不良と愉快な仲間達(6)
俺はこの世で馬鹿な人間かもしれない。
知ってたけど。
でも、女と男を間違えるなんて最低だ。
あの後俺は放心状態に陥った。
でもどこかで冷静な俺がいたから完璧に放心状態だったわけではない。
あのカップルが気を使って慰めてくれたことも分かっている。
あの時の俺があの女のことを好きという発言の意味も分かった。
だが、本気でお前紛らわしい。
時田悠理。
名前も男っぽいこいつは正真正銘の女だった。
一応去年までは髪は長かったらしい。
それをばっさり切ったとたん髪が伸びるのが遅くなったらしい。
ついでに服は上の兄貴達のお下がりらしい。
たまに器用な2番目の兄が作った服を送ってくるらしいが着る気はないらしい。
そして俺はもちろん悠理に謝った。
間違えていたこととたたいたことを。
まぁだましてたからっということで許しをもらえたが。
問題はあの女だ。
俺が謝ったと言って部屋に入れさせてくれるだろうか?
いや、ないだろう。
でも荷物は部屋にある。
あけるかあけまいか・・・・・・・・・
ドアノブにかけたとたんガッチャっと開いた。
開いた?!
ドンドン
音を忍ばせてはいるつもりだったがそんなの関係ない。
あの女意外に馬鹿だ。
リビングにつながる扉を開けると叫んだ。
「おい!!!」
案の定女は夕食の準備をしていたらしい。
「な、なに?」
「なんでドアに鍵がかかってないんだよ。
お前、誰かが入ってきた時どう対処するつもりなんだよ。
今の時間帯は人が起きているからいいが深夜とかに入られたらひとたまりもねぇぞ。
お前が思ってる以上に男の力は強いし恐怖で声が出ないこともあるんだからな」
「えっと、まずお帰り」
・・・・・・・だめだ、こりゃ。
「それからこの学校で私を襲おうとする人間もいないし、庄吾が入ってこれないと思って」
自分で鏡見ろ、鏡。
その容姿のどこがブスなんだ。その辺の女よりも倍以上綺麗だぞ。
・・・・・・庄吾って。
「あ、結婚するのに霧崎君じゃおかしいし、どうせならって思って呼び捨てにしてみたけど嫌だった?」
「嫌というか・・・・・・・・」
嫌われてるから名前すら呼ばないかと思ってた。
「あ、私のことはどう呼んだってかまわないから」
「いや、そういうわけには」
「ぎゃあぎゃあ文句いうかもしれないけど悠理にも言っとくし」
「だから」
「でもその前にご飯が冷めちゃうや。早く食べようか」
ああ、もう。人の話を聞け!!
「澪!」
「ん?何」
この時初めて彼女の名を呼んだ。
この時俺は想像もしていなかっただろう。
ただ漠然と生きて生きた俺がたった一つのものを守りたいと思うなんて。
過去をそむけ続けてきた俺が向き合う日が来るなんて。