私と不良の弟と
「きれいですね」
「春になれば満開の桜があそこで咲くんですよ」
「それは楽しそうですね」
まあ予想していた通り庄吾の母親と弟君が出てきて一通り世間話をした後『庭を案内するように』と言って弟君に自分の家の豪華さを説明するようにして現在に至る。
そんでもってつまらない。
はぁ、堅苦しいの苦手・・・・・
庄吾の母親も母親で中身がないと言うかうわべだけど言うか・・・・・
この家全体が嫌いな雰囲気で包まれている。
多分庄吾のことを知らないで本当に紙の上の妻になってここにきてもそう思うと思う。
「お楽しみになられましたか」
「ええ、楽しかったわ」
ふふっと作り笑いをすれば何か戦略的な・・・何かを考えているような目で見ていた。
なんかこの弟変なこと考えている。
「そうそう、実はですねあなたにいっておかなければならないことがあるんですよ」
「なんですか」
「―――――――――――――になったんですよ。もちろん兄も知ってますよ」
「えっ?」
「ただいま」
「お帰り」
慣れてしまった存在。これからも隣に居るという前提の存在。
だから拒むことは出来なかった。
お婆様やお爺様が居なくなってしまったら本当に私の居場所がなくなってしまうことは分かってたから。
嘘でも契約上だろうと誰かが居て欲しいと思っていた。
でもそんな弱音、誰にもいえなくて。隠し通さなければならなくて。
本当は、本当は寂しかったんだ。
お母様が死んで、お父様は現社長として忙しくて、お婆様やお爺様は私が一人になっても生きてけるようにしてくれたけれど私の望んでいたものはくれなかった。
ただ傍に居て欲しかった。
でもそんな私に一筋の光が差した。
霧沢庄吾。
庄吾は私が望んでいたことをしてくれた。受け止めてくれた。
だから排除しようなんて思わなかった。
でも庄吾は違ったみたいだ。
庄吾にとって私は本当にただの紙の上の婚約者だったみたいだ。
「澪、どうかしたか?」
「ううん。今晩、グラタン食べたいんだけど庄吾は?」
「いいな、俺マカロニグラタン好きなんだ」
「分かった、今作るね」
庄吾がそう望むのなら私は・・・・・・・






