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花は散り急ぐ  作者: 夏冬春秋
花は枯れることを知った郎女は何を思うか
21/48

やがて迎える彼らのお話

やっぱなんとなく入れておきます。

読まなくておk

ツキハのお話


 あの時のあれは嫌な事件だった。どうしようもない一人の男の身勝手で哀れな愛が引き起こした事件だった。


 あの子は幸せだったのか。


 今、改めて振り返ってみる。あの日だ。自分が何もしなければ、あの子に会いさえしなければ、あの子は幸せのままだったのだろう。きっとそうだ。


 あの子は自力で、物を持つ術がなく、歩く力もなく、見る事もなく、喋る事もできずに、咀嚼こともできず。でも、生きる事は出来ていた。


 あるやつが言っていた。あの子は死んだ方が幸せだって。認めたくないけど、その通りだ。ただ意識があるだけのダルマは、叩きつぶされ壊された方が幸せだ。なぜなら、幸せを得られない生はただの苦痛でしかないのだから。


 わたしは……。


 わたしは、あの人に死神、だとか、厄病神、だとか、そんな言葉でなじった。わたしがそんなことをいう資格はないんだ。それらは、わたしが請け負うべき言葉だ。わたしは、あの人まで傷ついてほしくなかった。だけど、結果として、傷つけてしまった。


 わたしはこれからも、罪を犯していくしかないんだ。


 わたしが片目を失った時。その時にわたしは誓った。罪人になると。


 願いを叶えるとダルマは失われた目を返してもらえる。


 わたしがこの目を返してもらえるのはいったいいつだろう? どれくらいの罪を犯せば、返してもらえるのだろうか。


 もう……疲れちゃった……。



立石のお話


「なあ? 誠一郎よ。どうして俺がこんな目に合わなくてはならないんだ?」


 俺はある展望台にいた。暗闇に沈む町を眺めながら誠一郎に話しかけた。誠一郎からの答えはなかった。俺は後ろを振り返り、あいつの顔を見た。しかし、暗くてよく見えなかった。


「俺の全てはあいつのせいで狂った。俺はまったく関係がない。なのに何故、罰を受けなくてはならないんだ? おかしい話じゃないか。真面目に生きてきたつもりだった。だが、家族の一人が罪を犯したから、ただそれだけで何故それを否定されなければならないんだ」


 俺は拳を強く握りしめた。


 誠一郎は深呼吸する。そして、口を開いた。


「オレは、お前がそういうやつではないと知っている」


「お前だけに理解されてもどうしようもない」


「いいや。一人だけでも、自分の理解者がいれば、救われるんだ。オレは、それがわかった。仮に家族の呪縛が邪魔しようとも。それだけで、報われるんだ」


「人は愚かだ。何も考えずにただ目の前にある情報に流され、それが真実であると信じ込む。俺はもう嫌だ。誰も信用が出来ない。なら、死んだ方がマシなんだ」


 俺は柵を乗り越える。下は崖。落ちたらひとたまりもないだろう。


「じゃあ、何故、オレをここへ呼んだ? 信用していないのなら、一人で静かに朽ち果てていられただろう。それをしなかったのは、お前がまだ人を信用する心を持っていて、さらに生きたいという気持ちがあったからだろう。安心しろ。少なくともオレはお前の理解者でいられる。死ぬのは逃げだ。自分が悪くないと思っているのなら、生きろ。生きて戦え。自分の無実の為に」


「俺は、あいつを殺してやりたい。人を殺したあいつを。俺を苦しめるあいつを。あいつのせいで、クラスから排除された。誰も俺と目を合わせようとしない。声をかけようとしない。人殺しと落書きをされる。前日まで仲が良かった人たちが、俺の事を、豚を見るような目で見る。冷めた目で、見下す。それが嫌だった。だから、すごく、殺意が湧く。殺してやりたいんだ」


