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王道って何ですか?  作者: みるくコーヒー
裏の物語

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そして、交錯する

「んー、『トウニコズムの死霊書』と『兵器要録』を先に取ってくればいいんだね?シュロムさん。」

「ええ、そうです。」


私が差し出した紙を見ながら、ライアさんは尋ねてくる。それに対して、私は頷きながら返答をした。


『トウニコズムの死霊書』と『兵器要録』

この二つが五大禁書のうち、まだ彼女に渡ってはいないものだった。


『トウニコズムの死霊書』は、悪霊を操ることが出来る。既に彼女が持っている『アングムの生命錬金』と合わせると、悪霊や元となる身体を潰さない限り無限にソレは再生する。


ちなみに、『クレアの送魂術』は魂の宿った身体にしか使うことが出来ない。つまり、死んでしまった身体や作り上げた身体に対しては無効なのである。


『兵器要録』は、歴史上で最も優れた武器商人『ローレッツ』の記した武器のレシピである。作り上げた武器は、能力値も高く危険であると判断された為に禁書扱いとされている。


全てが全てそうである、という訳ではないが。


「ただ、相手は大規模な闇商人です・・・大丈夫でしょうか?」

「事前に騎士団にタレコミを入れるつもりよ。そこそこ暴れまわったところで、騎士団の突入。あたしたちは禁書を持っておさらば!どう、完璧でしょう?」


そう言ってニヤリと笑うセレシュさんの顔は、まるで子供のように無邪気だった。


「頼りにしていますよ、2人とも。」


ラジャ!と2人は敬礼をして、すぐさま私の前から消えていく。

彼女たちに『失敗』の2文字は無いのだろう、自信がひしひしと伝わってくる。


いや、それよりも任務への楽しみだろうか。暗殺業をしているからか、まるで遊びに行くように生き生きとした表情を見せる。


怖い女たちだ、と私は内心で毒づいた。


「向こうが姉さんに接触してからじゃなかったのか?」


後ろから声をかけられ、クルリと振り向くとそこにはルーザ様が居た。


「状況が変わったのです。彼女が五大禁書の残りを手に入れようと動きました。それが渡れば、こちらは相当不利になる。その前に、潰します。」

「・・・なるほど。」


ルーザ様はニヤリと口角を釣り上げる。

わざわざルーザ様に来て頂いたのは、私も転移魔法は使えるが何人も一遍に移動させることが出来ないからだ。

しかし、ルーザ様はいとも簡単にそれをすることが出来る。


「姉さんは?」

「城にいらっしゃいます。こちらの動きは、一切気づかれてないでしょう。」


彼女は、昔から何にも気づきはしない。

だがそれでいい、彼女は綺麗な世界だけを見て生きていく。今日も明日も、ずっと。


「ヴィン、本当にこっちが近道なの?随分静かだわ。」

「離れた場所でないと気づかれてしまうでしょう?」

「まぁ、確かにそうだわ。」


ヴィンセントとコーネリアの声が聞こえる。しかし足の音から考えて、もう1人いるようだ。もちろん、久坂 東吾であろう。


ヴィンは、彼女に城への近道だと言ってここへおびき出してもらっている。

門を通れば証拠も残るし時間も手間もかかる。だからこそ、彼女にとっては城への裏道が必要なのだろう。


「わざわざ、ご足労感謝する。」


彼女たちが、路地の少し開けた場所に入り私たちを見た時に、ルーザ様が楽しそうに声をかけ転移魔法を使用する。


コーネリアは、やられた!という表情を浮かべるとすぐに逃げようとするが既に遅い。


我々の視界に一面の草原が広がった。


「・・・ヴィンセント!!!あんた、裏切ったわね!!!」


綺麗な顔をぐしゃりと般若のように歪めて、ヴィンセントへと怒鳴る。

それに対して彼は、嘲るような笑みを浮かべた。


「裏切る・・・?人聞きの悪いことを言わないでください、先に裏切ったのは貴方だ。私はそもそも仲間で居た気はありませんよ。」


彼の言葉に、更に顔を真っ赤にさせるコーネリア。しかし、ヴィンセントはその様子を見てより一層愉快だと言うような表情を浮かべる。


「いいわ、後悔したって遅いんだから!!!」


ぱしん!と手を叩くと、彼女の周りに5人の人物が現れる。


「ルシファー、サタン、レヴィアタン、ベルフェゴール、マモン!さあ、仕事の時間よ!」


そう声をあげて、彼女はこちらをジロリと睨んだ。


久しぶりの戦いに、私は口の端が自然ときゅっと釣り上がった。




「ふーん、アレが禁書かぁ。随分と無防備だなぁ。」


天井の裏から覗いて、ライアはつまらなそうち呟いた。禁書というくらいだから、もっと厳重で苦労するかと思っていたのだ。


それが簡単だとわかってしまえば一気につまらなくなる。


ここに来るまでに、幾人か暗殺者が居た。

だから安心だと踏んだのだろうか、部屋の中には人が3人いるだけだった。


「さて、そろそろ兵がここへ向かっているんじゃないかしら。」

「出撃、しちゃう?」


セレシュの言葉に対して、ライアはワクワクしたように声を弾ませる。


