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花は散り急ぐ  作者: 夏冬春秋
花は枯れることを知った郎女は何を思うか
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フウカのお話

フウカのお話です。おまけだとおもってくれればいいです。


フウカのお話



 私が一人っきりでお留守番をしていた時のお話です。私が何故一人で家にいるのかと言うと、ハナちゃんがコトリちゃんをつれてどこかへ行ってしまったからです。そのため、セイイチさんがハナさんを探しに外へ出かけていったのです。私にここで待っていろと言い残し。


 私は今、セイイチさんに罰を与えられています。「テレビ禁止」とききようによってはぬるい罰ではありますが、私にとってそれはとてもつらい罰になります。


 しかし、事情が事情なだけに、許しを得ています。そこがセイイチさんの甘い所でしょう。


 私は許可を出されましたが、テレビをつけません。気分がそれに移っていかないからです。私はポツンと車いすに座るだけです。


 早く戻ってきてほしいな、私はそう思います。そして、夕方までには全員が帰って来てほしいと願います。


 今は二時を回ったところですので、二、三時間後までには、ですね。


 でもしかし、リビングで一人にされるのは慣れています。ですからあまり気にしません。


 今の私には手足があります。さらには、わずかではありますが、動くことも可能になりました。あの頃とは全く違います。天と地の差です。


 私に手足をくださった子……「ユウ」さんのおかげです。その子がプレゼントとして、彼女にとって大事な財産を私なんかに分け与えてくれたのです。そのおかげで、今のこの私がいます。


