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異界転生(修正版)  作者: 七変化
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第13話

翌朝ーー


あの後飲み潰れてしまったらしく、朝早くから掃除に来たカカリィさんに邪魔だからと叩き起こされ、まだ日も明けきっていない薄闇の中を寝ぼけ眼をこすりつつ屋敷へと帰る事にした。


「おや?こんな朝早くから仕事かい?」


「ふあぁ〜。あぁ、おはようさん。」


宿を出たところで変な寝方で凝り固まった身体を大きく伸ばし、次いでとばかりに大欠伸をしてる最中に出くわしたキースに挨拶を返しながらキョロキョロと辺りを見回す。


「ん、どうかしたのかい?」


「いや、今日はメイアの姿が見えないな〜って思ってさ。」


「ああ、彼女なら今日は寺院の手伝いに呼ばれててね、今さっき送ってきたばかりだよ。」


「あぁ、なるほど。それにしても皆、朝早くから色々と大変だな。」


「はははっ、ユージ程では無いけどね。」


「???」


「偶然、寺院で会ったザガンから少し昨日の事を聞いたよ。奴隷を買ったらしいけど、大丈夫なのか?」


「ん…まぁ、なる様にしかならないだろうな。」


「余り詮索するつもりは無いから聞かないが、何か困った事があればいつでも相談してくれ。」


「あぁ、そん時はよろしく頼むよ!」


「僕達が仕事でいない時は宿のマスターに言付けてくれればいいし、そっちがひと段落出来たらまた一緒に酒でも飲もうっ!」


「りょーかい!んじゃ、近い内に飲めるように頑張ってくるよっ。」


軽く手を振りキースと別れると早朝の冷たい空気を思いっきり吸い込み、まだ露店の準備を始めたばかりの通りをのんびりと歩きながら帰路へつく。


ーーとりあえずはコミニュケーションを如何にかしないとなぁ。昨日みたいに消極的な態度だと会話すら成立しないしなぁ〜。

ーーそれと、彼女達を買い取ったそれらしい理由(いいわけ)も考えとかないといけないし、お金もかかりそうだから、昼にはギルドに行って彩龍をもう一匹くらい換金しとこうかな?今度はしっかりと口止めもして。


特に急ぐ理由も無かったし今後の対策みたいなものを思い描きながらのんびり歩いていたつもりが、もう屋敷の前まで来てしまい、溜息を一つ、結界を外してから音を立てない様にと静かに中へ入る。


ーー…朝帰りした旦那さんて、こんな心境なのかな?


音を立てない様に扉を閉める途中、ちょっと百済ない考えが頭をかすめ、苦笑しながらまずは昨夜の後片付けにと浴槽の水を抜きに行く。


ーーうーん、昨日はアレだったから仕方なかったけど、こりゃもうちょっと改善しないと不便だな…。


排水口を塞ぐ木栓を外しながら毎回俺が外井戸から水を転送して魔法で沸かすわけにもいかないだろうと、屋敷の改築を考え裏口から外に出て井戸に繋がっている地下水脈を探り、流れを辿る。


ーーお?これなら…いけるかな?


探知で調べた地下水脈はうまい具合に浴槽の下を横切っていたので水量や水質も同時に調べ、それら全てに問題が無い事が確認出来てから水の抜けた浴槽へ入り、水脈の上になる壁に片手を当てながらパイプをイメージする。


パイプ自体には水流とサーモヒート的な能力を付け、お湯として流れ出てくるのを確認すると、今度は湧き出るお湯の温度を微調整。


本当なら温泉があれば一番なんだけど、生憎と湯脈は見つからなかったのでしょうがない。


その代わり見た目にはこだわって、老舗温泉宿風に内装も改良してみた。


その過程で昨夜のように7人が全員入っても余分が出来るようにと、洗面台替わりの段と鏡も造る為に壁の改築一面を外側に少し移動。


勿論耐震性も高める為に地中1mくらいまでは砂や小石を岩に変化させといた。


ーーう〜ん、ここまで弄るとシャワーなんかも欲しい気がするけど、あんまりやり過ぎてもなぁ……。よしっ、少し様子を見て必要そうなら後で創るか。


既に充分やり過ぎているがそんな事には毛ほども気付かず、浴室への入口から見た創造魔法を駆使した出来映えに満足しながら、一人で頷き次の目的場所へと向かう。


ーーさて、次は此処だよな。


この屋敷は貴族が建てただけあって下水を利用したトイレが三ヶ所もあるのだが、宿に有った石椅子造りを個室にしただけの所謂ボットン形式だった為に室内に籠る独特の臭気がかなりキツかった。


