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王道って何ですか?  作者: みるくコーヒー
裏の物語

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43/47

計画は○○の手の中に

「なるほど、それで私にコーネリアを誘い出して欲しいということですか。」


果たして、彼に計画を話したこの判断は正しかったのか?現在、その答えは出てこない。


ヴィンセント・ギリアを、そしてディズ様を信じるほかないのだ。


「もしも私がコーネリアの味方だったら?」


彼はニヤリと笑う。

あぁ、わかりきっているくせに。だから私は貴方が苦手なんだ。


「我々の勝利は、ほぼ0%で・・・完全に敗北します。」


この計画を知られれば、あの女が警戒するのは当然だ。再び計画に移れるのは何年後か。いやその間に、アルフ様の方がやられてしまう。


「だが、ヴィンが彼女につくことはない、そうだろう?」


ディズ様がヴィンセントに言うと、彼はフッと静かに笑う。


「一度、送魂術の器として利用された手前、彼女に再びつくことはありませんね。」


それは突然だったらしい。

話があると呼ばれ、二人になった瞬間に術をかけられる。意識はうっすらとあったようだ。

実際は、器の魂は乗っ取られるため意識がないはずだが彼にはあった。

そうして久坂との会話は丸聞こえ。自分が如何に利用されているかをその耳で聞けば、味方になど付くわけがない。


しかし、逆にチャンスと取ったディズ様はヴィンセントをスパイとして元のように彼女の側にいるように命じる。


もしも二重スパイだったら元も子もないが。そうして、その可能性は否めない。


「信じきれないのも無理はありませんよ、私がしたことは貴方たちにとっては許しがたいことでしょう。」


私の心を見透かすように彼は言う。

そもそもあの女に加担したという時点で、我々からの評価は低い。

そうして、また彼女の隣にいる事実もマイナス。それが演技だと言われても、そうですかと素直に受け取るのは容易ではない。


それはどんなアホにだって理解出来ることでしょう。


「信じられないというのなら、それでも構いません。許してもらうつもりもありません。」


だって、貴方たちは許してはくれないでしょう?と彼は笑う。


そうだ、許す気などない。少しだとしてもアルフ様を傷つけた罪は重いのだ。

あぁ、でもそうすると長いことアルフ様を悩ませていたディズ様も中々敵ではないか?いやそこまで考えてしまうとキリがない、やめよう、やめやめ。


「それで、ヴィンはこの計画に乗るのか?乗らないのか?」


ディズがイライラとしながらヴィンセントに問う、回りくどい言い回しに苛立ちを覚えたのだろう。

少なくとも計画を知った以上、乗らないというのなら無事に帰すつもりなど毛頭ないが。


私の鋭い視線を察したのか、ヴィンはニコリと笑いかけてくる。


「物騒なこと考えるのはよしてくださいね?心配せずとも乗りますよ、貴方達の計画に。」


そうかそうか、とディズ様は明るくヴィンセントの肩をたたく。

それに対し私は軽くお辞儀をして


「ご協力ありがとうございます。」


と一言だけ伝えた。


「詳しいことが決まったら伝える。」

「わかりました、気長にお待ちしておりますよ。では私は予定があるので。」


ヴィンセントはそう言って早足気味に部屋を出る。


「そう心配するな、シュロム。何かあれば僕が責任を取る。」


いや貴方に責任とられても困るんですけどね、と内心思いながらも私は無言で笑みを返した。




「あぁ、ここに来るのも久しぶりだ。」


と、私は目の前の扉を眺めながら懐かしさにひとりごつ。


今いるのは、ある家の前。家主が出てくるのを待っているところだ。

ガチャリ、と扉が開く。


「待たせてごめんなさいね、シュロムさん。」

「いえいえ。」


迎えてくれたのはセレシュさん、アルフ様のご友人である。

家にあがり、リビングへと案内される。

たまにアルフ様と訪れるため、この場所は慣れない場所では無い。


「わぁ、こんにちはシュロムさん。」

「ライアさん、こんにちは。」


この家に住んでいるよう錯覚するほど当たり前にくつろいでいる彼女もアルフ様のご友人である。

その車椅子だけが、この雰囲気に似合わない。


「急に手紙がきたからびっくりしました。」

「それは申し訳ありません。」

「それで、こうして集めた理由は?」


ライアさんがそう本題に入ってきたところで、私は常に持っているナイフをサッと取り出して2人の喉元に突きつける。


「あら、これはどういうことかしら、シュロムさん。」

「なめられちゃ困るなぁ、その足吹き飛ばすよぅ?」


