして大声で拒絶するのだ。
「うー?」
ハナは腕を組んで不思議そうな顔をしながら首をかしげる。
「それはどうして?」フウカが尋ねる。
「わたしは、あいつらを許せない。だから、わたしが、何とかしたい!」
「し、心配……な、ないよ」
ハナが自信満々に言うのだった。胸の前に拳を作る。
「その自信はどこから……?」
「わ、わたし……たべ……べる!」
「え?」
加奈ちゃんは上手く聞き取れなかったようでハナの言葉を聞き返した。オレはハナが何といったのか理解できてしまったので「バカ」と言ってハナを小突いた。ハナは口をとがらせて「ぶー」と言った。
「とりあえず、だ。君のいう事は賛成できないな。君にできる事は何もない。もちろん、オレ達にも」
オレは若干嘘をついた。加奈ちゃんを襲ったそいつらは、ハナの食糧にこそふさわしいかもしれないが、それをこの子にはあまり関わらせたくないのだ。何か厄介な種にもなりかねないし。
「嫌だ! 仇を討ちたい!」
「仇って……無事かもしれないだろう?」
「わたしにとって、大事な人たちなの……。その人たちが傷つけられて、奪われて、黙っていられない……。許せない。殺したい!」
そうとう興奮しているのか、彼女は声を荒げる。怒りや悲しみが混ざり合っていた。そして、彼女の目からは大粒の涙があふれ出していた。
「いいんじゃ……ないですか?」
フウカがオレを覗き込むようにしてみた。
「両親……家族が……大事なのか? ……好きなのか?」オレは頭を掻いた。少し言いたくない言葉だった。
「うん!」
加奈ちゃんは迷いもなく言った。うそ偽りのない真っ直ぐな目だった。オレは少し、羨ましくもあった。きっと……いや、よしておくか。
「困ったな」オレはため息をついた。「まあ、いいだろう。協力しよう。なるべく君の願いに沿う形にするよ。ただし、何が起きても、黙っていられるか?」
彼女は力強く頷くのだった。
オレ達はこうして加奈ちゃんとゴロウを保護することになった。そして、現在に至るわけだ。
オレはどうのように処理をすればいいのか、頭を悩ましている。非常に面倒くさい、厄介事に首を突っ込んでしまった気がしてならなかった。
うん。