一日の終わりは保健室
それから転校生らしい一日を過ごし(囲まれる)あれよあれよと本日の授業が終わる。
終礼をなんとか乗り越えると、前の席の佳が振り向いていた。
「だいじょーぶ⁉」
今日一日、佳にはかなり助けられた気がする。一番大きな功績は昼休みだ。
お弁当を食べようとして、やはり一緒に食べようと誘われる私。でも相手は佳だ。休み時間の度に私に話しかけてくれたおかげで、なんか多分一番仲良くなっていて、自然な流れで昼食を共にした。佳がいなければ、私は色んな人に誘われ、ご飯を食べてもその味がしなかっただろう。まあ、佳と二人きりじゃなくて、他の人とも食べたからキツイのはキツかったんだけどね。
でも佳のおかげで、クラスの人には話しかけられてもあんまりしんどくない。
私は、驚いて目を見開く佳に返す。
「え、なにが……?」
「いや、顔が‼ すっごいゲッソリしてるよ⁉」
「え? あー……うん、疲れたからかな……」
佳だけでなく、他の人も驚いている。
そんな酷い顔してるの……?
結構お互いに慣れてきたから、マシになってると思ったんだけど……。
「やっぱりてんこーって疲れるんだ⁉ どーしよ、とりあえず保健室だよね?」
「うーん……」
いや、身体は動くから大丈夫だと思うんだけど……いや、なんか身体が重たい……あれ……? 私の身体、どうした?
「なっちゃんヤバいって! 行こ! 保健室! うちが連れてくから‼」
抵抗しても無駄だろうし、そもそも抵抗する力も無い。私は大人しく佳に支えられ、保健室へと連れて行かれるのだった。
△
「せんせー! 友達がしんどそう!」
ガラッとドアを開くや否やそう言う佳。保健室は静かにしないと……でもそれを咎める元気が無い。
あと、慣れてるなあ。もしかすると結構保健室に来るのに慣れているのかもしれない。
「ん〜? 誰ぇ? 保健室は静かにしないとダメだよぉ」
保健室は全体的に白く、独特な匂いが充満している。個人的にこの匂いは嫌いじゃない
入り口は教室と同じで二つあって、私達は左側のドアから入った。その正面、左端には養護教諭用の机(書類が多い)と椅子があって、その奥には薬品棚があり、反対には簡素なベッドが三つ並んでいる。ベッドが多いな。
そしてその一番奥のベッドに、人が寝転んでいた。利用者かな?
「あれ? せんせーいないの?」
私と同じことを疑問に思ったのだろう佳が言う。するとベッドに寝転んでいる人が、ゆらりと手を挙げる。
「わたしがせんせーだよぉ」
「そーなんだ! 気づかなかった」
どうやらベッドで寝転んでいたのが養護教諭だったようだ。
「んもぅ、どうしたのぉ?」
身体を起こした先生は、どこかふわふわしていて、結構若かった。そしてスリッパを履いて私達の方へやって来た。
「わぁ、これは大変、とりあえず横になろっかぁ」
私の顔を見た途端目を丸くして、ぱたぱたと先程まで自分が寝転んでいたベッドに戻り、シーツを伸ばす。いや、他のベッドでもいいんじゃないかな……?
でも、抵抗と抗議する力の無い私は、なにもできず佳に運ばれる。
「はい、ゆっくり寝かすねぇ」
そして佳と先生二人の手によって、私の身体はベッドに寝かされた。
あっ、いい匂い……。これは間違いなく先生の匂いだ。だって私の顔を覗き込む先生から同じ匂いするもん。
でも、その核心と共に、私の意識はゆっくりと沈んでいった。




