僕のお仕事 sideリュリエス
王子が尋問する時同伴した魔導士に
彼と彼女の様子はどう移っていたのか
僕、リュリエス・シンフォニッドの今日のお仕事は
王子ディズ様の尋問の同伴だ。
尋問の同伴には魔導士が付くことが絶対とされていて
魔導士は基本、尋問相手が攻撃してきた時の防御や怪我の際の手当てをするためにいるが
実際、何の話をしたかを記述するだけの雑用係で
攻撃してくることなんてそうそう無いし、怪我したって基本手当てしなくても
良いみたいになってるし?
っていうか、別に僕いなくてもよくない?
「リュリエス、何をボーっとしてるんだい?早くしてくれるかな?」
「あ、すいません!」
ディズ様が笑みを浮かべる。
僕にとってディズ様は、この王国内での親しい人と呼べる人であった。
確かにディズ様は僕に笑みを浮かべるし無表情になるわけでもない。
でも、魔導士が必要になるときは絶対に僕のことを呼んでくれる。
僕が魔導士に成り立ての頃に一番最初のお仕事で同伴したのがディズ様だった。
ディズ様の剣の腕は確かで、僕のサポートなんていらなかったと思うケド
戦いが終わったあとに
『キミの支援はとても戦いやすくて良いね。』
と言ってくれた。
不安で仕方なかった僕にとってその言葉はとても嬉しいものだった。
それから何度もディズ様は僕を指名してくれて
いろいろな話をした。
その中にアルフさんの話もいっぱいあったから
僕はアルフさんと初対面で会ったときに知らない人って感じがしなかった。
「さて、今日はどうしてあげようかな。」
わあ、目が本気だよ。
今日の記述は大変そうだな。
ディズ様はロジェさんのいる部屋のドアを開ける。
「やぁ、こんにちは。」
ロジェさんはニコリと笑ってこちらを見た。
昨日、腕を治す時にロジェさんを見たケド
相変わらず黒包帯ぐるぐる。
切れた腕は僕がちゃんと治したケドまだ痛みはあるはずなのに
全然痛みを感じていないようだった。
ちらりとディズ様のことを見ると顔が引きつっていた。
もちろん、怒りで。
「そんなにケロッとしてるんだったらもっと斬っておくんだった。」
珍しく愛想笑いも真顔でもなく怒りの表情をしている。
少し、恐怖を感じた。
「ご遠慮しとく、言っとくけど結構痛いんだぜ?」
全然、痛そうじゃないけどね!!!
ロジェさんがふっと微笑・・・のようなものを浮かべる。
いや、包帯があると全然わかんないんだよね。
「じゃ、もっと痛くなる?」
ディズ様がバッと腰の鞘から剣を抜く。
そしてロジェの首元に突き立てる。
「別に斬りたいなら斬れば?俺、何も言う気ねぇから。」
簡単にそういうロジェにディズ様はチッと舌打ちをした。
「従順な子犬だね。ご主人様のために命を捨てるって?」
「ははッ、誰がご主人様だよ。
あいつはただの雇い主だ。俺のご主人様でも何でもねぇよ。」
僕の見たなかで、この暗殺者は一番変な人な気がする。
「どうでもいいから、早くキミの雇い主のこと言ってくれる?」
「今の話聞いて無かったの?俺は言う気ないって。」
二人は表情は全く違うがにらみ合っていた。
僕は、二人の会話の記録を一生懸命書くケド
この場から去りたくて仕方が無かった。
「・・・僕のアルを殺そうとしたんだ。
とりあえず、死ぬことだけはちゃんと覚悟しといてね。」
ディズ様はニコッといつもの愛想笑いを浮かべた。
「俺は死ぬことを恐怖に思ったことはねぇし
死ぬことが一番重い刑だとも思わねぇ。」
ロジェさんはギヒッと笑う。
完全に見下したような言い方だった。
僕はディズ様の怒りが更に増したように見えた。
なぜかって?笑みがもっとにこやかになったからだよ。
「キミを罰するのは僕じゃない。
地獄の閻魔様さ。キミはどうせ地獄に落ちるのだから。
そこできっと閻魔様がとても辛い刑を処してくれるだろうね?」
ロジェさんが一瞬眉をぴくりと動かす。
「そしたらあんたも地獄行き決定だな。
大好きな時期魔王ともお別れだ。」
ひひっと笑ってディズ様を嘲笑うように言う。
「僕はアルのそばを離れたりなんかしない。
閻魔様を殺して、僕は天国に行ってやるさ。」
その言葉を聴いた瞬間、ロジェさんは大笑いを始めた。
そして、手錠を外しどこから出したのか・・・短剣を手にした。
そりゃ、場数踏んでたはず・・・手錠を取れることを想定すべきだった。
一瞬間をおいて、ロジェさんは一つの言葉を口にする。
「まぁ、そん時まで地獄で待っててやるさ。」
ロジェさんが短剣を振り上げる。
攻撃してくるかと思ったが、その短剣はロジェさんの腹に突き刺さった。
ロジェさんは、横に裂き勢い良く引き抜いた。
ごふっと思い切り血を吐いて、バタッと倒れる。
致命傷だ。
その時、バンッと扉が開いた。
「た、たのもぉおおおおおお・・・お?」
そこにいたのは、アルフさんだった。
少し首を傾けてからロジェさんのことを見て目を丸くする。
「ア、アル!?」
「アルフさんっ!?」
ディズ様と僕が驚きの声をあげる。
アルフさんは、ロジェ様の近くに急いで駆け寄る。
「リュリエス!この人のこと治せる!?」
「で、でも・・・」
聞かれた問いに一瞬ためらう。
ロジェさんは死に値するものだ、助ける義理などはない。
「良いから治す!それでも天才魔導士かっ!!!」
「はい・・・」
怒られて、渋々治療を始める。
妹の友人を殺そうとした人なんか助けたくないんだけどなぁ・・・
もーやだ!
