第8話
おっぱい♪おっぱい♪おっぱいちゃーん♪
若干浮かれ気味な足取りでギルドのおっさんに教えてもらった道を進む。
初めて狩りをした後はなかなか興奮が冷めないらしく、利用する人も結構居るんですよ。とはギルドのおっさん談。
それを否定しなかっただけなんだが、そういった人達のケアという名目で提携している店を幾つか教えてくれたおっさんに内心感謝しつつ通りを進んで行くと、赤や黄色にピンクや金といった派手な色の建物が左右に建ち並び、行き交う人々にはひっきりなしに呼び込みのオッチャンやらお姉さんが絡んでいた。
「旦那旦那〜、ウチの店で遊んでって下さいよ〜。」
「ウチは若い子が多いよー!」
「お兄ちゃん、僕のバナナ買ってくれない?」
テレビでよく見る誘い文句からショタっ子の上目遣いな爆弾発言まで、甘い誘惑についフラフラしつつも初志貫徹で来たぜ!ロンドの店!
ーーこれで、遂に童貞ともおさらばか…。
店前でそんな感慨に浸りながらいざ店内へ!
あ、おばちゃん~、この店で一番のお勧めなお姉ちゃんって誰?
え?今は他に客に着いんの〜?んじゃ、一番の巨乳ちゃんは?え、空いてる?んじゃあ〜その娘で~♪
えっ?こっち?はいはい~!ついて行きますよ~。
テンションだだ上がりになりながら店員らしいオバちゃんに案内され、通路の1番奥にある部屋へと一歩足を踏み入れた途端、ソッコーむせた…。
まず最初に頭に浮かんだのが真夏の剣道着。室内に染み込んだ汗とか体臭とかアレの臭いをごまかす為に焚いてると思われる香までもが凄いクサイ。臭すぎて一気に萎える。
なので、とりあえず窓を開けベッドに掛けてあった薄っすい布をバタバタさせ換気してると、カチャリと扉が開いた。
「初めまして〜♪いらっしゃ〜い♪」
明るい声で入って来たのは少し幼さの残る顔立ちに、金がやや茶色に燻んだ長い髪を綺麗に肩の辺りで切り揃え湖畔の様に澄んだ青い瞳が印象的な色白の巨乳ちゃんで、部屋に入るなり不思議そうな顔をされてしまいました。
「お客さん…何してるの?」
「えっ、部屋が臭かったからちょっと換気を。」
「ふ〜ん?」
巨乳ちゃんが言うにはそんな事を気にする客など今迄1人も居なかったそうで、目元を蒲鉾型に歪ませながらケタケタと笑われた。
「ところでぇ〜、今日はどのコースにします〜?」
「ん〜、実はこういう場所を利用するは初めてなんだけど一晩お願いしたら幾らになるの?」
「今から一晩だと2シリングになるけど、お金大丈夫?」
心配してるというよりそんなに持ち合わせがあるのかと言わんばかりの怪訝な表情で聞かれ、改めて料金体制なんかを教えてもらうと、大体どの子を選んでも1時間で約20シグになるらしかった。
「ん〜、じゃあ、3シリング渡すから夕飯もお願いしよ~かな?あ、お釣り?うんいいよ♪いいよ♪可愛いからおこずかい♪」
何処ぞのスケベ親父みたいな事を言いながらポケットから出した金貨を三枚握らせ、笑顔で女の子を見送り室内を改めて見渡してみる。
ーー室内が薄暗いのは良いとしても、風呂無し、避妊道具無し、シーツは新品っぽいけどこれもちょっと黄ばんでるよな〜。
ーーうーん、もうちょっと異世界とはいえソープ的なものを想像してただけに、場末感がパない。
そこで脳内緊急会議を開催。
隊長!避妊道具が存在しないという事はこのミッションは生なのでしょうか?
馬鹿野郎っ!そんな事よりまず周りを見ろっ!
は、はいーっ!
こんな劣悪な環境。我等が相棒ジョニーの初陣を飾らせるには相応しくなかろうっ!
た、確かに……。
それに見てみろ奴をっ!ジョニーはすっかり気落ちして立ち上がる気力すら失くしているでは無いかっ!
