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王道って何ですか?  作者: みるくコーヒー
最終章

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仲直り

「ル、ルーザッ!?」


パッと振り返り見るとそこにはルーザの姿。

いや、声から分かっていた訳だがここにいるという事実が信じられなかった。


「な、何でこんなところにいるの!?」


私が声を荒げるとルーザはわざとらしく、はぁと大きく溜め息をつく。


「姉さんが、全然帰って来なくて心配したからに決まってるじゃないか。」


確かに、怪我・・・というか、眠っていた為に全く家に帰れなかった。

私は、転移魔法が使える為に何か無い限りはしっかりと魔王城に帰る。


だからこそ連絡もせず帰らなかったことがおかしく感じれたのだろう。


「それで、姉さんを誰かが刺そうとしたって聞いたケド・・・それは彼女かな?」


ルーザが私が見たことの無いような笑みを浮かべる。

それはディズの比にならない程に怖い。


いつもが優しい表情だからそう見えるだけか。

はたまた、本当にその笑み自体が怖いのか。


「彼は遅すぎたんだ。馬鹿だね、僕は彼に何度も言ったハズなのに。」


そう呟きながら、彼は牢屋へコツコツと歩く。


「まぁ、彼が身代わりになってくれたみたいだから僕的には良かったんだけど。でも、殺そうとした罪くらい償って欲しいね。

良かったね、来たのが父さんじゃなくて僕で。父さんだったら、何度も何度も痛い目にあわせるよ?骨をおって引き裂いて、また繋げて引き裂いて・・・。」


ルーザの笑みにコーネリアは、ひぃっ!と顔を強張らせる。


「僕は、そこまで非道じゃないからね。」

「い、いや・・・。」


コーネリアが、バタッと尻餅をつく。

そして、うぅっと涙を流す。


真の次期魔王の気配や圧力に押されたのか。

彼を止めなければ、彼女はきっと死ぬ。

確かにお父様程には残酷ではないかもしれないが、それでも死ぬという事実が変わることはないのだろう。


しかし、私はソレを止める気にはなれなかった。


彼は、牢屋の檻を無詠唱の『暗黒弾(ダークネスリッジ)』一つで壊す。


「お待ち下さい、彼女は我らの領の囚人で「黙りなよ。」


ルーザは、止めようとする兵士を「復讐(リベンジ)」の魔法で跳ね返す。


兵士は飛ばされガンッと壁へと打ち付けられる。


「さて、どうして欲しいかな?火あぶり?氷漬け?」


ルーザは右手に炎を灯し左には氷を出現させる。


「それとも、精神でも崩壊させてみようか?まず、光の魔法で目を潰して・・・。」


彼は、ニタリと笑って光の精霊を現し彼女の顔へと徐々に近づける。


「い、いやぁあああああっ!!!」


コーネリアは、バッとこちらへと駆け寄って来る。

それをルーザは瞬時に追いかける。


「待って!」


私は声を荒げて『完璧な盾』を発動させる。

それに当たる寸前で、ザッとルーザは止まる。


「その人を守るの?」

「暴力じゃ解決出来ないわ、私は彼女とハナシがしたいの。懲らしめて復讐したいわけじゃない。」


そう訴えると、ルーザは精霊を消し『わかったよ』と言わんばかりに手をひらひらと振る。


「姉さんは頑固だからね、僕が何を言ってもきっと聞かないんでしょ?でも僕は側にいるから、危なくなったら容赦無く消すよ。」


ルーザは一度キッとコーネリアを睨んでから、少し遠くへと移動する。


「コーネリア・・・ううん、優奈ちゃん。」


私の後ろに優奈ちゃんは隠れていたので、私はグルリと振り返り出来るだけ声音を優しくして話しかける。


「さっき、貴方がこの世界は自分のだって。だから回りはどうなっても良いって、そう言ったよね?その発言にルーザがそう思ってるのは貴方だけって言った意味、わかる?」


彼女は、ポカンとしていた顔を少しだけ引き締めてから俯く。


「この前も言ったけれど、私もディズも皆この世界で一人の人間として生きてる。その意味がわからない程あなたは馬鹿じゃないはずよ?」


そう言うと、彼女はポロポロと涙を流す。


「わからない訳じゃないわ。でも、でも、わかりたく無いの、理解したくないの。だってまた貴方に負けてしまうじゃない。」


一言一言、途切れ途切れでもしっかりと彼女は言う。


「私、章介のこと本気で好きだったの。初めて自分から好きになった、初めてこんな感情を抱いたの。でも彼は結局・・・天野さんを選んだ。だから、だから、貴方がいなくなればって、急にそう思ったの。自分でも自分が制御出来なくて、内側から黒い何かが這ってきて・・・。」