 私は少し気がかりであります。私は本当に正しかったのでしょうか。その事です。それが引っかかってとれません。


 確かに、セイイチさんの言うとおり、人は他人のおかげで生きていくことができます。つまり、助け合いながら生きているという事です。


 何もしていない、何もできない私が、はたして、助けられる、幸せを貰える、これは正しいのでしょうか。


 セイイチさんが手足を下さった時にフォローをしてくれましたが、時々不安になります。


 もし叶うのなら、「ユウ」さんに会ってお礼を言いたいです。


 あの人は何を想ったのでしょうか。


 自業自得の私の助けになっている事を知ってどう想うのでしょうか。


 コトリちゃんのように幽霊……霊体として私の前に現れてくれたとしたら。その時に私はそれを尋ねたいです。


 私がそのような事を考えている間に、時間は流れていきます。一時間。二時間と。進んでいきます。その間の私はただただ時計の針の動きを眺めるだけです。


 ルーチン化してきたころでした。そんな時に、私のその決まりきったマンネリを崩す出来事が起こりました。


 それは、電話でした。プルル……プルル……となり続けます。気がついてと泣き叫ぶように。


 私は、セイイチさんかな? と思い、受話器の前まで移動します。手をのぼしかけた時、わたしは迷い、その手が止まりました。


 私がこの電話に出ていいのか、その事で迷いが生じました。電話にはあまり出ないでほしいなというセイイチさんが言っていたのを思い出したからです。


 私はどうしたものかと悩みます。ひょっとすると、これはセイイチさんからの電話であるかもしれませんし……。


 私は、悩んだ末に、受話器を取りました。


「はい。もしもし。柴坂です」私は、その性を名乗ります。


『フウカか。よかった。出てくれて』


「セイイチさんでしたか。よかったです。電話にはあまり出ないように言っていましたから」


「いいんだ。それよりも、そっちにハナはいるか?」


「まだ帰って来ていません。その様子ですと、見つかっていないのですね」


『ああ。全く。どこへ行ったんだか。住まないが、まだ探してみるからもう少し待っててくれ』


「私の事は心配なさらずに。ハナちゃんたちのことを気にかけてあげてください」


『すまないな。もし、何かあったらこっちに電話をくれよな』


「はい。それでは……うん?」


『どうかしたのか?』


 私は、音に反応してしまいました。私の様子を電話越しから感じ取ったセイイチさんは尋ねます。


「いえ……。今、玄関が開いた音がしましたので」


『ハナたちが帰って来たのか?』


「多分。でも、どうでしょう? 足音は階段をのぼり、上に行きましたが……」


 私は音を聞いてそう判断しました。


『うむ。もしかして、ドロボーか?』


「セイイチさんは、鍵はかけましたよね」


『そのはずだが』


「でしたら、おかしいですね。普通に鍵を開けていましたから」


『なんだか、心配だから、そっちに戻るわ。もし危険を感じたら逃げるんだぞ。もしくは隠れろ』


「大丈夫ですよ。多分、ハナちゃんが帰って来たのでしょう。帰って来てもリビングには入りづらいですから」


『それも、そうか? でも、一旦帰る。何かあったら電話してくれ』


「はい」


 そうして、電話を切りました。


 私は入って来た人が誰なのか気になって仕方がありませんでした。しかし、私は自力で二階へ上がることが出来ません(不可能ではありませんが)。ですから、階段の下で「ハナちゃん?」と声をかける事しか出来ません。


 正直、この行為は危険以外何物でもありません。セイイチさんが言うようにドロボーだとしたら? 鍵を持っている事から、計画的な犯行になるわけで、私がいるという事を失念し、見落とす真似はしないと思いますが……。そもそも、私という存在自体がイレギュラーなのかもしれませんが。


「……?」


 声をかけても反応はありませんでした。シン、として静まり返っております。


 私はまさか? と思いました。


 私には、ある人物の顔が真っ先に思い浮かびあがりました。


「もしかして、ルナさんですか?」


 私はつい口に出してしまいました。


 静けさだけが帰ってくるだけでした。


 物音も何一つしません。私は、諦めてリビングへ戻りました。そこで物思いにふけました。


 もしもルナさんだとしたら、忘れ物でもとりに来たのでしょうか? しかし、気まずさからか、もしくはまだほとぼりが冷めないのか。私たちを避けようとしているのは分かりますが。


 再び、玄関が開く音がしました。


 恐らく、帰っていったのでしょう。


 私に疑問が浮上しました。私はそれを解消しようと試みました。でも、そのような時間はどうやら与えてもらう必要もないようです。


「すみませーん」


 女の人の声がしました。


 私は玄関へ向かいました。


 そこには、高校の制服を着た人と、その人の後ろに隠れるハナちゃんの姿がありました。


「いやー。ちょっと泣いていたんでうちが連れてきたんすよ」


「泣いてない」


 ハナちゃんがその人の背中に隠れながら言っていました。


「いっちの妹さん、すよね? うち、慧莉っていうっす。前にいっちに世話になったっす」


 慧莉という人は今までの経緯を説明しだしました。困っていたところに入り、一緒にコトリちゃんとタロウを探してくれていたようです。しかし、見つからなかったので、ひとまず家に帰る事で決着がついたそうです。


