2/72
見合い(1)
私は今となってはだた野澤家を繁栄させるための駒でしかない。
それはいつも刻んでいる悪魔の言葉。
「澪さん」
「お久しぶりです、お母様」
「早めにいらしてたのね、その心構えいいことだわ」
そんなこと思ってないくせに。
心の中ではなんでこんなやつのために時間を割かなければならないのだ、そう思ってるくせに。
「ありがとうございます」
「こちらは霧崎紅葉さん、そして若葉さん。
あなたの婚約者の霧崎庄吾さんのご両親よ」
相手はショウゴっていうのか。
まぁ、忘れるけど。
「はじめまして、野澤澪です」
いつも使っている愛想笑いをする。自慢ではないがこの笑顔が愛想笑いだということに気づいたのは今のところ一人だけだ。
まぁ、彼女自身、この笑顔が機械的で好きではないと言っているだけだが。
こうして私は見合いと言う戦場に向かった。