ジョ、ジョニ〜…。
本能隊長の仰る通り、いざ此処まできてウンともスンとも反応して無い下半身に目をやり思わず溜息をつく。
こんな事では今夜の快適な性活なんて夢のまた夢。
この状況を打破するにはどうするべきかと悩んでいると、不意に扉がノックされ両手に料理の入ったバケットとワインを二本持った巨乳ちゃんが戻ってきた。
「お料理の方は特に何も聞いて無かったので、適当に選んで来ました〜♪」
はにかむ笑顔でそういう巨乳ちゃんを見た途端、さっき迄の悩みは何処へやら。本能隊長が鼻息も荒く最前線に出ようと暴れだした。
ん?お帰〜り♪果物の盛り合わせと焼肉ね♪
うん、いいよ♪いいよ♪肉も果物も好きだから♪
自分でも呆れるくらい甘い声で応えながらベッドに二人で腰掛け、目の前に移動させたテーブルに料理とワインを置いてもらう。
えへへ〜、今日は初めてだから緊張しちゃってね♪
え?いや、性活が初めてじゃなくて…え?
うん、うん…そぅ、うん……ぶっちゃけ性活初めてです。
すいませんっ、調子のっちゃいました。
童貞だと見透かされていたらしく優しく微笑む巨乳ちゃんにワインをついでもらい、雑誌でうろ覚えだった知識を総動員し、食事を楽しみながらまずは少しづつお互いの事なんか話し緊張を解していく作戦にでる。
でも流行りの話題なんて知らないので、とりあえず俺は身の上話として事故でこの国に来た事。初めて出来た仲間の事なんかを話し、彼女の方からは兄弟が多く、家計を助ける為に出稼ぎに来てる事なんかを教えてもらったんだけど。
故郷の事なんかを詳しく聞いている内に、だんだんと巨乳ちゃんの口数が減ってしまった。
ーーし、しまったー!なんたる失態っ!
ーー折角砕けた話題で盛り上がった所をノリで…って考えてたのにー。
巨乳ちゃんはホームシックにでも罹ったのか、無言になるにつれ増していく重苦しい雰囲気に内心テンパってしまい、咄嗟にそっと頭を撫で頬にキスしてしまった。
だがこれがキッカケとなったのか、急に振り向いた巨乳ちゃんから両手を顔に添えられ優しいキスをかえされた。
ーーうっしゃー!ここは、このまま一気に最後まで・・・・。
と、気持ちは昂るのだがやはり室内に篭る臭いや不潔感が気になりジョニーの反応もよろしくない。
ーーなんかいい方法は、っと。
はやる気持ちを抑えながら辺りをもう一度見回し、ワインの瓶を見た途端フッと閃く。
ごめんねー。ちょっとだけ目をつぶって10数えてくれるかなー?魔法使いたいんだけど…え?大丈夫、全然害は無いから。
俺は彼女が目をつぶって数を数え始めるのを確認し、ワインを片手にアルコールを使った除菌をイメージしつつ室内全体を「浄化」してみる。
するとーー
何と言う事でしょう。くすんで汚れていた室内は新築の輝きをとり戻し、空気もワインを使ったせいか、くどく甘ったるかった香の代わりにほんのりフルーティな空気へと変化したではありませんか。
やっぱ、適当魔法スゲー!
ーーその後は、目を開いた巨乳ちゃんから驚きながら感謝され、あんな事やこーんな事まで実に濃厚な一夜を過ごしたのは言うまでもない。
そんな甘々な初体験を満喫した翌日ーー
チュッ♪
頬に何かを感じて目を覚ますと、巨乳ちゃんに良く似たサラッサラの金髪美人さんのはにかんだ笑顔が視界に入ってきた。
ーーえっ?誰。
一瞬、誰かも判らず俺が起きても恥ずかしそうに横に腰掛けている金髪美人さんから朝食を勧められ、声で昨夜の巨乳ちゃんだと判り、内心驚きながらも新婚ムードでイチャつき美味しく頂きました。
因みに朝食代は金貨一枚のお釣りだと貰いすぎるからと、巨乳ちゃんが夕飯を取りに行った時に頼んでおいたらしい。
そんなこんなで朝から朝から甘々な時間を過ごし、玄関まで送り出してくれるらしく腕を組んで歩きだす。
と、待合室や部屋から出てきたり途中ですれ違ったお姉さん達が俺達の姿を二度見して驚いてた。
あれですか?やっぱ肌つやが違いますか?髪もサラサラになってるし、こりゃあ風呂より便利だな。
意外な副作用があった「浄化」の効果には朝から俺自身驚きもした(夜は明かりを消してたので見えんかった)が、次回からは絶対使おうと決意したのは内緒だ。
ーーで、入口まで見送ってくれた彼女の耳元に「次は君の事をもっと知りたいな」とか囁いて、首筋に軽くキスをしてから店を颯爽と後にする。
それから数秒後
歩く速度がどんどんと早くして娼館通りを過ぎた最初の角を曲がると、スグに路地に入ってガックリと両膝をついて項垂れる。
ーーキタヨ、きた~っ!久々の賢者モード!何ですかさっきのキスは?誰デスカ、あのチャラ男は?