「わざわざすみませんでした。私の妹がご迷惑をおかけしました」


「そんなかたくならなくて、いいっす。うちは気にしないっすよ。あ、そうだ。どうせなら、うちのこと、さとりんってよぶっす。仲良くなりましょや。ため口大歓迎っす」


「分かりました。私は、フウカで結構です。慧莉さん」


「かー。兄妹っすね。かたくなにあだ名で呼ばない。まあ、いいっすけどね」


「フフフ」


 私は笑って流しました。


「ハナちゃん、心配しましたよ」


 ハナちゃんは、隠れたまま出てきませんでした。私は、慧莉さんを見ます。互いに苦笑します。


「そろそろセイイチさんが帰ってきます。あがっていきますか? お茶をお出しします」


「あ、いいっすか? じゃあ、お言葉に甘えて。いやあ。いい妹さんっすね。欲しいです」


「慧莉さんがお姉さんでしたら退屈しなさそうです」


「でしょでしょ? あ、車いすおすっすよ」


「でも、近いので」


「ええっちゅうの」


「ありがとうございます」


 私は、引いてもらいました。


「そうだ。セイイチさんに連絡しなければいけませんね」


「なら、うちがやるっすよ。あ、でも、いっちの驚く顔が見たいっすから、黙ってた方がいいっすね。すまないっすが、やっぱりふっちがやってくれるっすか?」


「ふっちって……分かりました」


 私は受話器を手に取り、ボタンを押そうとしました。しかし。ハナちゃんがそれを止めてしまいました。


「うー。やだ」


 首を横に振ります。


「はっち。勇気っすよ。逃げたら何にもならないっすよ」


「……」


「慧莉さんの言うとおりです。ハナちゃんは反省していますか?」


「……うん」


「それなら、自分がどうするべきか、わかりますよね? ちゃんと、面と面を合わせるべきですよ相手に理解してほしかったのなら。物事をはっきり伝えなければいけませんよ」


「うんうん。その通りっす」


 ハナちゃんは黙ります。そして、小さく頷きました。


「では、電話しますね」


「はっち。今のうちに心を落ち着かせるっスよ」


「うん」


 私がセイイチさんへ電話をかけている時慧莉さんがハナちゃんをなだめていました。


 セイイチさんに事情を話すと一安心していました。私は「まず怒らずに、話を聞いてあげてくださいね」と言いました。そして、電話を切りました。


「もうじき着くそうです」


「そうっすか」


 慧莉さんは、ハナちゃんの背中をポンとたたきました。ハナちゃんはソファーの上でうずくまります。


「フウカ……」


「何?」


 ハナちゃんが、元気がなさそうに私を呼びました。


「ごめんなさい。心配、かけた」


 私は最初、驚きました。そして、ホッとしました。ハナちゃんがしっかりと反省してくれているという事に。私は微笑を浮かべました。


 ハナちゃんは、成長したな、と思いました。この成長を嬉しく思う親の気持ちのようでした。


 ハナちゃんは、私の目をしっかりみています。私はそのしっかりとした瞳を見て、「大丈夫だよ」といいます。「だけど、もう困らせるような事はしちゃ駄目だよ」


「はい」


 シュンとしました。


 今まで、勝手な行動を起こしても、このような反応は一度もありませんでした。私はハナちゃんに称賛を与えたいです。


「きちんと謝れて偉いですね」


 少し、にやけてしまいました。


「……うん」


「次は、いっちにいえるといいっすね」


「うー」


 ハナちゃんはうなだれてしまいました。


 私は苦笑を漏らします。


 そうこうしていると、セイイチさんが帰ってきました。


「ハナ!」


 ドアを勢いよく開けました。


 走って来たのでしょう。息を激しく乱しております。汗だくだくです。


 セイイチさんはハナちゃんを呼びます。ハナちゃんは一歩前へ出ます。慧莉さんが背中を軽く押します。


「まったく。心配させやがって」


 セイイチさんは、ハナちゃんの頭を撫でました。セイイチは私が言ったように起こりませんでした


 ハナちゃんは嗚咽を漏らし始めました。泣き崩れました。そして、「うー。ごめんなさい。セイイチ。ハナ、悪かった。ハナ、勝手に、みんな、つれて、なくした。ごめんなさい……」


