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花は散り急ぐ  作者: 夏冬春秋
花は枯れることを知った郎女は何を思うか
34/48

誠一郎のお話 承

よきかなよきかな

誠一郎のお話


「うっす。いっち。お久―」


 オレが街中を歩いていると、慧莉と出会った。なんだか懐かしいような感じがした。


「久しぶりだな」


「うへへ」


 気持ち悪い笑みを浮かべながら腕を組もうとしてくる。オレはサッとよけた。慧莉はケチと言う。


「それで何の用だ?」


「あれ? 用がなければ声をかけちゃいけないんですか?」


「おう。そうだ」


「ふーん。じゃあ、うちはいっちと話しに来た。それが用になるっすね」


「あっそ」


「ねえ。いっち。商店街でくじやっているの知っているっすか?」


「ああ。みたいなだ。券がないからやってないが」


「持ってるって言ったら使うっすか?」


「いや。自分で使いな。オレはいいよ」


「へえ。でも、残念っすけど、うちが使ったんで、もう持ってないっすよ」


「なんだよ。じゃあ、そんな話をふるなよ」


「あれれ? そんな態度とっていいんすか?」


 にやにやと笑う。


「なんだよ。気持ち悪い」


「実は、一等賞とったんすよ」


「は? マジで?」


「うっす。六名の旅行券。どうっすか? 欲しいっすか?」


「いや、いらないよ」


 オレはそっぽを向いた。


「やせ我慢して。いいっすよ。うちはそれで。うち、いっちたちと一緒に行きたいんすよ。人数的にも、そうっすし、母親を連れて行きたくないんで」


 慧莉は悲しい顔をする。


「とにかく。うちといっちと、はっちとふっちとつっちとこっち。六人。行けるっすよ」


「ちょっと待て。まあ、あいつらに聞いてからだ。あと、コトリは人数にはカウントされないぞ。残念ながらお荷物だぞ?」


「そうっすね。確かに。一人枠が空きますね。だれかいるっすか?」


「いない……」オレはルナを思い浮かばせた。でも、ダメだ。「まあ、五人でもいいんじゃないか? 多分。一人分は勿体ないが、まあ、いい」


「いっちに友達はいないっすか?」


「うん? どうだか。お前は?」


「うちはいませんよ」


「胸を張って言うな」


「まあ、これ、来月の頭なんで、その日までに決めればいいっすね」


「ああ。そうだな」


 オレはため息をついた。


「そうそう。最近、近所で捕まったって話聞きました?」


 オレは歩く足をとめた。


「……そうだな」


「恐ろしいっすね。うーん。家を見に行ったすけど、落書き沢山! なんか、可哀想っすよね。だって、あれ、関係ねぇっすよ。加害者家族も被害者っすよ」


「みたいだな。本当に、辛そうだよ」


 オレは立石の学校の立場を思い浮かべていった。


「というか、あれって、まだ確定じゃないんすよね? ただそれだけなのに、人って恐いっすね。たったそれだけで、罵詈雑言を浴びせるわけっすから」


「そうだな」


 オレは頷いた。そうすると、目の前から立石が歩いてきた。ひどくやつれ、死んだ魚のような目だった。


「よう。立石。元気か? どうしたんだ?」


 オレは立石に話しかけた。立石はビクッと怯えた。


「あ、ああ……柴坂か。ごめん。今、話す気になれない」


 かすれた声だった。


「そうか。まあ、オレは何も出来ないが、とりあえず、耐えろ。今はそれしかないさ」


 立石は何も言わずに去っていった。


「あれってもしかして噂の?」


「さあな?」


 オレは肩をすくめた。いつまでも立石を見つめている慧莉を小突いて、視界から立石を外させた。




 