そう言うと、彼女は人が変わったような付き物でも落ちたような表情をした。


「ホントに色々とごめんなさい。」


彼女は深々と頭を下げる。


「ヒロインだからと浮かれて何でもしていいと思っていたんでしょうね・・・章介もディズも、好きになること自体間違っていたのかしらね。」


彼女は、とても悲しそうな表情を浮かべる。

私は、それは違うと首を横に振る。


すると彼女は、え?と不思議そうな顔をする。


「人を好きになることは人間の心理で自然の摂理よ。恋することが間違えだなんてそんなこと絶対に無いわ。でも、あなたのしたことは褒められたことでは無いわ。好きになる云々以前に人として最低なことよ。」


優奈ちゃんは、ゆらりとこちらへと歩み寄って来る。

それに、ルーザはバッと構える。私も油断は出来ない為に身構える。しかし、私の予想に反して彼女は私の手をキュッと握る。


「彼らが貴方を選ぶ理由、わかった気がする。 貴方は間違えじゃないって言ったけれど、でも、やっぱり好きになるべきでは無かったわ。叶わぬ恋なんだもの。私は私のことを見てくれて、私自身もしっかりと相手を理解出来る・・・そんな人を見つけようと思う。」


優奈ちゃんは、ふわりとした笑みを浮かべる。

その笑顔は今まで見た中で一番綺麗だった。


「凛蝶ちゃん、ありがとう。許してくれるなんて思ってないけど、でも、許して欲しいってその言葉しか出ないの。貴方とちゃんと、友達になりたいの。」


真剣な表情の中に懇願するような表情が見える。

これが、あの優奈ちゃんか?演技してるんじゃないのか?


そんな疑問が生まれる。


前世や現世の行動や言動では考えられない。しかし、前世も現世も彼女は正直だった。人を騙すようなことだけはしなかったし、いつだって方法が悪かっただけで正面から向かってきてはいたのだ。


そんな彼女が演技をするだろうか?


きっとしないだろう。

でも今までのこともあってそう簡単に頷けない。許したくない自分がいるのが事実だ。


「ダメ、だよね。

うん・・・わかってたの!あんなに酷いことしたのに許してくれるわけないもんね。」


だんだんと声が小さくなり、最後の方は聞こえなかった。

握る手の力が強くなり、優奈ちゃんの表情は暗くなる。


「許せるわけ無いじゃない。」


気がつくと言葉が出ていた。

言おうと思っていなかったのに言ってしまっていた。


「私を殺したうえに、ディズまで刺した貴方を許せるとでも思う?そんなこと考えていたなら甘すぎね。」


止めたいのに止まらない。

自分の意に反して言葉が出てくる。


「そんな簡単に許せる程、私は良い人間じゃないの。」


優奈ちゃんは、目に涙を浮かべる。

ごめんね、私にオブラートに包もうっていう精神は無いのよ。


「もし許して欲しいなら、行動で示しなさい。」


優奈ちゃんは、一瞬え?という表情をするがすぐにパアッと顔を輝かせる。

私も私で自分の言ったことに驚きを隠せない。


私は彼女を許すのか?


しかし、自分の本心で言ったことだろうから許そうと思っているのだろう。


「嫌いになるのは一瞬だけど、好きになるのには相当な時間がかかるわ。貴方にそれを頑張れる気持ちはある?」


そう聞くと、彼女はブンブンと勢い良く首を振る。


「それなら、お互いに頑張りましょう。」

「お互い・・・に・・・?」


優奈ちゃんは、コテンと首を傾げる。


「私も貴方を許せるように努力するわ。

本当の友達になれるようにね。」


私はニコリと彼女に笑みを浮かべる。


「それまでは、友達(仮)ってことで。」


彼女は、それでも構わないと笑う。

なんだか子犬のようでとても可愛い。


流石ヒロインと言うべきか。


「凛蝶ちゃん・・・で良いの?」


呼び方の話か?

急に言われた為に少しビクリとする。


「凛蝶は前世でもう死んだもの。こっちではアルフィニ・セルシュート。アルフで良いわ。」

「じゃあ、私のことも優奈ちゃんじゃなくてコーネリアって呼んでね!」


とりあえず、これは・・・仲直りってことで良いのか・・・な?


なかなかに1話が時間かかっちゃいますね。

8月中に完結出来れば良いですねっ♪

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