ツキハのお話~男の供述~
ある男の言い分。
私が望むことはただ一つです。あの子を返してください。あの子を私の元へ返してください。これ以上私から何も奪わないでください。
私には、妻がいました。当然でしょうが。だけれど、逃げられました。妻は私に借金を押し付け、いつの間にか作ってた男と共に逃げました。
私はショックを受けました。私は妻や娘の為に尽くしてきたつもりです。ですが、これがそんな私への仕打ちというのでしょうか!
孤独を感じました。捨てられたショックで自殺も考えました。実際、山へ行き、首を括ろうとしました。でも、私にはあの子が……いました。あの子だけが私の唯一の良心。支えでした。だから私はあの子を育てました。一心不乱に。父の手一つで。どんなに仕事が忙しくても、食事を作ったり、身の世話もして、寝ない日もしばしばあった。
私は、あの子の笑顔を見るだけで幸せでした。私にだけ向けてくれるあの無邪気で愛くるしい笑顔が私の支えになっていたのです。
私はもう誰も私の傍からいなくなってもらいたくない。
溺愛していた人に、裏切られたくない。ずっと私の隣にいてほしい。
ただそればかりを考えていました。
ただ、それなのに……貴方たちは私からそれを奪った。
全て奪ったんですよ!
私にはもう……何もない。何もないんだ。あの子がいなくなったら……私はどうやって生きていけというんだ。もう、苦しい。死んだ方がマシだ! その方が……幸せだ。苦痛しかない生はただの不幸なんだ!
返せ……。
返せ……!
私からあの子を返せ!
あの子もそれが幸せだった。私の傍にいる事が幸せだったんだ。それだけははっきりと胸を張って言える!
お前たちがあの子の笑顔や幸せを壊したんだ。
何故……?
私が……私たちが何をしたと……?
お前たちが全て悪い。だから、早く、私たちを幸せにしろ!
――一つ。一つだけ言わせてくれ。
――鬼畜!
これからのお話は、別のお話で書こうと思っていたやつです。三篇です。これが終われば、三分の二が終わる、的な感じ。
次は9の1の予定ですが、厳しい。




