天才と不良(3)
ゆ、悠理が抱きついた。
今私の中にあるのはそのことだけだ。
そもそもこの子は甘えることがない。
というか甘え方を知らない。
だから他人と一歩後ろに居ることが多い悠理が・・・・・・
か、可愛すぎなんですけど!!!!!!!!!!
今これ以上ない幸せに私は嬉しかった。
でも幸せは続かなくて・・・・・・・・
バッシン!!!!
鈍い音が響いた。
「いっつ」
「っ」
そして鈍い痛みが襲った。
といってもそこまで痛くない。
だが一番痛いのは悠理だ。
もちろん犯人は・・・・・・・・・
「悠理大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「そう、よかった。で、何で叩いたの?」
「別に」
「別にで済まされる問題じゃないの」
「どうでもいいだろ」
そうどうでも良さそうに答える婚約者。
せっかくの幸せ壊しあがって・・・・・・・・
「帰ります」
しばらくの険悪の中動いたのは被害者の悠理だった。
「えっ?別に悠理は帰らなくても」
「いえ、お邪魔しました」
そういって玄関に向かう。彼女を引き止めるようなことはないからここで私も何も言わないでおく。
ただお見送りはする。
今回の不祥事はあいつのせいだけど婚約者と言う立場になった以上私にも責任があることになるからだ。
無言で歩く廊下ではため息が漏れそうだ。
「先輩お見送りありがとうございます」
「ううん。ごめんね、悠理。痛かったでしょう?」
「このぐらい平気です」
「本当?腫れてきたらすぐに保健室行きなよ?」
「分かりました」
と言いつつも多少の痛みは気にしない子だから明日見てやばかったら引きずっていこう。
そう、心に留めておく。
「先輩、あの人面白いですね」
聞き流していた悠理の言葉の真意も聞かず私は自分の世界に入っていた。