不良と私と決断(1)
しばらくして俺たちは豊を部屋において別の部屋へと移った。
そして待っていたのは40代後半の夫婦がいた。
とっても顔立ちが綺麗で優雅という言葉が似合うそんな夫婦。
「お久しぶりです、恵美子小母様、隆吾小父様」
「お久しぶりね、澪ちゃん。ますますお母様に似ていらしゃって嬉しいわ。
小母さん、あんな不届き者に似ているところが見えなくて喜んでいるわ」
「そうだな。あの恥さらしに似なくてよかったよかった」
・・・・話が見えないんだけれど。
まったく何を指しているのか分からない俺と和真はいつの間にか座ってしまった澪のせいで座るタイミングを逃してしまった。
というか・・・この夫婦どっかで見たことあるかも。
「すみませんね、こんな不届き者で」
この場にいる人ではない男の声が聞こえた。
振り返ってみるととても若い男性。
そして、雰囲気が・・・・
「お父さんお久しぶり」
澪に似ている。
「ただいま、澪」
「はじめまして、というべきかな。
元当主である栄治です。
君たちには・・・特に庄吾くんかな?君には一番迷惑をかけてしまった」
「いえ、とんでもないです。
この事態も何年前から予測できていたことですからむしろ感謝したいぐらいです。
もし野澤家の人たちが介入してくれなかったらもっと酷い事態を招いていたと思います」
「それからもしあの親元にいたら俺たちも腐っていたと思います。
それを救っていただた上、しかもこんな待遇まで用意していただきありがとうございます」
二人そろって現当主で澪の父親やその周りの人たちに頭を下げる。
いつだってそうだ。
この人たちに助けられて過ごしている。
いつか、いや絶対恩返しをする。
たぶんこの思いは隣にいるやつも同じ。
「ずいぶん根のいい子達をいただきましたね。
ちょっといたたまれない気持ちだわ」
「それにしても庄吾君は澪ちゃんの表面上は婚約者だったんだろう?
その辺の情は言いのかい?
といってもこれは最後の確認に近いけれど」
最後の確認?
どういうことだ?
「はい、たとえ情があったとしても気持ちには変わりません。
当主であっても例外は許されていないのはご存知のはずですが」
「そう・・・」
澪のその言葉の決意に鳥肌が立った。
寒いのだ。恐怖という寒さが襲っている。
嫌な予感がする。
「すみません、どういうことか説明していただけますか?」
冷たく凍って動けない俺に代わって聞いた和真。
その言葉に澪の表情が一瞬崩れたのはなぜだろう?
「なんだ説明しておらんかったのか。
血縁は日本の法律上は三等親までと決められておるがこの家だけは7等親までと代々決まっておるんだ。
もちろん当主だからとか養子だからとかの例外もなし。
ちょうど私たちの家系は6等親。
ここで養子縁組をすると婚約は不可になってしまうんだ。
それで今この場が最後の確認って言うわけだ」
目の前が真っ暗になった。
俺は二つに一つの選択を迫られていた。
愛を取るか、将来を取るか。