暗殺者ですケド、何か? sideロジェ
暗殺をして失敗した暗殺者が
尋問されている時に思っていたことは?
「やぁ、こんにちは。」
俺は、ニコリと笑って王子さんを見てやる。
俺は初めて暗殺に失敗した。
相手が悪かった、としか言えなかった。
コーネリアというお嬢さんから次期魔王を殺す任務をもらった。
ぶっ飛んだお嬢さんだと思ったが、仕事だしそこは流した。
そして暗殺当日、この王子さんに会ってしまった。
なめてかかったのが悪かった。
仲間は殺され俺は腕を斬られた。まぁ、治ったケドさ。
そして、今ここの尋問室にいるわけである。
暗殺界では一応有名な俺。
なんていう醜態だ。
こんなの知られたら俺の信用ガタ落ちだっつの畜生。
そういう意味をこめてニコリと笑ってやった。
「そんなにケロッとしてるんだったらもっと斬っておくんだった。」
愛想笑いで有名な王子さんの怒り顔を見れるとは
これがこれで案外ラッキー?なんつって。
「ご遠慮しとく、言っとくけど結構痛いんだぜ?」
俺は笑顔だし、顔引きつってもいないから
全然痛くないように見えるかも知れないケド
実際は凄く痛かったりする。
いや、盛った。凄くじゃなくて普通に痛い。
「じゃ、もっと痛くなる?」
王子さんがバッと腰の鞘から剣を抜く。
そしてロジェの首元に突き立てる。
「別に斬りたいなら斬れば?俺、何も言う気ねぇから。」
簡単にそういう俺にディズ様はチッと舌打ちをした。
守秘義務ってやつさ。
「従順な子犬だね。ご主人様のために命を捨てるって?」
「ははッ、誰がご主人様だよ。
あいつはただの雇い主だ。俺のご主人様でも何でもねぇよ。」
ホント、ご主人とかやめてよ。
誰があんなぶっ飛んだお嬢さんに飼われるかっつの。
飼い犬なんてごめんだな!
「どうでもいいから、早くキミの雇い主のこと言ってくれる?」
「今の話聞いて無かったの?俺は言う気ないって。」
とんだお馬鹿さんだな。
ついさっき言ったことを忘れちゃうなんて。
俺がジッと王子さんの目を見ると王子さんが凄い形相でにらみ返してくる。
あー、こわッ!(笑
「・・・僕のアルを殺そうとしたんだ。
とりあえず、死ぬことだけはちゃんと覚悟しといてね。」
王子さんはニコッといつもの愛想笑いを浮かべた。
怒っていた顔より何倍もこちらの方が怖くて
一瞬だけびくりとする。
しかし、俺もすぐに平常心に戻す。
「俺は死ぬことを恐怖に思ったことはねぇし
死ぬことが一番重い刑だとも思わねぇ。」
俺はギヒッと笑う。
死ぬことより生かされることのが重い時だってある。
それに、こんな仕事をしてるんだ。
常に死と隣合わせ。死なんて怖くはない。本当に。
王子さんの笑みが更に増す。
うわぁ、普通の人が見たらかっこいいと思うだけなんだろうな。
俺は、そうは思えないな。
「キミを罰するのは僕じゃない。
地獄の閻魔様さ。キミはどうせ地獄に落ちるのだから。
そこできっと閻魔様がとても辛い刑を処してくれるだろうね?」
地獄・・・ねぇ?
そんなもの、ホントにあるのか?
・・・というか、俺がそこに落ちるのなら・・・
「そしたらあんたも地獄行き決定だな。
大好きな時期魔王ともお別れだ。」
自分の大好きな人と別れるのがお前にとって一番の辛さだろ?
だったら、お前も死んでからが辛いだろうな。
「僕はアルのそばを離れたりなんかしない。
閻魔様を殺して、僕は天国に行ってやるさ。」
その言葉を聴いて、俺は大笑いする。
こいつは馬鹿か!?
閻魔さんを殺したら俺まで天国に行っちまう!!!
こりゃおもしろい。
最期の最期におもしろいこと言ってくれる!
俺は今までの経験を使って手錠を外し
体に隠し持っていた短剣を手にした。
まさか、体内から出せるなんて思わねぇもんな?
仕事を失敗したからには生きてる訳にはいかねぇ
依頼人の名前もうっかり口にすることも出来ないしな。
俺はニッと笑って王子さんを見る。
「まぁ、そん時まで地獄で待っててやるさ。」
俺は、短剣を腹に突き刺し横に裂く。
くッ!流石にいてぇな・・・。
ごふっと血を吐き、そこで意識はフェードアウトした。
-------------------------------
「う、うぅ・・・。」
んだ、ここは・・・地獄・・・いや、どこ、だ?
「あ、目が覚めた?」
誰かが俺のことを覗き込む。
そいつと目が合う。
あれ、あれ、あれ?
「お前、なぜここにいる!!!
俺は死んだはずじゃ・・・。」
目の前には、俺が殺せなかった次期魔王がいた。
「一命は取り留めさせていただきました。」
「なッ!何余計なことしてくれてんだ!
最強の俺様が死に切れねぇなんて、かっこ悪いだろぉが!」
自殺未遂に終わるだと!?
ありえねぇ・・・ありえねぇえええええええええッ!
ん?なんか・・・顔が涼しいぞ?
「って・・あれ・・・無い?」
俺は顔をこするように手で触る。
そして、アレが無いことに気づく。
「包帯、とったのか?」
「だって邪魔でしょ?」
俺は、うわぁあああああと叫んでベットの中に潜りこみ顔をうずめる。
次期魔王が布団の中をのぞこうとする。
「こ、こっちみんな!」
ちくしょう、顔を見られるとは屈辱!
俺は素顔を見られたくないから包帯をしていたのに
ちくしょう!このやろう!!!
「ホントなんなんだ・・・。
えっと、あー・・・名前は?」
悶々としているところで名を尋ねられる。
「ロ、ロジェ・グレイネス。」
「グレイネスさん・・・ね。」
俺は顔を上半分だけだし、次期魔王をジッと見る。
「その呼び方は嫌いだ。」
「え?」
「嫌いだと言ったんだ。だから、ロジェでいい。」
苗字は嫌いだ。
苗字で呼ばれると妙に腹が立つ。
だから、名で呼ばれるほうがいい。
「俺様が許可してるんだぞ。」
「私のこと殺そうとしていて何様だ、この野郎ッ!」
バシッと殴られる。
ちくしょう!怪我人になんてことを!?
この女を殺すことにもっと必死になるんだった!!!
これで他の人の視点は終わりになります。
アル視点に戻します!