ーー俺のキャラじゃ無いよね?さっきの俺は誰に操られてたんですかー?
ーーあ~~何アレ「次は君の事をもっと知りたい」とか、何処のゲームの台詞?
ーー何で首筋にキスなんかしてんの俺?
ーー馬鹿なの、死ぬの?
ーーあぁ~、異世界に来てまでなんで黒歴史を増してんだよーっ。
路地裏で酔っ払いの様に無気力に項垂れながら顔と耳だけは真っ赤に染めつつ、そのまま転がりたくなる衝動を何とか抑え、ひとしきり後悔が済むととりあえずは宿に帰ろうと促す理性に従い、廃人のようにふらふらと立ち上がりそのまま足を引きずりように歩き出す。
そんな速度で歩いてたもんだから何とか宿に着いた頃には日もすっかり登り切り、当然キース達はもう仕事に出たらしく食堂にも人影が無かった。
ーー・・・・まるで蟻とキリギリスみたいだ、俺。
ーーキース達が蟻でキリギリスが俺か……いかんっ、このままでは堕落人生まっしぐらになってしまう。
宿屋に戻り少しは落ち着いてたので気持ちを切り替えようと軽く頬を叩くと、階段から降りてきたの宿のマスターと偶々目が合った。
「……何やってんだ?」
「いや、ちょっと反省を……って、今日は何かあるの?さっき大通りの方が騒がしかったけど。」
「ん?お前さん知らねーのかい。今日から中央広場で豊穣祭が始まるんだよ。」
ーー豊穣祭かぁー。
ーーそういや、こっちの祭りってどんなんだろう?
マスターの一言で本気を出すのは明日からに変更し、こうなりゃ今日は一日堕落しまくってやれ!と変なテンションで祭り見物に行ってみる事にした。
ーーあ、そだ!一応ギルドに行って換金しとくか。意外な掘り出し物があるかも知れないし…。
まだ木箱の中に置いとたグズリー11体分とグリーンファントム41体分。
彩龍の時にお世話になった1号に話しをつけ、まとめて引き取ってもらおうとしたら器用に椅子ごとぶっ倒れた。
しかも前回同様解体代も任せたのに、1号は泣き笑いみたいを引き攣らせた微妙な顔で大まかな状態の確認をした後、一時金として5000シリングを用意するから今日はそれで勘弁してくれと頭を下げられた。
後、ブツブツとウチの支部を破産させるつもりなのか…とか何とか呟いてたけど、シラネー。
其れと精査の後になるだろうけど、前置きし強制でランクの昇級試験を受ける事になった……マンドクセー。
で、一時金とはいえ大金なので今回は小切手を発行され木箱に転送。
気分はハッピー♪って事で、やってきました中央広場!
みんな何処から湧いた?って思う程の混雑さに唖然と立ちすくんでると、いきなり人混みの中から名前を呼ばれた。
「ユージ殿!」
聞き覚えのある声のした方を見回してると、噴水の向こう側に居るニアがブンブンと手を振ってるのに気付きそっちに行ってみる。
「どしたん?ニアも見物?」
「いや、今日の仕事は移動銀行の護衛でな。それより…昨夜はどうだった?満足出来たのか?」
声を潜めて聞いてきたニアに、満面の笑み&親指を立てた馬鹿は俺Death。
「……ふむ、それは良かった。」
調子にのって凹んでた俺を無視するように呟くニア。
一体何が良かったのか知りたいような、知りたくないような……そんななんとも言えない疑問を意図的にスルーして祭りについて聞いてみる。
「移動銀行って、そんな高額が動くイベントなのこれ?」
「い、いべんと?」
「あ、ごめん、催しって意味かな?」
「あぁ、今回は年に一度しか来ない移動魔道具商や奴隷商も来てるからな。」
奴隷の部分で僅かにニアの眉間にシワがよる。
「奴隷ねぇ~。」