「ええ、出撃よ!」


ガンと天井の通気口を蹴破り、部屋へと入る。


「な、何者だ!?」

「ちょーっと、黙っててよねっ!」


ライアが、ズガガンと瞬時に監視の人たちを銃で撃つ。ただの睡眠弾のため、致命傷は追っていない、ほんの数時間眠りにつくだけだ。


「ふぅ、窮屈だったわ。」


監視の人たちがみな眠りについたところで、セレシュとライアは被っていた仮面はバッとはずす。


この世界の前世と違って監視カメラは無い。だから人前でだけ仮面を被ればそれでOKなわけだ。


「これが禁書かぁ、ただの本と変わらないように見えるけど・・・?」

「だからこそ、こうして裏で取引されやすいのよ。見た目だけでは禁書だって分かられづらいから。」


あとはこれを持ち出すだけだ。

相手方に渡らなければそれで良い。


だがしかし、そう簡単にはいかない。


セレシュが手を伸ばし、禁書に触れるかというところでソレは現れた。


セレシュに向かって素早く蹴りが振り下ろされる。咄嗟に一冊だけ手にとってバッとその場を離れた。その蹴りは空を切る。


「そう簡単に計画が進むわけ無いわよね。」

「いやいや、そうこなくっちゃ!」


セレシュの言葉に、ライアは『いかにも面白くなってきた』と言わんばかりに口の端を釣り上げた。


「はああ、素敵な男が良かったのにぃ。」


濃いピンク色の髪に黒のドレスを纏う、色気の漂う女が退屈そうに言う。その手には、セレシュの取れなかった方の本がおさまっている。


「久しぶりに目覚めたっていうのに、満足に喰えないなんて最悪よう。」


こいつ・・・とセレシュは一つの記憶が頭によぎった。


そのとき、突如後方から鋭い殺気を感じる。

横側へザッと避けると先程まで2人のいた場所の少し奥にあった家具に大きな穴が空いている。


「ボクが食べるんだから・・・アスは引っ込んでて。」


前髪が目元まであり、襟足がぴょこんと跳ねている金髪の少年がそこにいた。彼も黒い衣服を見に纏っている、それはまるでどこかの貴族のお坊ちゃんのような格好だ。


「ベルちゃんだけ良い思いするなんて、ズルイわよう?」


アスと呼ばれる女性は、コーネリアが寄越した「七つの大罪」の1人である色欲を司るアスモデウスである。

ベルと呼ばれる少年は暴食を司るベルゼブブだ。


アスモデウスは、自身の持つ本を見る。

その表紙には『トウニコズムの死霊書』と書いてあった。


「はい、ベルちゃん、これあげる。あたしは要らないわぁ。」


アスモデウスがポイと本を投げるので、ベルゼブブは慌ててそれを取る。


「別にボクだって要らないんだけどなぁ。」


つん、と口を尖らせてそう言いながらベルゼブブは本を自身の懐にしまう。


厄介な方が渡ってしまった、とセレシュは厳しい表情を浮かべた。


セレシュは、自身の手に取った本をライアに渡した。


「時間は稼ぐわ、把握よろしく。」

「おっけー、任せてよ!」


ライアは本を開いて中を読み始める。


「1人でボクら2人の相手をしようって・・・?ナメられたもんだね。」


ベルゼブブが、一気に突っ込んでくる。

セレシュへあと3m程というところで、黒いものがその間に立ちはだかる。


「さぁ、これで2対2よ。」


それは、セレシュの生み出した自身の影だ。劣化でもなんでもないコピーは、彼女と同等の力を持つ。ただ、一度使うとしばらくは出せないという弊害もあるのだが。


「そんな小細工、ボクに通用するものか。」


ベルゼブブは、影へと突っ込んで行くが軽々と避けられて追いかけっこが続く。


「あらあらぁ、よそ見しちゃぁダメよう!」


アスモデウスがセレシュへと蹴りを入れるが、セレシュはそれを避けて蹴りを返す。


「・・・貴方の魂、見覚えがあるわ。」


アスモデウスは、目を細めて視線を鋭くする。それから、急速に近づいてセレシュの首をグワッと掴んだ。そのまま、床に叩きつけられ、アスモデウスに馬乗りになられる。


「そぉだ、思い出した。あたしを封じた忌々しいババアの魂。」


前世のセレシュは神社の娘で、その神社は神社としての機能も持ち合わせながら、妖怪やらなんやらの退治を専門としていた。


そうして、彼女が50代か60代の頃、対峙したのが7つの大罪の1人である悪魔のアスモデウスだった。


悪魔は消滅しないが、長く封じ込めることは出来る。


特製の聖水、若しくは特別な塩を飲ませ、身体から悪魔を解き放ち、それを捕まえて術式で封印するだけ。


聞こえは簡単だが、まず聖水を飲ませるまでが大変だったり・・・。


しかし、こいつは目覚めてすぐの空腹状態で今なら通常よりも簡単にことが運ぶはずだ。


セレシュは式神を取り出し、それに念を込める。


「小賢しいわぁ!あんたの魂、絶対に喰ってやるんだからぁ、長年の恨みを晴らす時よぉう!」


カッと目を最大限に開く。その目は血走っているように見える。まあそうだろう、セレシュが封印したのだから、セレシュを憎むのは最もな話だ。


如何に、アスモデウスが悪の所業を行ったとしても。(彼女が封印されるのは必然であるので、一種の逆恨みとも取れるのだろうか)