「おやおや。ちょっとお声をかけてもよろしいかな?」


 慧莉と歩いていると、突然声をかけられた。


「いやはやもはや。どうも突然すいやせん。私は、アレです。生原奈美菜といいますよ」


「僕は西山・イツキ・ジューイリムリードゥです。突然すみません」


 茶髪の女と銀髪の男がオレたちに声をかけた。西山とかという奴は、警察手帳を見せた。


 オレはドキッとした。心臓が飛び跳ねた。警察に思い当たることが多すぎて、余計震えた。


「どうしました?」


「とりまとりま、ね。話を聞きたいかな、と。立石君について。もしくは、なんか、怪しい人でもみたか、と」


「いつも思うんですが、その聞き方どうにかなりませんか?」


「むりむり」


 なんか、言い争いを始める。


「そもそも、言葉を教えたのは私よ私。それはあんたにあげたんだから、ね? ね? こんなこんな話し方するっきゃないっしょね?」


「なんなら返しますよ」


「結構結構」


「あの? オレは話さなくていいですか?」


「ああ。ああ。すまんすまん。とにかく、話してほしい。まず、立石君の事。関係は無いけど、ね。まあまあ、一応、ね。犯人は、立石君の兄とは、限らないから、ね。他の可能性もあるから、そこら辺を調べたい。調査がしたいんよ」


「ふ、ふーん……」


 変わった人だな。そんな印象だ。オレは、とにかく自分の事じゃない。と一安堵した。オレは自分の知っている事を話した。あまり役に立っていないのは、顔を見れば分かる。


 話しているとき、西山という男の目線が気になった。怪しい目だった。笑みを浮かべていたのだが、その笑みには何か別の意味が含まれているような、そんな感じがあった。オレは西山にどうかしましたかと尋ねると、何もない、と否定するばかり。オレは西山に対する疑念が強くなる。


 特に深い出来事はなく、終わった。


「とりまとりま、お疲れ。ありがとさん」


「ご協力感謝します」


 そんな風に言って、去っていった。


 しばらくの間。


「何か、興奮したっすね。ああいうのってドラマだけかと思ってたッすけど、凄いっす。もう、やばいっす。色々とぱねえっす」


「語彙力」


「そうっすよね。まあ、大体うちが興奮しているのが伝わればいいすよ」


「伝わりづらいぞ」


「ふむ。しかし、立石さん。っすよね? 犯人じゃないといいっすよね」


「そうだな」


 オレは低く言った。そうであってほしい。オレは不思議とそんな思いだった。




「セイイチ! 遊ぼう!」


 学校から帰ってきたら、ハナがこう言ってきた。オレは「なにしてあそぶか?」と言った。ハナは、「出かけたい」と意気揚々と言う。オレはたまにはいいかと、ハナを外へ連れ出すことに。


 フウカとコトリは二人でお留守番しているそうだ。気を使ったのだろう。ツキハ今家にいない。友達が出来たようだ。近所の子だ。家も近い。


 フウカ曰く、ツキハは沈んだ顔で出かけていった。だそうだ。そういえば、昨日から様子が変だったような気がする。何か思い詰めていたような。そんな感じ。


 まあいいかと。気にしないことにした。


 オレはハナを連れて、出かけた。街へ出かけ、ハナの欲しいものを買ってあげる事に。だが、ハナはそういったものがよくわからないそうなので、オレが大体選ぶ感じに。服やら、靴やら、アクセサリーとかいった雑貨品などを見て回った。


 いくつかハナに合うものを買ってあげた。ハナは喜んでいたので、まあ、いいだろう。


 ゲーセンでUFOキャッチャーをして、ぬいぐるみをとってあげたりした。大切にするそうだ。


「楽しかった」


 ハナはぬいぐるみを抱きかかえながら、えくぼを崩して言う。オレまでもが笑顔になる。幸せを感じられる表情だ。ハナの幸せを分けてもらえているような気がした。


「お久しぶりですね」


 帰ろうかとしていた時に少女に声をかけられた。たしか、高峰美雨……だったか? オレは反射的にハナをかくした。


「久しぶりだね。元気にしてたかい?」


 オレは平常を装う。


「はい。おかげさま、で。ところで、そちらは?」


 いやに堂々としていた。


「まあ、知り合いの、な」


「ハナ! よろしく!」


「……う、うん」たじろいでいた。「楽しそうですよね。浩二郎から聞いてた時とは大違い。家族が行方不明なのがそんなに嬉しいんですか?」


「何が言いたい?」


「そのままですよ。わたしは、前に言った通りに、貴方が浩二郎を殺したと思っていますから」


「どうしてそうなる。勝手に行方不明になっただけで、オレは関係がない」


「そうですか? まあ、自分をぞんざいに扱っていた人たちなんか、関係ないんですよね。わたしは、もう、全て知っているんですよ」


 にんまりと笑った。鬼の首を取ったようだった。


「こちらの花さん。それと、たしか、風香さん? 他にも、小鳥さん、月羽さん。今、この四人の方と共に暮らしているそうですね」


「……!」


 瞳孔が開く。何故、そこまで知っている?