 セイイチさんはハナちゃんを抱きしめました。


「全く。自分で何をしたか、ちゃんと理解しているならいいんだ。でも、おしおきは受けてもらうぞ」


「うん」


「ハナがいればコトリやタロウはすぐ見つかるからな。だから、まず、それからだ」


「え?」


 私たちはきょとんとしました。


「嗅覚があるだろう?」


 ハナちゃんはすっかり忘れていたようで、目をぱちくりさせていました。そういう私もすっかり失念していたので、なるほど、と感嘆の声を上げてしまいました。


 セイイチさんは立ち上がりました。


「というか、なんで、慧莉がいるんだ?」


 慧莉さんは経緯を説明しました。「本当は、いっちの驚く顔が見たかったすが、まあ仕方ないっすね」


「何を馬鹿な。でも、ありがとう。迷惑かけたな」


「いいっすよ。それに、まだ用件は終わってないっすから。ね? はっち」


 慧莉さんはハナちゃんにウインクします。ハナちゃんはこくりと頷きました。


「セイイチ、わがままだけど、ハナ、もっと、セイイチと、一緒に、いたい。だから……これ、やった」


「ん? つまり……?」


「要するに構って欲しかったってことっすよ。よくあるはなしっすよ」


「なるほどな。すまなかったな」


「ううん……。ハナも、ごめん」


「そうだよな……うん。今まで気づけなくてすまなかった」


「ううん」


 セイイチさんは、頭を撫でました。





 こうして、ここの問題は解決したようです。でも、まだ続きがあります。


 この後、セイイチさんとハナちゃんはコトリちゃんとタロウを探しに行きました。慧莉さんは、私と一緒にここへ残ってくれるそうです。


 私たちは取り留めもない話をして、時間を潰します。


 やがて、セイイチさんが帰ってきます。そこに居たのはタロウだけでした。コトリちゃんは残念なことに発見できなかったようです。ハナちゃんはまた泣きそうになっていました。


 一体、ことりちゃんはどこへ行ってしまったのでしょうか。


 それは、明日分かることなのですが、今の私たちは心を落ち着ける場所を見つけるのに必死でていっぱいでした。


 これは、明日の、明け方のお話になりますが。私たちは私たちの事件が解決しないうちに、別の新たな事件に巻き込まれることになります。


 でも、その前に。お話しなければならないことがあります。重要か否かと問われると、否なのですが、一応紹介しておきます。これは、私が慧莉さんとセイイチさんたちの帰りを待っていた時のお話です。


 私たちは、世間話に花を咲かせていました。その時でした。一本の電話が鳴りだしました。


 慧莉さんは「いっちのっすかね?」といっていました。私も、そうだと思い、受話器を取りました。


「はい。もしもし。柴坂ですが」


『え? ……あれ? し、柴坂……さんのお宅、なんですか?』


「? はい」


 聞いたことのない声でした。私は、もしかして大きなミスを犯したのではないのでしょうか。明らかに向こうは動揺しています。


『あの、えっと。わたし……高峰、美雨っていいますが……せ、誠一郎……さ、さん、は……いますか?』


 セイイチさんに用がある?


「すみません。ただいま出かけておりますので……」


『そ、そうですか……』


「折り返し電話を……」


『あ、いや、いい……』私の言葉を遮ります。『結構です』そして、プツンと切れてしまいました。


「誰っすか?」


「セイイチさんの知り合い、という事ぐらいしか分かりませんでした。用件も告げずに、一方的に切ってしまいました」


「もしかして、あれっすかね」


 慧莉さんは、小指を立てました。


「まさか。でも、セイイチさんに伝えれば分かりますよ」


「どうすっかね」


 慧莉さんは含み笑いで肩をすくめました。





 そんなことがありました。後で、セイイチさんにこの事を話したところ、何やら、地雷を踏んだような、険しい表情をしていました。きっと何かあるのでしょう……。その時には分かりませんでした。


 同日の夜に、二人だけになった時に、理由は教えて貰いましたが。


 私は、高峰美雨がセイイチさんを避けているような感じがしましたが、実は逆だった、と思いました。


 これは、セイイチさんの問題ですが。もしも、協力してほしいといわれたら、そうするつもりです。平和的に。そうなるように願うばかりです。


 そういえば、やはり、あの時家に来たのはルナさんでしたのでしょうか。それは、今でもわかりません。

はい。

というか冗長ですかね。

次は、セイイチのお話になりますが、7月8日が長い。どれだけ話数とるんだよ。

まあ、そこはどうでもいいすね。


次は、セイイチのお話 記 になります。


7月8日の18時です。



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