アスモデウスが迫ってくるが、セレシュは一歩も動こうとはしない。


もらった!とアスモデウスが手を振り上げたところでセレシュは指を振る。


1つの式神が彼女の腕に引っ付いた。物凄い勢いでアスモデウスは壁へと叩きつけられる。式神が腕ごとベタリと壁に張り付く。おかげで彼女はそこから動けなかった。


次々と彼女の身体を式神が覆い、全く壁から動けなくなるのにそう時間はかからなかった。


「腹が減っては戦は出来ぬ・・・ってまさに本当ね。貴方も相当強いのに、お腹が減っているだけでこんなに弱くなるのね。」

「はは、は、苦しんで死ぬように、じっくり味わって、喰ってやるんだからぁ。それからあたしの僕にでもしてやろうか、ねぇ?」


セレシュが懐から聖水を出すと、彼女の顔色は一層悪くなる。


「威勢がいいのも今だけよ、また何十年、何百年と退屈な生活を送るのね。」


セレシュは聖水を彼女の口元に近づける。

勿論、口は式神で開かせている。


「・・・アス!」


ベルゼブブはアスモデウスを助けに行こうとするが、そこにセレシュの影が立ちはだかる。


影はベルゼブブに抱きつき、離さない。2人(?)はバタンと床に倒れ込みジタバタと戦っていた。


「は、離せっ・・・!」


お得意の"かじり"をするが、影に噛み付いた瞬間に苦々しい顔へと変わっていった。


「ペッペッ!なにこれ、不味すぎる!こんなに不味いものは初めて食べた!!!」


口調が冷静なはずの彼も、つい声を荒げてしまうほどに不味いらしい。


セレシュは横目でそれを見ながら、アスモデウスに聖水を飲ませる。すると、口から黒い物が出てくる。それを結界式神で捉え、術式を展開する。


「次会うときがお前の最期よう、このババアが。」


術が展開され、彼女が封印されようというときに苦し紛れに発した言葉。その言葉にセレシュはチラリとアスモデウスを見てからニヤリと笑った。


「あら、ババアはどっちかしらね。」


現在はセレシュのが圧倒的に見た目も若い。完全なる敗北に、アスモデウスは最大の憎悪を最後に見せ、姿を消した。


無事封印されたのだ、これで暫くは蘇らない。彼女が目覚めたばかりだったことが救いだったのだろう。


もしも腹を満たし力がいつものままならば、ここでセレシュもライアも終わりを迎えていただろう。


「なんてものを、ボクに食べさせるんだ。」


ゆらりとベルゼブブが立ち上がる。床には所々が食いちぎられた影が居た。

それはドロリと溶けて、元の影に戻りセレシュの所へと戻ってくる。


セレシュはライアへと近づき、1つ声をかけた。


「もう、完璧?」

「おーけー、完璧。」


ライアはパタリと本を閉じてセレシュに渡す。ベルゼブブは訝しげにそれを見た。


「ボクらは、ただそれが欲しいだけ。大人しくくれればなんにもしないさ。」

「残念、お断り。」


『兵器要録』がセレシュの手の中でボウッと燃え上がり、すぐ後にはただの炭と化した。


ベルゼブブは突然のことに目を丸くする。


「その本は、キミたちにとっても大切なハズ・・・燃やすなんて一体どんなバカどもだ。」

「ご心配なく、勿論危険じゃない武器のレシピだってたーくさんあるもの。あたしの頭の中にしっかり記憶されてまーす!後で文に書き起こして完璧なコピーを作るだけ。」


