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吸血鬼が憩える保健室  作者: 坂持


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夢で会議

 やはり昼までもたなかった私は――いや、もったな。現在昼休み、しかし昼食を食べる元気の無い私は、佳に連れられて保健室へとやってきていた。


 自分も昼食を食べずに、私を保健室へと連れてきてくれる。なんて良い人なんだろう……!


「海幻ちゃーん!」

「うぅ……失礼します……」

「こんにちはぁ。わぁ、佳ちゃんになっちゃん⁉」


 目を丸くしている不知火先生に会釈する。驚くのも無理は無いよね、だって昨日の今日だもん。


「なっちゃんまたしんどそうだから休ませてほしー!」

「いや、ほんとすみません、体質なもんで……」


 さすがに吸血鬼の血が云々は言わないけど、嘘では無い。こういう体質なのだ。


「それは大変だねぇ。うん、遠慮せずに休んでいってねぇ」

「ありがとうございます……」

「なっちゃんだいじょーぶ? ほら、ゆっくり」


 佳の優しさが身にしみる……でも、そのキラキラが私を蝕む……。なんなんだよこの体質‼


「うえぁー……大丈夫……」

「全然だいじょーぶな顔してないよ⁉ 海幻ちゃん!」

「なっちゃん⁉ ええっと……まずはゆっくりぃ、深呼吸。大丈夫?」


 なんとか先生の声を聞いて深呼吸を繰り返す。


 そして体温計を渡され、待つこと十数秒。


「熱はぁ、ないみたいだねぇ」

「なっちゃんだいじょーぶなのかなぁ……」

「うーん、眠っているから大丈夫だと思うんだけどねぇ、心配だよねぇ」


 辛うじて聞こえたのはそこまでだった。


                 △


 カシャン、となにかの音が響き、周囲を明るいというか眩しい照明が照らす。


 ちなみにその照明は私も照らしていた。


 一体ここはどこだと、周囲を見渡してみる。


 なんかそれっぽい会議場で、長机がロの字に並んでいる。その長机には椅子が一脚ずつ、私のもの含めて四セット。


 徐々に光に目が慣れ、見えてきたのはなんと私。


「なんで私が四人いるの?」


 驚くでも呆れるでもなく、純粋な疑問を口にする。


「うわっ、ほんとだ」

「なんで?」

「夢?」


 おい、なんで分からないんだよ。


 この流れって私だけがなにも知らないんじゃないの?


 でもここで投げだしては駄目だ、思考を止めるべきではない。答え合わせはできないだろうが、仮説は立てることができる。


 多分、私が言っていた通りここは夢で、あの三人は私から分裂でもしたんだろう。そもそも夢は私のものなんだし、私が分裂したと考えるのは自然か。


「「なるほど、そういうことか」」


 なにがなるほどだ。私ってこんなに間抜けなの?


 超賢い私が四等分されても賢い思うんだけど? いや、この考え自体が間抜けだな……、ん? いやいや、そこに気づけているんだから間抜けではない……?


 ああもう分からない、正解はそんなこと考えるなってこと!


 私はもう強引に進めることにした。


「で! ここは夢の中ってことでいいよね? 異論は認めない!」


 強引な手段に頷いてくれる私。流石だ。


 すると私から見て右に座っている私が手を挙げた。


「はい、右の私――あっ、口答えしないでね」


 その言葉でなにか言い返そうとしていた様子の右の私は押し黙る。どうせあれだ、海外SFでありがちな私から見たら君は左の私云々とかそういうことを言おうとしてたんだ。


「――まあいいけど。この並びってなにかを話し合わないといけないってことだよね?」


 そこは流石私、ちゃんと理解してまともな質問を始める。


 それに答えたのは私から見て左の私。


「そういうことだろうね。なにを話し合えばいいのか、一つだけ思い浮かぶけど、みんな同じだよね?」


 それに正面の私が返す。


「うん。話し合いたいことはいくつかあるけど、今話し合うべき内容は一つだけだね」


 それに私も同意する。


 そして私が纏めるように言う。


「じゃあ、せーので言おうか」

「「「いやいや、なんでそんな間抜けなことしないと駄目なの?」」」

「誰が間抜けだぁぁぁぁぁぁぁ!」


 三人同時に手を振り首を振る。馬鹿にしてんのか!


 これはアレだ……起きたら疲れてるやつだ……。

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