気づけば、セレシュさんの刀が私の腹に突き立てられ、ライアさんの銃が私の足に狙いを定めていた。


「流石ですね・・・。」

「あぁ、試したなー!!!」


私がナイフを下ろすと2人も武器を下ろす。

それからプクリと頬を膨らませて、ライアさんは私に叫ぶ。


「少し時間が空いていましたからね。」

「失礼ね、仕事はしてるわよ。」


そう言いながら、セレシュさんはキッチンの方へ行く。


「それで、今度こそ要件話してくれますよね〜?」

「勿論です。」


ライアさんの問いに私は答える。

セレシュさんがお茶を持ってこちらに向かって歩いてきて、カタンとそれを置いた。


「さあ、座って下さい。お茶も召し上がって?」

「どうも。」


私が座り、それを見たセレシュさんも私の向かいに座った。


「貴方たちにお願いがあります。」


私はスッと懐の紙を彼女たちに差し出す。


「ああ、やっぱり・・・仕事の依頼なんだねぇ。」


ライアさんが紙を見て言う。


「セレシュさんは全く訛っていないようですね。」

「ええ、そちら側からの依頼は無くても元々うちの方があるもの。全く、それにしても田舎者だの酷いもんよね、誰のおかげでスムーズにやっていけてると思ってんのよ。」


セレシュさんは、ルナバーシ家の分家で暗殺業を担っている家の子孫である。


普通の貴族は王都に住む、こうして郊外に住むのも変わっているわけだが、それと言うのもその仕事の影響や生粋の貴族的意識があるわけではないからなのだ。


セレシュさんのご両親は、仕事で遠くに繰り出しているが、その仕事というのも暗殺家業。暗殺と言っているが、ご両親はラスターナ王国の偵察部隊でもあるので、遠くに行く仕事の重きはそちらが多い。


「ライアさんは、足の具合は・・・。」

「もう使い物にならない、まるで感覚もないの。」


悲しそうに告げるライアさん。

彼女は名門貴族令嬢・・・なのだが、それもただの貴族ではない。遠距離支援攻撃部隊の総隊長の娘なのだ。

小さい頃から天才で、戦場では幼くも多くの敵を倒してきた。


しかし、彼女は足が不自由になった。

それも戦場での怪我によるものだった。


ただ、アルフ様にはそう言えないために、元々足が悪いのだと嘘をついた。


薬を投与すれば一次的に立てるのだが、それに関してもガタが来ているようだった。


「でも、いける。あと数回は、大丈夫。」

「ライア、これ以上はあんたの足が壊れる!」

「もう壊れてるっ!!!」


セレシュさんの言葉にライアさんは怒鳴り声をあげた。

その表情は辛そうで、瞳は涙で濡れていた。ただその涙はまだ零れていない、ぐっと彼女は耐えていた。


「あの戦場で、とっくに壊れてる・・・もうこれ以上は壊れない、だからやるだけやる。」


熱意のようなものが見えた、半ばやけくそなのかもしれない、それでも、やってやろうという意思が見えたのだ。


「・・・このうちの、誰を殺すの?」

「いえ、まだ決定的な証拠も何もない。そして、まだその時期ではない。とりあえず貴方たちに知らせ協力を仰いだまでです。」


セレシュさんが、紙を見ながら問いかけて来たので、私は小さく首を振って否定をした。


「もうすぐ、なんだね・・・。」


ライアさんが呟く。

そう、もうすぐ、もうすぐなのだ。


私はスッとイスから立ち上がる。


「それでは詳細が決まりましたら、また伺います。」

「ええ、お願いします、くれぐれもあの子には悟られないように。」

「あなたたちも、くれぐれも悟れぬように。」


お互いに釘を差し合う。

そうして私はセレシュさんの家を後にした。


この計画は大勢のものの協力の上に成り立つ。さて、誰の手の内にあるというのだろうか。




「ホントに禁書って簡単に手に入るのね。」


コーネリアが一冊の本を眺めながらつまらなそうに呟く。


「それって、この世界の『五大禁書』の一つ?」

「ええそうよ、もう三つも私の手の中にある・・・簡単すぎて驚きね。」


東吾の問いにコーネリアは口の端を釣り上げて答えた。


なぜ彼女が禁書を手に入れられるのか、それは彼女以外の誰にもわからない。

邪神とでも手を組んでいるのか?はたまた死神と契約しているのか?


彼女は『クレアの送魂術』に加えて『アングムの生命錬金』そうして新たに『七つの大罪』までも手に入れたのだ。


死人を回収出来ないコーネリアにとって『アングムの生命錬金』がなければ『七つの大罪』は使えない。


先に手に入れておいて正解だった、と彼女はニヤリと笑った。


「さて、作ってみますか?七つの大罪。」


一体勝利とは、誰の手の内にあるのだろうか。

完結済みでの投稿の仕方がわからなくなったので完結済みを外しています。

ご了承下さい。

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