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花は散り急ぐ  作者: 夏冬春秋
月の下の美しき人よ
15/48

通り雨が通り過ぎるのを待つだけ

ショートショートつくってみました。

殴り書き。

 オレは電車に乗っていた。


 買い出しだ。外は相変わらずの雨だ。本当に梅雨はうざったい。


 オレが乗車している電車は人が少なかった。この車両にいる人はオレを含めて十人ぐらいだ。オレはその中で本を読んでいた。駅に着くまでの暇つぶしだ。オレは字を目で追っていく。


 その時、声がした。会話だ。何も不思議な事は無い。別に、全員一人だけで乗車しているわけではない。知り合いと乗っている人もいる。


 しかし、どうも雲行きが怪しかった。ケンカだろうか。男の声色が低くなっていっているのが分かる。


 オレは勘弁しろと舌打ちをする。そういうのはよそでやってくれ、という話だ。


 男の声はどんどん荒くなる。オレは気になって、そっちを見た。


 カップルだ。男と女性が隣になって座っていた。どうせ痴話喧嘩だろう。普通ならそれで終わりだ。しかし、どうもそれで終わらせてはいけないようだった。


 その女性はひどくやつれていた。疲弊した顔だ。というか、顔にあざやたんこぶが出来ていた。オレはすぐに確信した。DVだと。左目を眼帯で隠していた。多分、怪我を隠しているのだろう。


 まあ、触らぬ神に祟りなしという。下手に関わって面倒事になるのは避けたい。こういうケースは厳しいのだ。見て見ぬふりをするのは人として駄目だが、かといって、安易に関わっていいものではない。


 男は急に立ち上がり、怒鳴った。場の空気が一瞬にして凍っていく。


 女性は周りを気にして謝っていた。もちろん、男にもだ。そして、「座ってよ」と促す。その表情は怯えだった。


 内容はよくわからないが、どうやら、あれみたいだ。女性が男友達と会っていたというのを知り、怒っているようだ。女性は「そういうのではない」と必死に弁明しているが、聞く耳を持っていなかった。


 オレは、それぐらいの事で普通は怒るか? と疑問を持つ。ため息をつく。オレは男の声をうるさいなと、思っていた。車内での迷惑行為はおやめください、と駅員もアナウンスで言っていただろうに。


 オレは気にせずに本を読もうとする。しかし、集中が出来なかった。


 オレは周りの様子を見た。みんなは知らないフリをしていた。女性の容姿から、二人の関係は安易に想像できるが、それでも止めようとするものはいなかった。


 空気は非常に重かった。オレは本に目を落とす。早く終わらないかなと、心の中で呟いた。


 男の怒りのボルテージがあがっていく。女性は必死に男の怒りを鎮めようとする。しかし、どうしようもなかった。


 男は女性の言葉は聞いていない。聞こえていないのだろう。


 そして、とうとう男は女性に手をあげた。ビンタだ。頬を思いっきり叩いたのだ。パンッと鋭い音が鳴った。


 女性は腕で顔をガードする。丸くなっていた。「やめて」と言う。完全に怯えていた。男はさらに頭を叩いた。女性は「ごめんなさい」と悲壮感ただよう声で言った。


 すると、前に座る人が立ち上がり、止めようとしていた。しかし、少し腰を浮かすだけで、それからは動けなかった。そして、諦めて、座りなおした。


 他の人たちは目をそらし、無関係を装っていた。


 オレは、意外に人間は薄情なものだな。と読書しながら思っていた。


 だけど、行動する者が現れた。一人の男性が立ち上がり、男のそれを阻止した。腕を掴んで「やめろ」と言っていた。


 男は面を食らう。驚いていた。そして、顔を真っ赤にし、男性に殴りかかっていった。男性はそれをひらりと躱すと、男を一発殴った。男はそのまま倒れた。尻餅をついた。戦意を喪失していた。


 オレは、男性に「えらいえらい」と賛辞の拍手を心の中で送っていた。


 三人は、次の駅で降りていった。恐らく、駅員とか、なんかで話し合うのだろう。


 車内は緊張感が一気にほどけ、みんな、ホッと胸をなでおろしていた。


 オレは読書に戻った。




 二週間ぐらいが経っただろうか。


 オレはハナとフウカとコトリの四人でテレビを見ていた。九時のドラマが終わり、一息ついていた。全員で今回の感想を話し合っていた。


 そうしている内に夜のニュースの時間が始まった。オレたちはそれを聞き流していた。しょせんBGMのような扱いだった。


 しかし、オレはとある事件の内容に惹きつけられた。


 どうやら、元彼氏が、自分をふった彼女の自宅に押し寄せ、殴り殺したという内容だった。フウカは「恐いですね」と言っていた。


 オレが興味を持ったのはこれじゃなかった。犯人の写真が写っていた。被害者の女性も。オレはそれを見て「あー」と声を漏らした。


 フウカは「こういう人は最悪ですね」と言っていた。オレは「そうだな」と適当にいった。


 オレは立ち上がり、背伸びをする。


 オレは、あの日、止められて幸せだったのか、あのままで幸せだったのか、分からないものだな。と思いながら、歯を磨きに洗面所に向かうのだった。




たまに、こういったショートつくるかも

この章はそのためのもの

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