「家族が行方不明になった当日に花さんと暮らすようになったそうじゃないですか? 怪しさプンプンですよ」


「だから、なんだよ」


「全て知っているって事ですよ。あんたが花に浩二郎と、親を食べさせたことを……!」


「……」


 オレは静かになる。睨み付ける。オレの頭はこいつをどう処分するか、という考えで一杯だった。


「あ、いたいた」


 そんな時、男性の声がした。聞いたことがない。そいつは、高峰美雨に話しかけていた。


「ああ。ヒロさん。すみません。お話をしていました」


「ああ。浩二郎君のお兄さんか。美雨から聞いているよ」


「紹介します。兄のヒロさんです」


 さわやかな感じでヒロというやつは笑った。オレは軽く会釈した。


「なんの話をしていたんだい?」


「面白い話です」


「そうか」


 二人で会話をしている。オレはいつこの場から去ろうか考えていた。


「ハナ、つまらなかった」


 ハナはふくれっ面になった。オレは、余計な事は言うなよとハナに圧をかけた。


「そうだったのかい?」


「うっさい。ハゲ!」


「えー」


 ハナはオレの背中に隠れた。ハナにしては珍しい。悪口はあまりいわない子なのだが。


「ま、美雨よ。そろそろ帰ろうか。用事は済んだし」


「はい」


「じゃあ。また。誠一郎君?」


「……」


 この男の目に光が宿ってなかった。深い闇があった。オレは眉間に皺をよせる。


 ヒロと美雨は去っていった。


「なあ……ハナよ」


「はい?」


「家に帰ったら、少しはなそう」


「うん? うん」


 ハナの肩を軽く叩いて、帰ろうとした。


「やや! 久しぶり! 久しぶり! これはこれは奇遇ですな!」


「久しぶりと言っても、昨日会ったばかりじゃないですか?」


 生原が声をかけてきた。どこから現れてきたのやら。西山はいないようだ。


「いつからいました?」


「さっき。まあ、そんなことはどうでもいい。ところで? こちらのハナさんはいったいどういう?」


「本当に、どこから聞いていたんですか? ちょっと預かっているやつですよ」


「ほうほう。これはこれは。中々傑作だ。可愛い子。とても可愛い子。愛でたいですな」


 生原はハナに抱き付いた。ハナは暴れて、押し出す。


「こいつ、ウザい!」


「だろうな。ところで、もう一人は?」


「ああ。別行動。だけど、さっき呼び出したから来ますかね」


 そんな事を言った時、タイミングよく西山が現れた。


「あ……」


 西山は顔を蒼白にさせていた。オレはなんだ? と首を傾げた。


「あー! コトリの! 犬の!」


「あ、ああ……あの時の子か」


「知り合いなのか? ハナ?」ハナは説明を始めた。「それは、ご迷惑かけました」オレは頭を下げた。


「う、うん……。そうだね」


 なにか、居づらいような感じだった。


「どうしたどうした? 西山君? イツキ君? ジューイリムリードゥ君?」


 肩を組み、顔を近づけた。煽っているように見えた。


「いえ。なんでもありませんよ。ところで、急用ってなんですか?」


「ああ。あれ? 嘘。ただ、呼んだだけ」


「怒っていいですか?」


「ダメ。上司に怒るとか、人間なってないぞ?」


「はあ」


 また、これか。オレもため息をつきたくなった。二人のやりとりを眺めていると、携帯が鳴った。知らない番号だ。オレはそれに出た。


「もし『助けて! 今、あの子の家! えっと……きゃ!』」プチッと通話がきれた。


 オレは「おい?」と呼びかけ続ける。だが、無意味だった。


 あれは……ツキハ? その声に似ていた。


「今のは? 危ない空気だね」


 ツキハの声が届いていたようだ。生原は神妙な面持ちで睨む。


 オレも何か危険な空気だというのは察した。助けてという、切羽詰まったこえ。それに唐突に切れた通話。これで察しない訳にはいかない。


「場所、わかる?」生原。


「多分」オレ。


