私と彼女と彼。
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「話が、したいの。」
「私には話をすることなんて無いわ。」
コーネリアは、そう言って私から背を向けて逃れようとする。
「東吾くんからいろいろ聞いたわ。」
コーネリアは一瞬、ピタリと体を止めるがすぐにクルリと私の方を向く。
そして、ニコリと笑いかけてくる。
「東吾くんって誰のことかしら?」
東吾くんの存在を無かったことにする気か?
自分の中から都合の悪い存在は消去・・・。
彼は、彼女のために多くの罪を犯した。
でもソレは彼女が大事だったから、何よりも、誰よりも。
「とぼけるつもり・・・?」
そう、睨むような眼差しで聞くと彼女の表情から少しだけ焦りの色が出る。
「章介のことも、そうやって忘れるの?
あなたが殺すように命じた『私』のことも、忘れるの?」
彼女は少し唇をかみ締めると、再びにこりと笑う。
そこからは、先ほどの焦りの色は微塵も見えない。
確かに可憐で、美しい笑み。
ただ、私には悪魔の笑みにしか見えないのだけれど。
「あら、アルフさんは何を言っているのかしら?
章介さんってどなた?殺した『私』ってどういう意味かしら?」
彼女は口元に手を寄せてコロコロと小さく笑う。
「どなたか存知ませんが、他の男性の名前が上がるほど私は遊び人ではありません。
私は『ディズ一筋』なんですもの。」
確かに、彼女のその言葉に嘘や偽りはないのだろう。
ディズルートを選んだ・・・そういうことだ。
それがただの愛情なら私は彼女を応援しただろう。
でも、彼女は違う。ただ、気に入ったモノを自分のにしたいだけ。
そこに愛はない、ただの独占欲。
それだけで、彼女は私の大切な人を奪ったんだ。
次は奪わせない、次は守り抜く。
彼だけは----渡したくない。
その感情だけがなぜか身体の内側を巡って気がつくとある一言を口にしていた。
「ディズは、ディズは渡さない。」
そうすると、彼女は悔しそうに顔を歪ませる。
そして、それと同時に周りのギャラリーがどよめく。
『やっと、アルフ様が振り向いたぞ。』
『これでこの国は安泰か・・・やっとディズ様が落ち着くぞ。』
『ま、まぁ・・・これじゃ私達に勝ち目は無くなってしまいましたわ。』
『いや、まだ少しは希望が・・・。』
『あるわけ無いじゃない。あのアルフ様ですわよ?』
騎士達や側室候補の貴族達の会話が耳に入る。
いや、どのアルフだよ。
そんなに私、凄い人じゃないんだけど・・・。
「ア、アアア、ア、ル、アル!?」
ディズの動揺したような声が上から降ってくる。
見上げるとディズが整いすぎな顔を真っ赤に染めている。
ん?上から・・・?
んん?あれ、私、何やってんの?
何で、ディズにしがみついてんの?ギュってしてんの?
それを認識して、私はバッと凄い勢いで離れる。
まてまてまて、私はなんてことをしているんだ!
バカか、バカなのか。
「あー、もう、可愛すぎる。せっかく正室とか考えようと思ってたのに。
無理無理無理、アル可愛い、無理、アルじゃなきゃ無理。
ホント、僕のこと殺す気なの?」
ディズが何かをぶつぶつ呟いている。
「ディ、ディズ、今のは、事故です!!!」
私はディズにそう訴える。
そうするとディズは私の方を見る。
獲物を捕らえるような瞳。
じりじりと彼は寄ってくる。
待って、ちょっと待って、私の中で危険信号がッ!
そして、みんなのいる前でガバッと抱きしめられる。
「あー、もう理性が、理性吹っ飛ぶ。」
ならば、抱きしめないでください!!!
肩あたりに顔をうずめないでくださいッ!!!
頬ずりするのやめてくださいぃぃぃッ!!!
「ちょ、みんな見てるんだから、やめッ!」
むーっと抵抗をしてみるが離してくれる気配は少しもない。
じたばたしてみるけど無理。
はがそうとしてみても無理。
どんだけ力強いんだよッ!!!
「アル、やっぱ大好き。結婚しよ。」
無理無理無理無理ッ!!!