ライアは得意げに、ふんっと自慢げに鼻を鳴らした。


人は、どこかが悪いと別のところで補うらしい。ライアの場合は、前世も今世も機能しない部分を頭で補っているらしい。つまり、完全記憶能力。


前世は病弱で活発に動けなかった身体を、今世では不自由になった足を、見かけによらず優れた頭脳で他人と同等に、いや知識的な部分で言えばそれ以上の才能を発揮していた。


「仕方ない・・・少なくともこの一冊があれば良いでしょ。」


自身の懐に入れた本をポンポンと叩き、その存在を確かめる。


「ムダに戦わない、さらば。」

「行かれるかぁぁあああ!」


ベルゼブブが転移魔法を使った瞬間、彼女たちの手が彼に触れた。

ほんの数ミリ程度、触れたかさえもわからないくらいだが、彼女たちが転移に巻き込まれるには十分だった。


ベルゼブブが、しまった!と思ったのは視界が変わってからだった。


彼女たちは咄嗟に自身に身体強化をかけて、速度を上げたのだ。


3人が転移した場所は、まさにシュロムたちが交戦している真っ最中の場所であった。


「ぐ、うぅ・・・。」


突然、苦しみ出しライアは足から崩れる。

それは彼女の限界だった。足を動かせる時間は終わりを迎えたのだ。


激しい痛みに苦しみながら、もう少し頑張ってくれと願うが、傷みが止むことは無い。


悔しさが胸の奥から込み上げた。


なんて足手まといなのだろうか、と。


「ライア!!もう、いいわ。あとは任せて頂戴。」


セレシュはライアに駆け寄り、それから今彼女を守れるのは自分だけであると理解すると、敵に対して向き直った。


ベルゼブブはというと、転移したあとすぐにコーネリアの元へ向かった。


「アスがやられた、禁書はこれだけ・・・もう一冊は燃やされた。」


ベルゼブブの報告を聞くと、はぁ?とコーネリアは苛立ちの表情を浮かべた。


「こんな時に失敗?あり得ないんですけど・・・なにボーッと突っ立ってんの。さっさと戦ってきなさいよ!」


ベルゼブブは、内心その言いようにカチンときていたが肉体が無くなれば喰うことも出来なくな?ため、逆らうことをしなかった。


もしも、これが屍肉ならば勝手に動いたってなんら問題も無いのに・・・と深く不満を抱く。


彼女が死んだら、必然的にこの身体も崩れてしまうのだから殺せもしない。


「・・・厄介だなぁ。」


ベルゼブブは、小さくため息をついてシュロムたちの方へと向かっていった。


禁書をもらったコーネリアは、それを開いた。


「これで無限に兵を作れるって訳ね。なるほど、私の勝ちね。」


コーネリアは、勝利を確信しニヤリと笑みを浮かべ『アングムの生命錬金』と『トウニコズムの死霊書』の術式を使用した。


戦いは、真に始まる。

あけましておめでとうございます。

前回更新より3ヶ月以上経ってしまいました、更新ペース遅くて申し訳ありません。


ちなみに裏の物語を投稿してから一年が経ちました。更に、この話を投稿してから3年が経ちました。


私の最初の連載作品なので、思い入れの深いものです・・・。


完全に完結するまであと2,3話。

ぜひ最後までお付き合いください!

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