騎士隊長の考え sideジェイド
アルフがいなくなった時
ジェイドは何を考えて何をしていたのか。
煙が消えた時には、アルフはいなくなっていた。
その代わりに何人かの暗殺者らしき者達がいた。
煙があったときの気配からして5人というところ。
しかし、目の前には3人倒れているだけ。
あと2人はどこにいった?
「ちくしょー・・・俺がいながら・・・。」
騎士隊長として、しっかりと役目を果たすことが出来なかった。
アルフを守るべきだったのに。
アルフがちゃんと逃げられたことが幸いだが・・・。
しかし、なぜアルフを狙ったのか・・・。
次期魔王という地位を狙ったのならばここで狙うのは場違いだ。
騎士達が大勢いるこの場所では・・・。
戦闘となると、確かに魔力の高い将軍魔族がいる魔王城のが大変かもしれないが
ここの方がよっぽどリスクは高くなる。
何かがおかしい。
次期魔王という地位で狙ったわけではなく・・・他になにか思惑があるような・・・。
「う、うぅ・・・。」
暗殺者の一人がうめきをあげながら起き上がる。
その直後、すぐに俺の隊の騎士達が来た。
部下達は倒れている二人の暗殺者の身柄を確保する。
起き上がった暗殺者は多くの騎士達に回れ右をしてこちらに走ってくる。
お?やるのか?
「ど、どけぇええええええっ!」
暗殺者の男は刃物をもってものすごい速さで迫ってくる。
・・・暗殺者なのにそこまで荒ぶってもいいのか?
今の叫びは、どう考えても暗殺者のものじゃないぞ?
そんなことを考えているうちにすぐそこまで迫っていた。
「はぁ・・・おとなしく・・・」
俺は、腰の剣をすっと抜く。
そして、構える。
「していろっ!」
スパッと暗殺者の足や腕の数箇所を一気に切り裂く。
暗殺者は声をあげ、そして地面に倒れる。
仮にも世界五大剣士「迅速の風剣」の異名を持っているんだ。
そう簡単に通り抜けられちゃ・・・な。
部下達は、倒れた暗殺者を捕らえる。
流石、仕事が早いな。
それにしても・・・もう2人はどこにいる?
「俺は、もう2人を探してくる。ここは頼んだぞ?」
俺のその言葉に部下達は一斉に「はい!」と返事をした。
良く出来た部下だ、本当に。
だがしかし、嫌な予感しかしない。
城のなかを見て回る。
アルフの姿もない。
無事ならいいのだが・・・。
「・・・や、め・・・」
突然、声が聞こえた。
声の方へかけていく。
「ぐぁあああああっ!」
一足遅かったかもしれないと、その叫びを聞いたときに思った。
角を曲がると目の前には斬られてぐたりとした人と
片腕を斬られた人がいた。
鍛錬所にいなかった二人だと、服装を見てわかった。
全身真っ黒な感じの服装。
黒だけが印象に残る。
出血量などからみて、斬られた人は既に息を引き取る寸前。
手遅れだ。
今さっきの叫びがぐたりとした人だろう。
がくんと首が力を無くす。
今、死んだ。
ちょうど、今だ。
「君もこうなりたくないなら、さっさと言いなよ。」
斬った人は、ディズだった。
今までに聞いたことの無いくらいに低い声。
キレてるなんてもんじゃない。
その次元を既に超えてた。
「はは、俺は残念ながら秘密は守る主義でね。
他の奴に聞いたって一緒だよ?」
男は、フンッと笑った。
「ロジェ君?言った方が楽になれると思うんだ。」
「言ったらすぐ殺すんだろ?だったら、言い損だよ。」
ロジェ、それが暗殺者の名前らしかった。
なぜディズが暗殺者の名前を知っているのか。
とても疑問だ。
だが、今はソレどころじゃない!
「じゃあ、今すぐ死んじゃえば?」
ディズは、スッと静かに剣を振り上げる。
俺は、ディズの腕をぐっと握り振り下げようとする手を止める。
「ディズ!こいつには聞くべきことがたくさんある!
殺したい気持ちを抑えるんだ!」
「くっ・・・止めないでよ、ジェイド。
こいつは、僕のアルを傷つけようとした、殺そうとしたんだよ?」
ディズがギッと俺をにらむ。
一瞬、その視線にビクッとするが、頑張ってこらえる。
「良いか?ディズ。こいつらは、誰かに雇われたんだぞ!
こいつらじゃない、雇った奴が殺したいと思ったんだ。
そいつも見つけないといけないと思わないか?話を聞いた後に殺せばいいと思わないか?」
必死になだめる。
雇った奴の名前を言う人は少ない。
だが、言う奴だっていう。
だったら、ここで殺すのはとてももったいない。
ディズが、剣を持った手を静かに下ろす。
「そーだね・・・。君のご主人様を殺すべきかもね。僕の、この、手で。
覚悟しててね?僕の尋問は、きっついからね?」
ディズがいつものように愛想笑いを戻す。
そうだ、それでいい。
ここで殺すべきじゃないとわかってくれて良かった・・・。
「お前を腕を直す義理はない。
だが死なれては困るから治療をする。来い。」
暗殺者---ロジェの腕に魔力を無くす手錠をはめ
武器がないかを念入りに調べ、それから肩を抱える。
「別に、この腕じゃ逃げたって死んじゃうんだから抵抗はしないよ。
それにしても、君の上司はとーっても変な人だね。ご愁傷様、だよ。」
ロジェがフフッと笑って言う。
片腕を斬られて相当痛みがあるハズなのに、よくそこまで口が回る。
敵ながら、あっぱれというところか。
だがしかし・・・
「余計なお世話だよ。」
ここまでが俺の仕事だ。
ここからは俺ではなくディズと魔導士の仕事だ。
「そうだ!アルフを探さなくちゃ!」
そう俺が叫ぶと
「大丈夫、アルはもう魔王城に帰ったから。」
とディズが冷静に答えた。
何で、それを知っているんだろうと思った。
あの状況ならアルフに会う時間なんてきっと無かっただろうに。
ディズが魔王城に転移できるように誘導したのだろうか?
まぁ、よくわからないが、無事ならよかった。
それにしても、結婚式はどうしようか?
基本的に結婚式やその後の不安が大きすぎて
そのことしか頭に無いジェイドです。
まだまだ他キャラ視点は続きます。
大切な時期が終わったので、更新ペースが少し早くなると思います。