なので、手始めに形を洋式の便座に改良しただけなのだが、壁の一部を素材にしたせいでラピスラズリ色になってしまった。んで、便座は穴を塞いでた蓋を利用して木製に。勿論「浄化」を使い常に殺菌消毒効果を付与しておく。


屎尿に関しては下水らしき物をそのまま使用するつもりだったが、換気と排水機能をどうしようかと便器と睨めっこしながら何とはなく違和感を覚え、それが何なのか悩みながら一旦トイレから出ると、いつの間にいたのか通路で立ち尽くす少女と目が合った。


「うわっ!………お、おはよう、みんな起きてるかな?」


「………はい。」


寝起きなのか、ぼーっと突っ立てて微動だにしない。


「じゃあ、ちょっと話があるからリビングに全員集めてもらえる?」


「…はい。」


ーーあれ?回れ右してそのまま行っちゃったよ…トイレじゃ無かったのかな?


頭をかきながらリビングに向かうと少女が集めておいてくれたのか、全員同じ柄の寝巻姿で横一列に整列していた。


「おはよう!昨日は良く眠れたかな?今日から君達には働いてもらう事になるけど、何か質問は?」


「・・・・・・。」


ーーやっぱ返事は無しか…ってか、話さない様に教育でもされてたのか?


「では、僕から君達に質問がある。それから仕事の分担を決めるので、正直に答えて手をあげて欲しい。ーーまず、この中で料理の出来る子?」


ーー…………三人か。


「次に裁縫の出来る子?」


ーー……これは一人か。


「次に、一番の年長者は?」


ーー………ん、なんだ?何かヒソヒソしだしたけど、ああ、足の悪い子が最年長になるのか。


「掃除や洗濯といった家事が出来る子?」


ーーお?これは全員か。


「うん。まず第一に誤解の無い様に言っておくが、僕は君達を消耗品だとは思ってはいない。だから、死に至る様な事はさせるつもりもので安心してくれ。

それといつまで無言だと意思の疎通が出来ないので、必ず返事はする事。」


「「「はい。」」」


「それと、知らない事や質問をしてくるのは構わないが、知らないまま誤魔化す事は許さないので覚えておく事。」


「「「はい。」」」


「後……、俺はこの国の人間では無いので、扱いに違和感を感じたら必ず言ってほしい。」


「「「はい。」」」


「最後に、今日は家財道具が来るから、それまでは各自自由行動って事で解散っ!」


ーーは~、今日も朝から精神的なモノが色々と。つ、疲れた〜。


昨夜よりは幾分反応がある事に安堵の息を吐き、皆が部屋を出て行くのを見送っていると、足の悪い子と最年少っぽい子が二人して残った。


「ん?どうかしたのかい?」


「…………や………しょ……。」


「???」


「……あの、厠は何処ですれば?」


ああ、トイレね。


もじもじと内股を擦り合わせ俯く年少の子に代わり、蚊の泣く様な声で足の悪い子が聞いてきたので、早速改良したばかりのトイレに年少の子を手を引き、足の悪い子ちゃんはおぶっていく。


「厠は此処だから、今度からは此処を使うように。それと、使い心地はどう?」


「お尻が痛く…無いで…す。」


そうか、そうか!痛く無いか。ってどういう意味だろう?


流石に幼女の放尿シーンをガン見する趣味は無いので背を向けたまま受け応えをしていたが、スグにトレペが存在して無い事を思い出し愕然となる。


ーーそっか!トイレットペーパーが無いんだ!ってか、そもそもこの世界、トレペは日用品として存在してるのか?


市場でも見かけ無かったし、有ったとしても高級品扱いなのかもと年少ちゃんが出たトイレに入ると木製便座を洗浄便座に改良し、壁に手を当てお風呂用に造ったパイプを分岐、お湯をこっちまで延長。


水温は直接当る事を考えぬるめに調整しなおし、操作する為の機能ボタンも創り、日本語だと判らないだろうから絵文字を採用(TOTO仕様)!


