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第13話:謎の教団

 夜の教会の敷地は、踏み固められた道が奥へと続いていた。その先には教会の建物の陰が黒く浮かんでる。俺達はその道の脇に立ち並ぶ木に寄りかかっていた。辺りは暗く小さな星までよく見えるが、それでも前に居た村の方がもっと見えた気がする。ジュレルディと2人でその星を眺め語らう。彼女の故郷の事、これからの事なんかだ。


 だが明日は魔物退治がある。もうすぐ冬で日が沈むのが早く、まだ深夜という訳じゃないが、あまり夜更かしをする訳にもいかない。


「そろそろ戻るか」

 ジュレルディも同じように思ったのか、そう言い木の幹から身体を起した。

「そうですね」

 と俺も後に続く。


 だが、宿に向かう俺達の前から明りが近づいてくるのが見えた。渡者の俺達は夜道など月明かりだけを頼りに歩ける。明りを持っているなら、教会の関係者かなんかだろう。だが渡者として夜目が利く俺達だが、相手が持つ明りで、その姿は光に隠れ逆に見えない。


「8人か……」

 ジュレルディが小さく呟いた。彼女も見えてないはずなのにって、そうか足音を数えたのか。アルシオも渡者なんだから同じ事は出来るはずと、耳を澄ますと確かに足音が聞き分けられ数は8つだ。


 今後の為、一度じっくりとアルシオの能力を確認しないと行けないな。出来る事を出来ると知らず、それで死んでしまっては馬鹿馬鹿しい。魔物退治なんて命がけの依頼をする世界だ。大げさでもなんでもない。


 相手が8人といっても渡者でもないド素人。恐れる事は無いのだが、万一の配慮をするのがプロというもので、俺とジュレルディは道の端に寄った。向こうの集団も俺達の存在に気付いたのか、反対側に寄る。


 お互い警戒しながら近づいていく。向こうは全員女性だった。しかも、みながジュレルディに匹敵するほどのナイススタイルだ。


 教会の修道女らしくヴェールを頭に纏い、胸の辺りに切れ目があり大きな乳房の殆どが見えている。ウエストはベルトで絞っているのか細く括れ、足の部分はスリットが入って長く細い足がむき出しになり、いかにも男を誘う格好だ。って、いやいや。何処が修道女だ!


「ヴェーラ教か……」

 ジュレルディが目を見開き足を止めた。


 ヴェーラ教って確か……。俺が入信したんじゃないかと、ジュレルディが疑った教団か。確かその教祖は俺と同じで「何か」によって前世をやり直した奴っぽくて、美意識もこっちの世界と違うみたいだ。そういえばこの修道女達が艶かしく見えるのも俺だからであって、この世界の人間が見たら……もしかして笑い者?


 まあ関わりにならない方が良いかと、立ち止まったジュレルディの肩を引きさらに端に寄った。


 近づく彼女達の剥き出しの足が明りに照らされ白くぬめり、艶かしさを増す。つい目が行ってしまうが意識して逸らし、思わずジュレルディの肩を抱く手に力が入った。


 瞬間、先頭を歩く修道女の顔が俺に向いた。その視線と目が合った瞬間、背筋に冷たいものが奔った。女はにやりと笑っていた。見つけた。女の目はそう言っていた。肉食獣が獲物を見つけた時の獰猛な笑いではない。まるで化生の物が、とりつく相手を捜しあてた。そんな笑みだ。だがそれも、幻かのように一瞬で消えうせた。


「こんばんは。私どもの教会に何が御用ですか?」

 そう問いかける笑顔も、優しげでいかにも修道女というふうだ。


「いえ、ちょっと道に迷って敷地に入り込んでしまったようです。すぐに出て行きます」

 何かを警戒しているのか、ジュレルディの表情が硬い。


「よくある事です。お気になさらず。それより、御二方はご交際なさっているのですか?」

「あ。いっいえ、その……」


 人前では毅然とする態度を崩さないジュレルディだが、突然の予想外の質問に戸惑い、俺に視線を向けてくる。普段の彼女ならそんなプライベートな問いなど無視しそうなものだが、ジュレルディ自身、はっきりして欲しい、そう目が訴えている。


 優佳の事はあるが、アルシオに取って彼女は大切な人のはずだ。いや、それは頭目としてだったか。だが考え込む暇は無い。答えず無言で彼女の肩をさらに引き寄せた。ちょっとずるいかも知れないが、頭に何も浮かばず無意識の行動だった。


 それでも修道女は、俺達が交際しているんだと受け止めたようで微笑む。そして視線を俺に向けてくる。

「一度教会にいらして下さい。きっと私たちの教えに、ご理解頂けると思います。あなた様のお名前をお聞かせ頂けませんか?」

「アルシオって言いますけど」


「アルシオ様ですか。お待ちしております」

 そう言って頭を下げたが、すると切れ目のある衣装の胸の辺りがさらに広がり、乳房の殆どが見え、つい視線が行ってしまう。女は顔を上げると、俺の視線を感じていたのか、修道女らしからぬ、艶かしい笑みを浮べた。見たいならもっと見ていいのですよ。と誘っているようにも見える。


「ええ。また今度」

 教会に行く気などまったく無いが、すぐに立ち去りたかったのでそう答えた。修道女はまた微笑み、身を翻しす。その時スリットから見える足が大きくはだけ、前を通り過ぎる。また視線が行ってしまい、横目で俺を見ていた修道女がまた艶かしく笑う。


 ジュレルディの肩を抱いたまま立ち尽くし、彼女達を見送った。彼女達持つ明りが遠く離れると口を開く。


「修道女らしいですけど、あの格好は何なんです?」

「ヴェーラ教の教義では彼女達こそが美しく、その美しさを誇示しているらしい。教団では教徒、ヴェールユシチイの中から、彼らにとっての美女を選りすぐり修道女としてるんだ」


「なるほど。でもジュレルディってやけにヴェーラ教に詳しいですね」

「昔、入信を誘われた事があってな。あなたなら修道女の中でもトップに立てると。その時は私もヴェーラ教について詳しくなく、そんな訳の分からないものに入れるかと断ったんだが、やはり気になって、後から色々と調べたんだ」


「そうなんですか。でもそれって……」

「それ以上は言うな」

 ジュレルディが鋭い視線で俺を睨んだ。

「すみません」


 ヴェーラ教でトップに立てるほどの美女といわれるって事は、この世界での不美人と見込まれてって事だよな。確かにジュレルディがぶちギレるのも仕方が無い。彼女がどうもヴェーラ教にいい感情をもってなさそうなのも頷ける。


 でも待てよ。さっきの修道女はジュレルディにじゃなく、俺に興味があったっぽいな。俺の何がそんなに彼女の興味を引いたんだ?

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