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逃げた先には・・・


「はぁ、はぁ、はぁ・・・」


私は頑張って手を振り払いディズから逃げた。

全力疾走だ。


息苦しい。

逃げられたのが奇跡だ。


「アルー?どこにいるの?」


嬉しそうなトーンの声が聞こえ私はびくりとする。

物陰に隠れたが見つかるのは時間の問題だろう。


私はダッとかけだし、その場から逃げる。


視線の先には扉。

私はその扉の中に入り勢い良く扉を閉める。


「はぁ、もう、ホントやだ・・・。」


扉に手をつきため息をつく。


「次期魔王がこんなところに何の御用ですか?」


私はクイッと後ろを向く。

そこにいたのは椅子に座って本を読んでいる男の人だった。


「えっと、あの。」


こいつは、攻略対象だった、気がする。


「まあ、ディズ様から逃げてきたとかそんなところでしょう。」


くすりと笑って彼は本を閉じ私を見る。

その顔はとても美形だった。


髪は薄い紫色で一つに結んでいる。

瞳は濃い紫だ。


めがねをかけていてとても知的に見える。


「かくまってあげますから、一緒にお茶でもどうですか?」

「え、えっと。」


うーんと迷っていると彼が私がいる扉の方へ歩いてくる。

そして、扉をかちゃりと開ける。


「別に、今すぐ出て頂いてもかまいませんが?」


私は、ばたんっと扉をしめる。


「お茶、します。」


なんというSだ。

ドSだ。困っている人にこんなことするなんて。


「では、今お茶を淹れますね。」


私は椅子までエスコートされ、そこに座る。

なんか、とんでもないところに入ってしまったような気がする。


そんなことを悶々と考えているうちに

彼がお茶をだした。


「あぁ、自己紹介がまだでしたね。

 私はヴィンセント・ギリアです。ヴィンと呼んでください。」

「ヴィンさん・・・。私はアルフィn「知ってます。」


私の言葉を彼はさえぎりニコリと笑った。


「アルフィニ・セルシュートさん・・・でしょ?

 あと、別にさん付けなくていいですよ?私達、同い年ですから。」


おな、同い年・・・。

年上にしか見えない。

顔立ちも言葉遣いも何もかもが大人っぽい。


「そ、そうですか。私のことは、アルフと呼んでください。」

「では、そうさせていただきます。」


沈黙が流れる。

こくこくというお茶を飲む音だけが聞こえてくる。


私はそれに耐えられなくて言葉を発す。


「あ、あのっ!」

「・・・何ですか?」


妖艶という言葉が相応しい笑みをヴィンが浮かべる。


「ヴィン・・・は、何の仕事をしているんですか?」

「研究者、ですよ。」


研究者。

何の研究をしているのだろう。


でも確かに彼には研究者という仕事があっているような気がする。

めがねに白衣。


それがゲームをしている時の彼の印象だった。


それを今ふっと思い出す。


「まぁ、そんなに凄いことをしているわけではないんですけどね。

 回復薬などを作ることが多いです。」


あまり、楽しい仕事ではないですよ。


そう彼は言った。

自分のしたい研究が出来ないということだろうか。


「でも、最近おもしろい研究を見出してね。

 ホント、研究者としての生きがいを見つけたよ。」


ニコッと笑いかけてくる。

それは、何の笑みなんだろう。


あれか、社交的な何かか。


「アルー?ここにいるんでしょ?出てきなよー。」


ディズの声がしてドアノブがガシャガシャとなる。


「流石ディズ様、辿り着くのがはやいなぁ。

 今あけるから、そんなガシャガシャしないでくださーい。

 壊れちゃいます。」


小声で呟いてから大声で言う。

そして、ヴィンは奥の扉を開ける。


「さぁ、ここから出て下さい。」


ヴィンは私に言う。


「早く、開けなよ。殺すよ?おい、あと10秒で開けろよ。

 アルいるんでしょ?10,9,8・・・」

「ディズ様、もうちょっと待ってください。

 絶対に扉を壊さないでくださいよ?直すの大変なんですから。」


私はササッと扉を出る。


「ヴィン、ありがとう。」

「どういたしまして。よろしければ、またお茶しにきてくださいね。」

「えぇ、必ず行くわ。」


私はタタタッと部屋を出て裏庭に出る。


「5,4,3・・・」

「今、開けますから。待ってください。」


その声が小さくなり何も聞こえなくなる。

全速力で走って私は城の障壁に着く。


そこには、いつも私が城を抜け出す時に使う梯子がある。

城の人からしたら、謎の梯子だろう。


追いかけられることなんてしょっちゅうあるからな。

ここまで辿りつくのが大変なんだケドも。


私はマッハで登りそして郊外の森へ降りる。


そしてぶんぶんと腕を振る。

外れない、全然外れない。


「もう、なんでよ。帰れないジャン。」


うぅっと泣きそうになるの。


「泣くな、お前は次期魔王だろう。次期魔王が泣いてどうする。」


そう自分に言い聞かせ頑張ってこらえる。


「あ、あの・・・どうしたんですか?何で泣いてるんですか?」


誰かが私に話かけてきた。

ちくしょう、見られた、ちくしょう。




泣いてなんか、ないやい!!!




-----------------------------------



「何、アルいないの?」


ディズ様が私にそう問う。


「はい、いませんよ。」

「だったら最初からそういえばいいのに。」


言ったってきかないだろ!あなたは!


「じゃあ、もういいよ。ばいばい。」


完璧な愛想笑いを浮かべてディズ様は出て行く。

ホントにいつ見ても完璧だ。

笑い方が。


ディズ様は部屋から出て行く。


奥の扉は調べないんですね。


ディズ様が出て行ってから約10分後にコーネリア様がやってくる。


「こんにちは、ヴィン。」


ニコッと麗しい笑みを浮かべて私を見る。


「こんにちは、コーネリア様。」

「で、どうだったの?彼女のことはわかった?」


私は本を開いて読み始める。

全く、コーネリア様はそれにしか興味が無いのだろうか。


まぁ、そんなコーネリア様が

私はとても可愛く麗しいと思うのだが。


「そうですね。ディズ様のことが好きなようには到底思えませんが。」

「そんなこと私だって分かってるわよ。」


コーネリア様はソファにどっかりと座る。

ディズ様の前とは全然違う人間のように思える。


本当の彼女はこっちだ。

私の前だけに見せるその姿。


私を信頼してくださっているのだろうか?

とても愛らしい。愛おしい。


本当は、私のモノにしたい。

でも彼女は私を見てくれない。


ディズ様にしか興味がない。


「初対面なのに私のことを知っているような感じはしました。

 なぜでしょうか・・・。」


コーネリア様がクスッと笑う。

あぁ、その顔も美しい。


「ヴィン、ありがとう。

 私の知りたいことは、よぉく分かったわ。」


コーネリア様は、そういうとスッとソファから立った。

そして扉の方へと歩いていく。


「これからも頼りにしているわ。

 あなたは私の忠実な僕だものね。大好きよ。」


バタンッと扉がしまる。


『大好き』


その言葉が何度も私の頭をめぐる。


きっと私はこれからも

コーネリア様のその言葉のために多くの罪を犯すのだろう。




私は一生、コーネリア様の僕になるのだ。




結構長めになってしまいました・・・。


あと少しで一章が終わると思われます。

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