目覚め
「・・・こ、こは・・・?」
見慣れない天井。
いや、違う、何度も見ている天井だ。
一瞬思考が停止していたがすぐにソレは機能する。
ここは、ラスターナ城の天井だ。
「あ、アルフさん!目が覚めたんだね!良かった、ホントに良かったぁ。」
私のすぐ側でリュリエスがホッと胸を撫で下ろした。
「ディズ様に報告してくるから、ちょっと待っててね!」
そう言って、リュリエスはダッと部屋を出て行く。
私は横たわっていたのだが、むくりと起き上がる。
「り、凛蝶、大丈夫なの?」
「無理しないで寝てていーからね。セレシュ、凛蝶じゃなくてアルフだよ。」
いつも間違えるのはお前だケドな、と内心でツッコミをいれる。
「起きてる方が落ち着くから、二人ともありがとう。」
私は全然大丈夫、元気だ。
しかし、どれくらい寝ていたのだろうと疑問に思い聞いてみるとなんと2週間以上も眠っていたようだ。
そしてその間、二人は毎日お見舞いに来てくれていたようだった。
やはり、持つべきは友である。
「この前に二人が言ってた、引きずるだ何だらのことわかったの。
優奈ちゃんが私を突き飛ばしたことでしょう?確かに、私も一生恋愛するもんかと思ったもの。」
そう私が言うと、二人は「ん?」と不思議そうな顔をする。
「いや、私達が言ったのは章介君のことなんだ・・・けど・・・。」
ライアが戸惑うように言葉を紡ぐ。
あ、そっちの方かと私は納得する。
章介のことは全く気にしていないし吹っ切れている。
むしろ、最期のときのことの方がトラウマである。
「章介のことは、もう何とも思ってないから。浮気したような人のことをまだ好きでいるなんて馬鹿馬鹿しいことしないし、確かに長年付き合ったけどちょっと寄り道しちゃっただけで、前世でも無理だったけど今世では運命の王子様見つけてやるし。」
「王子様って・・・。」
何だよ、ディズだとか言いたいのかお前。
だから違うっt((ゥボァッ!
「ってか、優奈ちゃんに突き飛ばされたってどういうことなのよ!」
セレシュが私の肩を掴んでガクガクと強く揺さぶる。
ちょ、やめて!仮にも私は病人よ!
いや・・・怪我はしてないんだけれどもさ。
「いや、信号待ちしてたら背中を押されまして
トラックに轢かれる直前に見えたのが優奈ちゃんの笑みだった、とさ。」
私は、ははっと笑うが二人は顔を一瞬青くしてすぐにふざけんなッ!と怒りをあらわにする。
「何、そんなんただの人殺しジャン!超ふざけてんだけど、マジ何なの!?
凛蝶ちゃんは被害者で何もしてないのにッ!」
ライアの口調が悪くなるなんて・・・相当怒ってますね、これは。
っていうか、お前もちゃっかり間違えてるよ。
凛蝶って言っちゃってるよ。
「優奈ちゃんって・・・まさか・・・。」
「ねぇ、キミたちって『ユウナ』って人のこと知ってるの?」
セレシュが静かに呟くと、いつからいたのか・・・ディズが扉の前に立っていた。
いや、むしろお前が優奈ちゃんをしっていることの方に驚きだけどな。
「ディズ!・・・様・・・別に知ってるというか、まぁ知ってますけど・・・。」
セレシュが、うーんと何かを悩みながら言う。
きっとディズには話すべきでないと判断したのだがどう誤魔化すかに困ったのだろう。
「でも、あなたに話すことなんて何もありませんよー?
仮にも王子様でしかもディズにそれを言えるライアは素晴らしいです。
「ふーん・・・まぁ、今はそんなことどうでもいいや。」
ディズは自分で問いかけたにも関わらず全く興味無いように言う。
そして、コツコツとこちらへ歩いてくる。
ベッドまでたどり着くと突然、私のことをキュッとだきしめた。
「良かった・・・ホントに無事で良かった・・・。守れなくてごめん、危険な目にあわせてごめん。もう絶対に危険になんか晒さないから・・・だから、だから。」
私を抱きしめる腕が更に強くなる。
ちょ、苦しい、です。
「今だけは、このままでいさせて?」
セレシュとライアの方を見ると、二人は必死に笑いをこらえている。
バチッと目があうと『じゃあ』と手をあげて部屋から出て行った。
ちょっと、待てぇええええええええッ!
っていうか、あのディズさん・・・えっと・・・
「ちょっと、苦しい、です。」
そう訴えるとディズは名残惜しそうに、しかし素早く離れる。
「・・・うん、ごめん。」
ホント窒息死するかと思った。
離れるとディズは微笑を浮かべながらくしゃくしゃと私の頭を撫でる。
「・・・僕、ちゃんと正室とか側室のこと考えるから。」
「ん?」
え、今なんて言った?
絶対聞かないと思っていた言葉が出てきましたぞ?
誰だ、ディズをここまで改心させた人!?
ぜひとも、お目にかかりたいものです、いや、マジでマジで!
「ってことは、アルもちゃんと旦那さん見つけないとダメってことだからね。」
あぁ、そっか、私ちゃんと結婚相手見つけなくちゃいけないのか。
次期魔王にならないんだもんねぇー。
しかし、お相手がいないんだよねー。
ってか、私って転生してから彼氏いない歴=年齢ジャン!
「今まで、迷惑かけてごめんね。
アルのことは大好きだけどやっぱり僕も大人にならないといけないよね。」
もう20超えてるし王子としては十分に大人だと思うケドね。
大好きと言われた瞬間、言われ慣れているハズなのに何故かトクンと胸が鳴った。
それと同時に正室や側室などのことを思い出し心がモヤモヤとする。
なんだ、これは。
高校生時代の・・・若かりし頃の感覚だがする!?
いや、今もそこまで歳な訳ではないんだけれどね。
精神的には既にオバハンですよ。
いや、しかし、ディズにそんな感情を抱いている訳がない!
訳が・・・無い・・・よ、ね?
「どうしたの?ボーっとして・・・やっぱり、まだ具合悪い?」
ディズが心配そうに私の顔を覗きこむ。
「ううん、なんでもない。」
私が首をブルブルと振ると、彼はニッコリと笑みを浮かべる。
そして、私から離れてドアのあたりへと歩いていく。
「それなら良かった。元気なら、来て欲しい場所があるんだ。」
彼は、立てる?と私に聞く。
ソレを聞くなら遠ざかる前に聞くべきだと思いますケドね。
まぁ、立てますけれども。
私はベットからゆっくりと立つ。
少しよろめくがあまり問題は無いだろう。
「ゆっくりでいいから、僕の後を付いて来て。」
さて、私はこれからどこに連れていかれるのでしょうか?
次、ちょっと長くなるかもなんで
結構短めにしました!