「アルッ!なんでそいつのこと助けるの!?
っていうか、何でここにいるの!?」
「この人が死んだら大事なことが聞けなくなるし
聞きたいことがあったから来たの。それだけだよ。」
ディズ様の声にアルフさんは冷静に答える。
確かに、きっと聞きたいことはあるだろうと思った。
ロジェさんに聴くのが正直一番確実ではあった。
「でも、アルのこと殺そうとしたんだよ?」
「知ってる。」
「じゃあ、そんなやつ死んだって・・・」
アルフさんはディズ様の頬をぐにっとつねった。
「い、いひゃいよ。」
「あんたに、人の死を決める権利など無い。」
アルフさんが手を放すと、ディズ様は痛そうに顔を歪めて頬をさする。
なんと珍しい光景だろう。
っていうか、ここでそんなことしないで欲しいんだけどなぁ・・・
イチャイチャされても困るんだよなー・・・
しかも治療中なのに。
「アル・・・でも・・・アルがまた傷ついたらどうしようって・・・。
僕、あの時わかってたのに、アルがいるってわかってたのに
きっと危ないめに会うって予測してたのに、助けられなかったんだ。」
ディズ様がきゅっとアルフさんのことを抱きしめる。
「ごめん、ごめん。
これからは、僕がちゃんと守るから!」
「うん、ありがと。」
「だから、だから・・・。」
ディズ様がアルフさんから離れてジッとこっちを見てくる。
「あいつのことは諦めてくれない?」
「それとこれとは、話が別です。」
「∑(゜◇゜;)」
なんか、ホントにディズ様がディズ様じゃないみたいだ。
いつもはもっと、怖くて、迫力があって・・・。
アルフさんは、手をディズ様の頭へ伸ばす。
そして、よしよしと頭をなでる。
ディズ様が不思議そうな顔をしてアルフさんを見る。
アルフさんは、ニッコリと笑いかける。
僕はとても驚いた。
アルフさんも凄く驚いてたけど。
ディズ様が・・・笑った!?
愛想笑いじゃなかったんだ。
心の底からの笑みだった。
アルフさんが頬を赤く染める。
もぉ、ホントやだ。
でも、ディズ様の笑みを見れたのはホントに嬉しいけどね。
滅多に・・・いや、多分もう一生見れないもん。
そう思っているうちに治療が終わった。
「えっと・・・いい雰囲気なところで悪いんだけど・・・
一応処置は終わったよ。」
僕が申し訳なさそうに二人を見ると
ディズ様はにらみ、アルフさんは安堵の表情を浮かべた。
「空いた部屋を一つ貸してくれるとありがたいんだけど・・・。」
そう言うと、尋問部屋から少し離れたところにある部屋を
一つ貸してくれた。
そこで僕は最終の治療を行う。
「ありがとう、リュリエス。」
アルフさんが、ニコッと笑って僕に言う。
「ううん、こんなの楽勝だもん!
アルフさん、僕はこれから魔導所に報告に行かなくちゃだから
ロジェさんのこと、見ててくれるかな?」
そう言うとアルフさんはコクリと頷いた。
それじゃあ、と僕はその場を去る。
ロジェさんと二人にするのは結構心配だけど・・・まぁ大丈夫でしょ。
あぁ、今日は悪い日だけど・・・良い日だったよなぁ・・・。
リュリエス視点でした!
他キャラ視点はあと一つで終わります!
なかなか案が浮かばなくてかけませんでした。
更新遅れちゃってごめんなさい(´・ω・`)
次は、もっと早く更新できるように頑張ります!