凛蝶と優奈←→アルフとコーネリア
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「ええ、大丈夫よ。」
私は、ゴクリと水を一杯分飲む。
「無理しないでくれよ。お前を死なせたらあいつに合わせる顔が無くなるんだから。」
私のそばでロジェがもう一杯水をくみながら言う。
私は魔力切れで数時間眠っていたが魔力がある程度回復したために目を覚ました。
しかし、彼はまだ目を覚まさない。
治療がまだ終わらないのだ。
心臓はかろうじで外していたがそれでも掠めている程近くを剣は貫いていた。
血の量も多く、例え天才と言われるリュリエスでも数時間で治療するのは無理で、更に言うとソレが成功したとしても眠りから覚めるという保証はないのだ。
「大丈夫よ。だって、魔王の娘だもの。魔力が切れたからってそうそう死にはしないわ。」
私はニコリとロジェに向かって微笑む。
それは、私からの大丈夫だという印の笑みでロジェはそれを見て安堵の表情を浮かべる。
「・・・優奈ちゃ、じゃなかったコーネリアは?」
私がそう聞くとロジェは、少し顔を歪める。
「何であんなやつのこと気にかけてんの?」
そう言われると、言葉が詰まる。
東吾くんとの約束だから。
章介のことの仮を返すため。
ディズを渡したくない。
たくさんの理由があるケド、結局どれも自分のためで・・・。
どうしても言葉に詰まった。
良い理由なんて出てこなかった、しいて言うならば
「私の自己満足、かな。」
ロジェは、カクンと首を傾ける。
「自己・・・満足・・・。」
そして、ポツリと呟く。
彼は、その答えに余り納得していないようでその言葉を数回呟く。
「私は、きっと私自身のために彼女を気にかけ止めようとしているの。
東吾くんとの約束とか言っておいて結局は章介を奪われたという事実に対して復讐してやりたいだけ。
私は誰のためでもなく、自分のために動いてる。
だから、ただの私の自己満足。」
私は、淡々と語る。
それに対し彼は、納得したのような呆れたようなため息を一つつき、私の腕をとる。
「いーよ、連れてってやる。」
そして、腕を引かれて行ったのは、牢屋。
それは当然のことだ。
刺すつもりだったのは私だったとはいえ、実際に刺してしまったのは一国の王子。
まぁ、刺したのが私だとしても魔王国が黙ってはいないから変わりはないのだろうが。
私を刺していた方が彼女にとっては最悪な結果だったかもしれない。
なにせお父様だもの、私を刺したなんて知ったらきっと怒り狂って人間さえ滅ぼすかもしれない。
それはこちらとしても良い結果ではない。
長年築き上げた人間との良好な関係も全て無駄になってしまい、更には勇者なんていうめんどうな存在さえも出てくる。
だからといって、ディズを刺したことが良かったなんて少しも思ってはいないのだが。
むしろ、そんなの最低で私は彼女をより許すことが出来なくなったわけだ。
「何しに来たのかしら。」
冷徹で厳しい眼差しがビシッと私の瞳と交差する。
「ただ、会いに来ただけ。自己満足のためにあなたを気にかけているだけ。」
私がそう答えると、彼女は更に私をにらむ。
「だったら早く帰りなさいよっ!」
癇癪を起こしたような叫び声。
それが牢屋の中に、うぉん・・・と響く。
「帰らないわ。」
彼女は、私の固い意思に悔しそうに顔を歪める。
「ディズは、あなたのモノになった!私から奪い取った!それで良いじゃない!満足でしょ?だったらもう私と関わらないでよっ!」
私のモノ・・・。
そんな言い方して欲しくなかった。
自分のだとか他人のだとか、ディズのことをそんな風に言って欲しくなかった。
ディズはディズだ。
誰のモノでもない、彼には意思というものがある。
彼がコーネリアを選ぶというのならばそれで良かった。ちゃんと納得出来た。でも、そうじゃない、そうじゃないんだ。彼は彼女を選んでなんかいない。
彼は、そう、私を選んでくれた。
その事実だけがちゃんとあって、彼女の意のままに操られる人形じゃないんだ。
「章介は私よりも貴方を選んだ、だから私は彼を引きとめずに別れたの。」
ふっとコーネリアが視線をあげたため、私と彼女の視線は交差する。
「この意味、わかる?」
そう問いかけても彼女は相槌をうたない。
「貴方の行動は褒められたものじゃない。他人の彼氏を取るなんて最低。自分に好意を持ってくれてる人を利用するなんて最低。でも、そんな最低な貴方を彼は選んだの。ソレを否定したら私はもっと最低。彼は私の物なわけではないの。彼は一人の人間なんだもの。彼の気持ちは彼のモノだから私は貴方に彼を渡した。」
彼女は、ハッと鼻で笑う。
「それは前世の話でしょ?今世は話が別。だってこの世界は私のために作られたのよ?
貴方だってそう、私の為の一つの駒じゃない。この世界は乙女ゲームの世界、主人公は私・・・貴方じゃなくて私。」
そして、アハハッと高笑いが響く。
本気でそう思ってるのが凄く残念でならない。彼女には、何を言っても変わらないのか。
そう思っていたら後ろから声が聞こえてきた。
「そう思っているのは、お前だけだ。」
低く、冷たい声。
それは聞き慣れた声だった。
短めですがドンドン結末へと進んでいきます。