どんな罰ですか、それ、無理です無理です!
と、心で思ってても口に出来ない自分がいる、何ソレ怖い。
「・・・何、なんなの・・・?」
とても低い声があたりに響く。
私は、その声に反応したディズの隙をみてドンっと離れる。
そして声の方を見る。
その声の主は、先ほどとは全く別の顔をしたコーネリア。
確かに同じ人物、でも全然違う。
私には、彼女が優奈ちゃんに見える。
憎悪に満ちた顔。
「ここは私の世界、私のための世界。ディズは私を好きになる運命なの、だって私がソレを望んでいるんだもの。じゃなきゃおかしいわ?だって、神様は私の望む世界を与えてくれたんだもの。みんなが私だけを愛してくれる世界、私の欲しいモノが手に入る世界。」
コーネリア・・・いや、彼女は優奈ちゃんと言うべきか。
ニッと先ほどの可憐さとはかけ離れた不気味さに満ちた笑みを浮かべる。
それは気味が悪くて、とっさにサッと後ろに身体を反らせてしまう。
「なのに、何であんたがいるわけぇ?」
雰囲気が全く違う。
ギャラリーの人達でさえ、みな身を後退させていく。
「章介に振られたから、あなたが『私』を殺した。
きっと、私がここにいるのはその因果なんだよ、優奈ちゃん。」
きっと、私は前世の決着をつけるためにこの場所にきた。
この世界に生まれ変わった。
「はぁ?あたしが章介に振られたぁ?あんた、何言っちゃってるわけぇ?
あたしが飽きたから章介をぽいしたの、あたしが!飽きたからッ!」
彼女は、振られたという事実を認めたくないのだろう。
だから必死に言葉を紡いでいる。
「東吾は、あたしが命令してやったんじゃないわ?
あいつが勝手にやってくれるの、ただ一言呟けばそれで終わり。」
あははっと彼女は笑う。
先ほどまでは否定していたのに自らそれを肯定する発言をする。
「東吾くんは、あなたを止めて欲しいって言ってたの。
あなたをちゃんと愛してた。その愛に応えてあげるべきなんじゃないの?
なんで利用しかしないの?」
彼女は、イラだったような顔をする。
「あー、なんでなんでうっさいわね。ちょっとは黙れないわけ?別に私は東吾のことなんか何とも思ってないもの、東吾なんてどうでもいいの。使えたからそばにおいただけ。使えなくなったら別にどうでもいいわ?利用価値すらないものなんて意味ないもの。邪魔なだけだわ?」
その発言に私は怒りを覚える。
彼は、それは愛情表現としては誉められたものではなかったけれど、それでも彼女をちゃんと愛していた。
彼女に振り向いてもらおうときっと、ただ必死にもがいていただけなんだ。
彼は私の友達だ、だからその発言に怒るのだ。
「あなた、最低ね。」
私がそういうと彼女はあはっと笑う。
そして、そのまま高笑いをはじめる。
「最低?何ソレ、おもしろいこというわね。まぁ、前世の世界では最低といわれてもいいかもね?でも、ここではそんなこと言わせない。だってここは私のための世界だもの。私の望むままに駒が動くべきでしょ?」
「あなたの世界じゃない。私も、ディズも・・・みんなこの世界に意識を持って生きてるの。心を持って生きてるの!一人一人が主人公の世界なの。あなただけが主人公だなんてありえない。ここはゲームじゃないの!現実なの!!!」
私がそう言うが彼女には全く響かない。
無表情になって、私を一瞥する。
「意味わかんない、誰の世界・・・だって?みんなのとか、ふざけてんの?神様が私だけのために与えた世界なのよ、私が主人公の世界なの。イレギュラなんてね・・・。」
『来たれ武器』
彼女は魔法で騎士の持つ剣を自分の手のひらへ引き寄せる。
そして、それをギュッとにぎる。
「いらないのよッ!」
そして、こちらへ向かってくる。その素早さは以上でガードする暇すら与えない。
世界がスローモーションで動いていく。
あぁ、トラックで轢かれるときと一緒だ。死んじゃうのかな?
まだ王子様にすら会ってないのに?
