プロローグ
「ねぇ、アル?お妃様になる気ってない?」
「拒否させてもらうわ」
イケメンな王子様と結婚して幸せに暮らす・・・。
そういう展開をみなさん期待しているんでしょうケド、あえて先に言いましょう。
私、ヒロインではないんだが!!!
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これは私が7歳の頃の話である。
「いいかい?アルフ。
次期魔王なんてこと考えずに女の子として過ごすことだって大切なんだぞ?」
そうお父様に言われ私アルフこと『アルフィニ・セルシュート』は、むぷっと頬をふくらませた。
私は、いわゆる転生っていうものをした。
そしてこの世界は私が最初で最後にやった乙女ゲームの世界である。
そして、私のキャラは主人公のライバルである。
ある特定の人物だけに働くライバルである。
誰かは思い出せない。なぜかというと、私はまだこれだけのことしか思い出していないからである。
私のお父様の『サタン・セルシュート』はその名の通り魔王様で
その娘で長女であった私は魔王の娘であり次期魔王でもあった。
生まれた頃から次期魔王として育てられていた私はその言葉に凄くイライラした。
何も男の子が生まれたからと言って今更露骨に次期魔王から外そうとしなくたっていいのに・・・。
「姉様っ!」
「ね、ねぇしゃま・・・」
私には妹と弟がいる。
5歳になる、とても元気でやんちゃな可愛い妹の『エルミナ・セルシュート』と
3歳になる、まだ舌たらずだが笑顔が愛らしい弟の『ルーザ・セルシュート』だ。
エルミナは次期魔王のことなんてあまり関係ないのでいつも自由に暮らしているが
ルーザは今年から勉強をはじめた。
きっと私は「次期魔王」という肩書きだけを背負って
実際はルーザが次期魔王となるのだろう。
3年前にルーザが生まれた時は私もまだ小さかったし何も思わなかった。
でも、最近になってそのことが分かり始めて、私って何なのだろうって思ったりもした。
何度もルーザを恨めしく思ったこともある。
でも、ルーザを恨んだってどうにもならないのだ。
「あのね、クッキーもらったんだぁ」
エルミナが私にクッキーをみせる。
「あの・・・ねぇしゃまにもあげぅ!」
ルーザが愛らしい笑顔を浮かべ私にクッキーを差し出す。
「ありがとう、二人とも」
なんだか、さっきのお父様の言葉とかがすっかりどうでもよくなってきて
ルーザが次期魔王になりやすいように自分はサポートするべきではないかと思った。
(精神年齢はすでにオバサンなので考えがませていてもおかしくはない)
「そういえば、今日はラスターナ王国から王と王子が来るんだ。
アルフとは歳が近いみたいだし、あってみたらどうだい?」
魔王といえばきっと勇者に倒される存在だと思うだろう。
しかし、それはもう何百年も前のことなのである。
今は人と魔族が仲良くし、お互いに助け合うようになっている。
魔物は魔族の配下ではないので魔物が消滅したというわけでは一切ない。
「ほら、母さんのお花を代えに行くついでにさ」
私の母は、つい去年に亡くなった。
元々体が丈夫なほうではなくて、ルーザを産んで数ヵ月後に体調が更に悪化して
母様は頑張って療養していたがその努力も空しく去年帰らぬ人となってしまったのだ。
「・・・はい」
何それ、めんどくさいと一瞬思ったけれど
王子様に挨拶もなしでいるわけにもいかないので
お花代えた後にでも行くか・・・と渋々行くことを認めた。
「お母様、私がルーザを立派な魔王にしてみせるから。
心配しないでね。」
少し枯れかけた花を新しいのに代えて私はそう呟いた。
そして墓から続いた中庭にでる。
「ん・・・どなただ?」
チョコレートを齧りながらジーッと噴水にいる鳥を見つめる不思議な少年がいた。
初めて見る人だ。
見た目からして2歳上というところだろうか。
綺麗な金髪に薄い青色の瞳。
それに端正な顔立ちをしていてこれは将来有望だろう。
彼は私に気づいたのか私のことを見てニコッと笑ってみせた。
「あなた、だぁれ?」
私は怪しい人に聴くような調子で言った。
「僕、そんな怪しい人じゃないし。
っていうか人に名前を聴くときは自分から名乗るのが常識じゃない?」
彼は、笑みを崩さずに確かにと思うことを言った。
「そ、そうですね・・・。私は魔王の娘であり次期魔王のアルフィニ・セルシュートです。どうぞ、アルフとお呼びください。」
「アルフちゃん、ね。僕は、ラスターナ王国の第一王子であるディゼル・ラスターナっていうんだ。僕のことはディズって呼んでよ。」
「あ、あの・・・」
私は、あることがとても気に入らなかった。
ディズは、未だに笑みを1mmも崩さずにいる。
なんだかその笑顔が偽者のようで私は嫌いだ。
「私は、次期魔王です。ちゃん付けはやめてください」
次期魔王がちゃん付けなんてなんだかしまらない。
出来れば君付けとかの方が魔王っぽいのだけど・・・。
ほら、魔王ってやっぱり男って感じするじゃない?
「でも、アルフちゃんは女の子でしょ?
女の子にはちゃん付けをすべきだと僕は思うんだよね」
完璧な笑みが少し悪戯な笑みに変わった。
こいつ、確信犯ってやつだな!(使い方があっているかなど知らんっ!)
「アルフちゃんはさ、可愛いんだからさ、アルフちゃんのが
僕、良いと思うんだよねっ!」
少しずつ私の目がうるうるとして、体も怒りでぷるぷると震えていく。
それから数分わざとらしい「アルフちゃん」が続いて
私はボロボロと涙をこぼし始めた。
「何泣いてるの?そんなにちゃん付けが嫌なの?」
私はひっくとしゃくりをあげながらコクコクと頷く。
「ふーん・・・別に泣くこと無いのに」
彼は笑みをスッと消して無表情になる。
これが彼の素の表情なのかと少し納得してしまう。
「でも、皆と一緒ってのはな・・・じゃあ、アルでどう?それでいいでしょ?」
「うん、アルでいぃー・・・」
冷めた瞳が私を貫く。
この人、なんかやだっていうのが正直な感想だった。
ディズはまたあの偽者の笑みを浮かべチョコレートを齧る。
それをごくんと飲み込んだ後に
「今度は僕のお家においで?いっぱい遊んであげるから」
と言った。
それは"お誘い"ではなく"命令"に近いような気がした。
僕の家に来い。そして一緒に遊べ、と。
これが彼と私の最初の出会いである。
そしてディズが私がライバルポジションとなる特定の人物であるということを
私はまだ知らないのである。
プロローグなのに長くてごめんなさい(´・ω・`)