「急ぎましょう」西山。


「うん? なんのこと?」ハナ。


 オレ達は急いで、ツキハがいるであろう場所へ向かう事に。ツキハが今いるであろう場所は、最近できた友達の家だ。そこで何か異変が起こっているに違いない。






 病院にて。ツキハは傷心していた。ぐったりとしていた。ケガはしているが、動けるようだ。


 ツキハの行いに友達の父親が激昂したそうだ。オレはどうかんがえても、父親が悪いと思う。ツキハ椅子に座り、丸くなっていた。


「なあ、ツキハ。大丈夫か?」


 大丈夫じゃないのはわかっている。ツキハは首を振った。


「もう……わからない」


 委縮していた。顔は青ざめていた。


「あの子は、幸せだったのかな? わたしが何もしなければ……」


 オレは事情を聞いたから知っている。だから、オレがツキハに出す答えはもう決まっているのだった。


「幸せなものか。ツキハは正しい事をしたんだ」


「本当に?」


「それはそれは、嘘に決まっている。そうそう。ウソウソ」


 こんな時に、生原が割って入って来た。


「いいかいいいかい? ツキハちゃんちゃん。あんたは、間違った。まあまあ、私の立場的には、言ってはいけないが、私のただの個人的な意見になるけれどもでれも、あんたは彼女を生き地獄に落としたんだい。ヒトは間違いを犯すが、ツキハは、選択を誤った。ただただ。それだけのこと」


「どうしてそんな事をいうんだよ」


「誠一郎くんも? 心の片隅ではそう思っているのでしょう? 少なくとも、あの子の幸せは死であると私は考えるね」


「お前!」


 オレは生原の胸ぐらをつかんだ。


「やめてよ! もう……いい……」


 ツキハは顔を手でおおい、泣いてしまった。


「幸せを得られない生は苦痛でしかない。それを……理解するんだね」


 生原はツキハに顔を近づける。ツキハは、震えだした。


「ダルマは……」生原が呟く。「何もできないダルマは、叩きつぶされて壊される方が幸せなんだよ」


「お前、さっきから……」


「黙れ黙れ。まあ、いいじゃん? これは言っておくけど、幸せなんて人それぞれだ。私が不幸だといっても、向こうは幸せだというかもかもしれんない。そこを理解してね」


「……」


 これ以上言っても無意味だ。


 オレは、ツキハの手を引く。そして、家に帰るのだった。


うん。俺が初めて読んだ本は乙一の「GOTH」姉貴にすすめられました。

実は、自分は活字を読むと吐き気を催すレベルで本が大っ嫌いでした。だから、読書するやつなんて気狂いのおかしいやつだという認識でした。

だが、GOTHを読み、初めて、本を読むという素晴らしさに気がつきました。

そもそも、本なんて、ね。自分はバカだから理解できないんですよ。描写によるイメージがわかない。だったら、漫画を読んだ方が、分かりやすいし、面白い。

そんな常識を破ったのは、アレでしたね。純粋に面白いと感じた。分かりやすい、読みやすい。面白い。まあ、うん。

あれから本を読むようになりましたね。

乙一さんが、僕の原点。

僕の作品の「夕陽」は、ちょっと影響受けている。弥月とか、もろ夜ですからね。本当は夜月って名前で、だけどかぶるから弥月にしたという感じ。


花は散り急ぐは、本当はギャグ物の予定でした。

空から落ちてきた女の子を周りにばれないように隠そうとして、慌てふためく少年のお話を書くつもりだった。

まあ、書いててつまらなかった。以上。


誠一郎たちの名前は、その時から決まってましたね。そこからほぼ変わってない。まあ、唯一変わったのは月ですが。あれは、地球の民で、双子の姉妹。名前はつくよとつくね。月を見ると獣姿になる。東方で言うと慧音的な存在。

東方では慧音が大好きです。慧莉の「慧」の字は慧音から。と、どうでもいいこと。


まあ、疲れたので、そんな感じ。


次は7の0時

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