「同じ土俵に入ってどうするんだ? お前はその道へ来てはいけない。オレが助力する。絶対に、助ける」


「俺は……」



美雨のお話


「貴方にまた会えてよかったです」


「ああ。俺もだ」


 私たちは抱きしめあった。再会を喜び合う。二度とは会えぬと思っていたあなたの温もりがそこにあった。わたしはもう満足だった。


「さあ。復讐をしよう。俺達の愛を壊したあいつへ」


「はい。必ず」


 ああ。ああ! わたしの幸せはあいつを殺す事で得られる! あいつを殺せば、この人が私の傍にいて微笑んでくれるのだから。



ルナのお話


 ヒトは身勝手な生き物だ。結局は自分の為しか考えない。


 でも、私は他人の事を考えようとした。それが傲慢だったのか。私には分からない。


 結局私は全てを失った。これが罪を犯した者の運命なのか。


 私は、自分が生きる為にあの人たちを犠牲にした。


 半年の監禁。拷問の末、仕方のない選択ではあったが、私は、自分が生きる為に……。


 生きていて良かったと思う。それは本音だ。生きていたから宇宙を知れたし、色んな人と出会えた。経験をつめた。人生を謳歌できた。だけど、これは、あの人たちの犠牲の上でなりたった幸福でしかない。


 わたしは、悩む。罪人が笑っていいのか。楽しんでいいのか。私をこんな目に合わせたあいつは、私たちとの思い出を肴にして高笑っているのだろう。


 ――ごめんなさい。今まで、貴方たちの分まで生きようとしました。でも、もう疲れてしまいました。今から、貴方たちに会いに行きます。いえ。会えませんね。私は地獄に行くのだから。


 私は川の中に自分の身を沈めていく。死の冷たさが全身に伝わる。呑み込んでいく。


 お別れよ。この世に。ごめんなさい。私は貴方たちに貰った命をここで投げ捨てます。許さなくていいです。ずっと恨んでください。



ハナのお話。


「嫌だ! 死なないで! ハナ、人を、生き返らせる! だから! 死ぬなんて、言わない!」


 ハナは、泣き叫んでいた。今にもこと切れそうな小さな人間に向かって。


 彼女はある場所から逃げ出したクローンの小人だ。容姿はハナによく似ていた。


「ううん。やめて。それだけは絶対に。私は、幸せだった。みんなが味わえなかった幸せをわずかな間でも、体験できたんだ。これ以上を望んだら、バチが当たるよ」


「そんなことない!」


「わたしの、わがまま。聞いて。このまま寿命を受け入れさせて。それが、せめてもの償いだから」


 この小人の寿命は、一週間しかない。


 この小人は虐待を受けていた。人権もない小さな人間のクローンの使い道はそれしかないのだから。


 仲間は腸を抉られ、目をくりぬかれ、人形を分解するかのように、体をもてあそばれていた。鳥や虫のエサになるものもいた。共食いもさせられた。


「お願い。ね? 私は、それで満足なんだ。今まで、ありがとう。私に、幸せな世界があるということを教えてくれてありがとう」


 小人は、動かなくなった。


 ハナは泣き叫ぶ。失ったものは二度と戻っては来ない事を理解した。



誠一郎のお話


 オレがやってきたことはなんだったんだ。やっぱり、罪だったのか? オレにとって、人殺しはなんだったんだ? 最初は、自分の為だった。次は、ハナの為だった。自分の為に、自分の大切な人の為に、オレは罪を犯し続けてきた。


 だが、今目の前に起こった現状はなんだ? オレは何故、彼女に「人殺し」となじられているんだ。


 自分の命を守るためだった。正当防衛だ。それなのに、何故、オレはこんなに責められなくてはならないんだ。


 自分の為にやることは、罪だったのか? あいつも、罪を犯した。そして、ボクを殺そうとした。罪を犯した者は罪に裁かれるべきである。だから、オレは今までそいつらを選んで殺してきた。


 オレは……罪人だったのか……? いや……わかっていたのかもしれない。ただ、誤魔化そうとしていただけなのかもしれない。


 オレはあの日からずっと嘘をついていた。自分の存在も何もかも、全てが嘘。


 生まれ変わった気がした。きっとそれも嘘だったんだ。気がしただけだ。そう信じようとしただけだ。


 だから……オレは……。



ホント昔に、この章を出す前にひとまず上げて消しましたが、やっぱ入れとくかな、と思って入れました。

ぶっちゃけ、いらないよねwwwww

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