花は散り急ぐ
柴坂誠一郎は、家族から区別され、赤の他人のように育てられてきた。彼はそんな生き方に嫌気がさしていた。そんなある日のこと。彼はその積憤を払うように、また逃げるようにして、家族を皆殺しにしてしまった。
彼の心は人形のように無機質で、肌の温もりすら感じぬほどに冷静だった。
彼は家族の死を見届けると、空腹であることに気づく。家には食料はなかったため、買い出しに出かける。彼が帰るとそこに家族の死体はなかった。しかし、その代わりに口元を真っ赤にして骨をしゃぶる十歳ばかしの少女がいた。暗い血の海に浅く腰掛ける少女はなんと妖艶で幼かったことか。
まるで遙遠の世界にいる少女は誠一郎に向かって歩く。彼は浅く死を覚悟した。膝から崩れ落ち、ただただ黙る。しかし、少女はただ年相応に笑うだけだった。そして、無邪気に、彼の頭を撫でるだけである。
誠一郎はこの時、少女がジェスチャーで指摘するまで自分が泣いている事に気がつかなかった。
少女は言葉が通じなければ、この歳なら誰もが知っていそうな基礎知識も欠落していた。出身もどこの家の子かもわからない。ただ分かることがあるとすれば、この少女は人の肉を喜んで食べるという事だ。何故自分は食べないのか、この少女はどこから来たか。等々の疑問はあったが、ひとまず彼は少女にハナと名付け、預かることにする。それから誠一郎とハナの奇妙な共同生活が始まるのだった。
ハナの食糧は基本的には人である。誠一郎はハナの食欲を埋めるために食べられてもいい人間を探す。それが犯罪者である。自分の罪に対しての罰と言う偽善に満ちた善行かどうかは知り得ないが、誠一郎はそれがベストだと考えた。
そうして、何度目かの被食者との出会いと別れを繰り返した時だった。被食者によって四肢を切断され絶命した死体の田宮風香と出逢う。彼女は死んでいた。しかし、どうしたものか、ハナが生き返らせてしまった。理由も方法も分からぬが、ハナは自分がやったと言い張る。誠一郎はひとまずハナを信じる事にした。現に、死体が生き返っているのだから。
風香には帰る所がなかった。自分の居場所がどこにもなかった。
誠一郎はそんな彼女を引き取ることにした。それが彼女にとって幸か不幸かは知らぬ。だが、彼女は出ぬ涙を流すのだった。
そうして、三人の不可思議な生活が再スタートする。
彼の心は人形のように無機質で、肌の温もりすら感じぬほどに冷静だった。
彼は家族の死を見届けると、空腹であることに気づく。家には食料はなかったため、買い出しに出かける。彼が帰るとそこに家族の死体はなかった。しかし、その代わりに口元を真っ赤にして骨をしゃぶる十歳ばかしの少女がいた。暗い血の海に浅く腰掛ける少女はなんと妖艶で幼かったことか。
まるで遙遠の世界にいる少女は誠一郎に向かって歩く。彼は浅く死を覚悟した。膝から崩れ落ち、ただただ黙る。しかし、少女はただ年相応に笑うだけだった。そして、無邪気に、彼の頭を撫でるだけである。
誠一郎はこの時、少女がジェスチャーで指摘するまで自分が泣いている事に気がつかなかった。
少女は言葉が通じなければ、この歳なら誰もが知っていそうな基礎知識も欠落していた。出身もどこの家の子かもわからない。ただ分かることがあるとすれば、この少女は人の肉を喜んで食べるという事だ。何故自分は食べないのか、この少女はどこから来たか。等々の疑問はあったが、ひとまず彼は少女にハナと名付け、預かることにする。それから誠一郎とハナの奇妙な共同生活が始まるのだった。
ハナの食糧は基本的には人である。誠一郎はハナの食欲を埋めるために食べられてもいい人間を探す。それが犯罪者である。自分の罪に対しての罰と言う偽善に満ちた善行かどうかは知り得ないが、誠一郎はそれがベストだと考えた。
そうして、何度目かの被食者との出会いと別れを繰り返した時だった。被食者によって四肢を切断され絶命した死体の田宮風香と出逢う。彼女は死んでいた。しかし、どうしたものか、ハナが生き返らせてしまった。理由も方法も分からぬが、ハナは自分がやったと言い張る。誠一郎はひとまずハナを信じる事にした。現に、死体が生き返っているのだから。
風香には帰る所がなかった。自分の居場所がどこにもなかった。
誠一郎はそんな彼女を引き取ることにした。それが彼女にとって幸か不幸かは知らぬ。だが、彼女は出ぬ涙を流すのだった。
そうして、三人の不可思議な生活が再スタートする。
散る花にも咲く花にも同じ美しさが宿るもの
花
2015/07/11 01:30
鳥
2015/07/11 01:30
風
2015/07/11 01:30
月
2015/07/11 01:30
(改)
明日に吹く風
明
2014/12/24 07:54
(改)
鏡
2014/12/26 16:00
(改)
止
2015/01/05 16:00
(改)
水
2015/01/06 16:00
(改)
籠の中の小鳥、月の遠さを知らず
天 上
2015/01/13 16:00
(改)
天 下
2015/01/16 16:00
(改)
されど月影の色を知る
唯
2015/01/18 17:00
我
2015/01/19 16:00
独
2015/01/20 16:00
尊
2015/01/21 16:00
(改)
月の下の美しき人よ
通り雨が通り過ぎるのを待つだけ
2015/01/25 18:00
(改)
もう一つのみちの存在に彼らは気づけない
2015/02/06 00:52
小鳥よ小鳥よなぜ鳴かない 自分の命がわかっておそろしいのか
2015/04/12 20:48
(改)
すくわれて波に揺られる白い輪はうつし夜なれども確かにありけり
2015/06/06 00:03
(改)
君の花 僕の花
天
2015/02/03 07:37
(改)
庭
2015/02/05 04:20
(改)
花は枯れることを知った郎女は何を思うか
やがて迎える彼らのお話
2017/12/30 00:52
あの日の後のお話
2015/04/13 21:51
(改)
誠一郎のお話 起
2015/05/01 12:00
(改)
ルナのお話 罪
2015/05/31 13:00
(改)
立石のお話 江
2015/06/01 14:00
ハナのお話 前
2015/06/15 15:00
ハナのお話 中
2015/06/30 16:00
フウカのお話
2015/07/01 17:00
誠一郎のお話 記
2015/07/08 18:00
フウカのお話 続
2015/07/09 19:00
ハナのお話 後
2015/07/12 20:00
(改)
立石のお話 湖
2015/10/01 21:00
(改)
美雨のお話
2015/10/03 22:00
(改)
誠一郎のお話 承
2015/10/05 23:00
(改)
ツキハのお話~男の供述~
2015/10/07 00:00
ツキハのお話 春
2016/04/01 01:00
ツキハのお話 夏
2017/07/24 02:00
(改)
ツキハのお話 秋
2017/12/30 03:00
久子のお話
2017/12/30 04:00
(改)
ツキハのお話 冬
2017/12/30 05:00
(改)
誠一郎のお話 焦
2017/12/30 06:00
(改)
綾子のお話 発
2017/12/30 07:00
コトリのお話 余
2017/12/30 08:00
ルナの過去のお話
2018/12/04 09:00
(改)
月羽と美雨のお話
2021/08/19 10:00
(改)
誠一郎のお話 転
2023/09/22 11:00
立石のお話 然
2023/09/23 12:00
ルナのお話 咎
2023/09/24 13:00
(改)