月羽と美雨のお話
ちょっと期間が空きました。
月羽と美雨のお話し
月
今、この世で一番合いたくない人に出会ってしまった。
なぜ、あの人がこの星にいるのだろうか。
わたしは、捨てたつもりだった。いや、捨てたというよりは、捨てさせられたというべきか。でも、私は……。
あの頃は楽しかった。あの頃は幸せだった。でも、もう戻ってはこないんだ。だから、わたしは、あの人とは関わらないと決めた。それが、お互いの幸せだと思うから。
「わたしに、関わらないで」
あの人は、悲しそうな顔をしていた。
関わらないでほしいという気持ちに嘘はない。だから……。
「みんな、あなたを追ってきたあの銀髪の男に殺されたの!」
みんな、仲が良かった。大切な家族だった。かけがえのない存在だった。
消えてほしい。この星から。できる限り、わたしと遠い遠い所へ行ってほしい。
あの人がいるから、わたしは……。
雨
雨はずっと続いていた。でも、今は降っていない。
「ねえ、浩二郎。お兄さんのこと、どう思う?」
「なんで、いきなりそんなことを聞くんだ?」
「私には、お姉ちゃんがいるんだけど、どうも気が合わなくて」
「そうなんだ」
「でも、なぜか、嫌いには、なれない。好きか、て言われるとうーんて感じなんだけど。でも、嫌いではない」
「俺は……嫌いだよ」
「そう、言ってたよね」
私は、寄りかかる。
「だって、あいつは、俺のことを殺したからな」
月
……
――「殺したのは、君だよ」
わたしの頭の中に残っている言葉だ。わたしは、そんなつもりはない。そんなつもりはなかった。
違うのに。わたしが殺したというわけではないのに。
わたしの大切な家族がいた。
みんな、人形のようにこと切れて、地に伏していた
細切れにされたり、全身を焼かれたり、元の姿かたちを亡くしているヒトもいる。
その中で、わたしに小さくつぶやくものがいた。
「おねえちゃん……おねえちゃん……どこにいるの?」
わたしのことを呼んでいる。
でも、わたしはそれにこたえることができない。
あの子は、私を必死に求める。
地面を這い、小さな手を伸ばす。
私は、泣くことしかできなかった。
両の目をくりぬかれたあのこは必死にわたしを探している。
「――おねえちゃん……」
……
わたしは目を覚ます。
「……おねえちゃん」
わたしの声は、残響した。
頭が痛い。なぜ、体を動かそうとした。しかし、椅子に縛られて、体を満足に動かせなかった。
「どうして……?」
わたしは、つぶやいた。
「ようやくお目覚め?」
わたしは声にハッとした。
恐る恐るその声のほうを見た。
「どうしてだと、思う?」
そうだ。わたしは……。何者かに、背後から殴られて、そこから記憶が定かではない。頭が痛い。
そういえば、わたしが、あの人に会って、その後に、逃げた後に、何者かに襲われたんだ。
そうして、気が付けばここにいる。
わたしは、そうしてこの薄暗いどこか、廃墟のようなところへいる。
「どうしてわたしをここへ?」
「そんなことはどうでもいいの。それよりも、どうして貴方はあんなことを言ったの」
「なんのこと?」
「それは、決まっている。貴方は美月にひどいことを言ったわね」
「……」
わたしはなにも言わなかった。言えなかった。
「ねえ。どうしてそんなことを言ったのかな?」
「だって……」
彼女に言ったとしてもしょうがない。わたしは言葉に詰まる。
「私は、美月が大切。だから、傷つける人は私が始末するの」
笑う。わたしはそれを怪訝な表情でみた。
「では、どうしようかしらね。傷つけた分、あなたをこれから傷つけるわ」
針を取り出す。後ろに縛られた指先にそれを向けれる。そして、爪の間にさしこまれる。
私は言葉にならない悲鳴をあげる。猛烈に激痛が走る。
「答えないと、もっとさしちゃうわよ」
もう一本さされる。
自然と涙が流れる。どうしてわたしがこんな目に合わなければならないのか。
……罰か
わたしはこれをうけいれなければならないのか。
「おねえちゃん……」
わたしはそうつぶやいた。
ぴたりと止まった。
「姉妹なんでしょ? 美月は本当にいい子よ。どうして、妹のあなたが傷つけるの?」
「なにもしらないくせに。なにもわかってないくせに。えらそうにしないで」
「そう。反省の色はないのね。では、もう殺しましょう。害虫は駆除」
包丁を手に持ち、私に向ける。
「ちょっとまった!」
声がした。
「何してるんだ」
大きく息を切らしていた。走ってきたのか。
セイイチロウがきた。
「誰よ。貴方は」
「お前に言われたくない。お前こそ誰だ」
「邪魔しないでよ。いまからこの子を殺すんだから」
「だから、なんでだよ。やめろ。その子は死なせない」
「ふーん」
彼女は、わたしの首筋に刃を立てる。
「あなたは、なんだか私と似たような匂いがするわね。人を殺すのを厭わないような目」
「オレは殺したことなんかない」
「あっそ」
彼女は私を誘うとしたとき、横から何かが飛んできた。
それが彼女にあたり、体が吹っ飛んだ。そして、包丁が遠くへ転がる。
「ハナ?」
どうやらそれはハナがなげたものだったようだ。
セイイチロウはころがった包丁を急いで取り、縛っていたロープを切り、わたしを自由にした。
「大丈夫か?」
「どうしてここに?」
「まあ、いろいろあってな。教えてくれたんだ」
「だれが?」
わたしがそう尋ねたとき、彼女が起きた。
「不覚だったわ」
「形勢逆転だよ。動くなよ」
セイイチロウは彼女に刃を向ける。
彼女はフフフと陽気に笑う。
「殺せるものなら殺してみなよ」
怖気づいてしまうような場面でも強気で、セイイチロウに襲い掛かっていった。
セイイチロウは殺す気などなく、彼女の動きに逃げた。
手をつかまれ、格闘になる。
包丁を取ろうと必死。セイイチロウはつかまれた手首をほどこうとする。
そして――
誤って――その包丁は彼女の胸に刺さってしまった。
彼女は顔をこわばらせる。
そして、後ずさりをし、包丁を抜く。
血しぶきが、セイイチロウの全身にふりかかる。
「いやああああああああ!!!!!!!!!!」
入口から、女の子の声がした。
ハッとなってみる。
「おねえちゃん!」
少女は彼女に駆け寄る。
「いやだ、どうして、こんな」
混乱している。取り乱している。
「み……う……?」
言葉を必死に取り出そうとしている。
「ご、めん……ね……」
彼女はこと切れた。
少女は苦しく、切なく叫んだ。大切な人を失った悲しみに暮れていた。
そして、セイイチロウをにらみつけ、突進した。
「この! 人殺し! 人殺し! 人殺し! 人殺し!!!!!!」
「お、オレは……そんな……」
動揺していた。
「浩二郎に続いて、お姉ちゃんまで! あんたはどれくらい奪えば気が済むの!」
「な……なんで……!」
彼女は死に、新しい悲劇を生み、この事件は幕を下ろすのであった。
なんか、
ダイジェスト感覚で申し訳ないです。
しばらく期間が空いて、ようやく時間に余裕が多分出てきました。
なんとか、この章だけは終わらせてあげたいです。たとえどんなことになっても。
次はまたいつかはわかりませんが、やっていきます。