視界の隅から何かが飛び出してくるのが見える。
あぁ、あの銀髪はロジェだ。
でも、残念ながらきっと間に合わないね。
だって遠いもん、そんな遠いとこにいないでよ。
私が死んだらエルミナのことよろしく。
どうせ、お前ら両思いなんだろ。リア充なんだろ?
気づきたくない事実だったね、なんで死ぬ前にこんなこと思わなきゃいけないんだバカ野郎。
あぁ、サヨナラみんな。
サヨナラこの世界、サヨナラ私の現世。
こんにちは、来世。
そう思っていると、目の前が暗くなる。
お?お迎えか?
でも、あれ、地面に立ってる。
「ゴプッ。」
私の目の前から、何かを吐くような音が聞こえる。
左胸を一突きにされた誰か。
血塗れた剣の先が貫かれたために私の目の前に見える。
「あ、う・・・。」
私は、腑抜けた声を出してしまう。
視界の隅で揺れる金髪。
見上げると、それはくっきりと見える。
見慣れた背中にジワリと血が滲む。
「ディ、ズ・・・?」
そう私が呟くと、彼の青い瞳がちらりと私の方を見る。
そしてバタリと倒れる。
私は瞬時に彼をギュッと抱える。
「ディズゥッ!」
あぁ、どうしよう。
まわりからは凄く悲鳴が聞こえてくる。
「あ、あは、あははははッ!」
優奈ちゃんの笑い声も聞こえる。
ああ、うるさい、うるさい。
「捕らえろ!」
「ちょっと、離しなさいよ!この世界の主人公はあたしよッ!あたしなの!」
あー、もう、うるさい、黙れよ。
彼女は兵士に連れて行かれわめく声は小さくなっていく。
「ディズ、ディズ!」
「やっと、やっと・・・アルを、守れ、た。」
そういって、ディズは優しげな笑みを浮かべる。
私の頬を何かが伝う。
それは、涙だ。
たくさんの涙、どうしようもなく流れて止まらない。
「何で、泣くの・・・?」
ディズが私の方へと手を伸ばす。
私は、その手をキュッと握る。
「バカ、バカ・・・なんでそんなこと・・・守らなくていいのに。」
「だって、アルのこと、大好き、だもん。」
その、大好きが心に響く。
響いて離れない。
「リュリエス、早く、はやく。」
「うん、わかってるよ!」
リュリエスはバッと駆け寄ってきて、治療を始める。
「ディズ、大丈夫だから。大丈夫だから。」
「アルが、そばに、いるから。僕、は、死ぬわけ無い。」
ディズの呼吸が荒くなる。
私は、握る手に無意識に力をこめてしまう。
「すまない、俺が遅れなければ・・・。」
「へッ、やっぱ、お前じゃ、ダメ、だね。」
こんな時までそんなこと言わなくていい。
今は喋らないで欲しい。
「ディズ、お前・・・。」
背後からディズの声がする。
「ジェイド、ごめん、私のせいだ、私がいけなくて。」
「こいつが決めたんだ。お前だってちゃんと覚悟してたハズだぞ。」
ジェイドは私の頭に手をおいて、クシャリと撫でる。
「リュリエスがどうにかしてくれる、信じろ。」
その言葉で少しだけ安心する。
でも、ディズの呼吸は乱れる一方で声を発する余裕すらもなくなっている。
「アルフさん、ちゃんと治療したいんだ、ディズ様の部屋に転移できる?」
リュリエスの言葉に私はコクリと頷き、みんなに掴まるように促す。
みんなが私に掴まったのを確認し、ディズの部屋へ転移する。
ジェイドがディズを抱えてベッドにおろす。
目の前がグラリと揺れる。
こんなに多くの人を一緒に運んだからか体内から魔力がごっそり無くなったのを感じる。
「ディ、ズ・・・。」
目の前が急に暗くなって私は意識を手放した。
あぁ、ディズ、無事でいて。
あなたに伝えたい事がたくさんあるんだから。
今更気づくなんて、ホントにバカみたいだけどね。
自分の書きたいような文章で書きました。
変わったか変わってないかは分かりませんが読みづらかったらごめんなさい。
全然関係ないけど、ツイッターって楽しいよね。