「よしっ!これでもう一回入ってみてくれるかな?」


さっき入ったばかりのトイレが僅か数分で様変わりした事に驚いてるらしく、ポカンと口を開けたまま突っ立っている年少ちゃんと入れ替わり、もう一度便座に座らせる。


「今から説明する事を覚えていってね。」


そう言いながら洗浄ボタンを押すと、初めてお尻にお湯が当たって慌てたのだろう、中腰で立ち上がりかけるのを「大丈夫だから」と宥め今度は乾燥ボタンを押し…と同じ事を二度繰り返し、年少ちゃんに操作方法を覚えもらう。


「じゃあ他の子達にも今のを教えて、トイレの使い方を慣れさせておいてね〜。」


年少ちゃんにそう言い残し、慌ててもう二ヶ所のトイレにも同じ改良を施す。それが済んだらきっちり手を洗い足の悪い子ちゃんを探し、お姫様抱っこで昨日の布団部屋に連れて行く。


べ、別にやましい事するわけじゃ無いんだからねっ。と、心の中で一人ツッコミ。


真っ直ぐ仰向けに寝かせて足を触診しながら探知の応用で骨の状態を透視()てみる。

次に俯せ寝かせ同じ様に触診しつつ「探知」した結果。一度折れた骨がそのまま固まり、筋やら血管を圧迫している事が判明(わかっ)した。


顔には出していないが、這うだけでもかなりの苦痛があったろうに…。


されるがままに無表情な彼女の頭を優しく撫でながら「治癒法術」を試してみたが何故か効果が薄い気がする。


ーーあれ?キースの時は一発で成功したのに。やっぱ魔法はムラがあるなぁ。


適当魔法故の欠点に今更ながら落込み、それでもと再度「治癒法術」を重ね掛けすると、今度は僅かだが血管の圧迫が和らいだ。


ーー効果が弱いなら重ね掛けが有効なのか。


意外な結果に少し驚きながらも急激に骨の形状を変化させれば、どれだけ痛みや副作用が有るかは判らないからと、今してる治癒法術を数十回ほどに分け時間をかけて行っていく事を足の悪い子ちゃんに告げる。



コンコンッ


「ご主人様。お客様です。」


どれだけ時間が過ぎたのか。

ようやく骨が正常な形へと修復し、延びきってしまっていた筋に取り掛かろうとした所で部屋の外から声をかけられ治療を中断してホールに行ってみる。


「おはようございますユージ様。早速昨日はコチラに移られたされたそうで。」


「まぁ、色々ありまして…。」


「そうですか。それでは早速ですが御注文を受けた家財道具一式と食料、それに衣類も少々お持ち致しましたので、商品の確認をお願いしてもよろしいでしょうか?」


ホールに居た髭男爵は俺を見るなり丁重なお辞儀をし、屋敷の前に停めてあった六頭仕立ての大型荷車へと率先していった。


ーーちょ、何だよこの大荷物。こんなに一体何処に入れるつもりなんだ?


山盛り積み込まれた荷物を絶句しながら見上げていると、荷車の後ろに止めてあった馬車から作務衣に似た作業着姿の男衆が数人降りて来たと思ったら、テキパキとそれらを瞬く間に家のどこかへと運びこんでいく。


「ところで、昨夜はどうなされたのですか?」


「ん?あ、あぁ。ザガンが蝋燭を持って来てくれたんで何とかなったんだけど……そういや、この家の照明ってどうなってんの?」


「その件に関しては説明不足で申し訳ありませんでした。よもや即日入居されるとは思っていませんでしたので。」


深々と頭を下げる髭男爵から改めて説明を受け、この屋敷には魔晶炉って自家発電装置があり、それを電力に使っている事が判った。


ーー魔晶炉?


「それと来たら聞こうと思ってたんだけど、奴隷の服を売ってる店って知ってる?」


「奴隷に服……でございますか?どういったモノを?」


「出来ればメイド服でっ!」


………即答&趣味丸出しですいません。


「メイド服で有ればうちでもご用意できますが、寸法などは?」


「あ〜、ちょっと判らないから採寸とかも出来るなら全部お任せ&即金で払うから、…七着だと幾らくらいになるかな?」


「採寸も込みでしたら、七着で4.5シリングといったところで如何でしょう。」


「んじゃ、10シリングで14着頼むよ。それと(くし)なんかも扱ってる?」


「勿論御座います。それでは新たな御注文に関して改めてお伺いさせていただくとすれば、何時(いつ)がよろしゅうございますか?」


次々と屋敷の中へと運び込まれる荷物を不思議そうに見ている寝巻軍団を指差し、あれしか服が無いから早急に頼むと伝えると、苦笑しながら折り返しスグに来てくれる事になった。


ーーやっぱ、屋敷と言えばメイドだよな!これで遂に俺もリアルメイド隊のご主人様かぁ。


そうこうしてるうちに男衆が荷物を運び終わったらしく、髭男爵はスグに戻ってまいりますと、大型荷車より先に出発した。


流石商人!フットワーク軽いね~等と感心していたら、不意に昨日の口が開いたままだったザガンの姿を思い出し、一人吹き出してしまった。

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