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吸血鬼が憩える保健室  作者: 坂持


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なんで驚く? 新聞部の有難さ実感してないの? ちゃんと読みなよ

 翌日の部活はみんなですごろく作り。適当な紙の調達は佳がしてくれる。だから私は今日も保健室で待っているだけ。佳のコミュニケーション能力の高さには頭が上がらない。


「貰ってきたよー!」

「ありがとー」


 私は不知火先生から借りたマジックペンをちゃぶ台に置く。一応私も準備はしていたのだ。


「先輩遅れるらしいから、先に私らだけで形決めとく?」

「えっ、いーのかな?」

「あー、じゃあ待つ?」


 私としては、先輩が来るまで作業をして、佳の陽から身を守りたいんだけど……佳の言う通り先輩を放って作業をするのは良くないかな。


 それなら、どこをどうするかを話し合うとかなら大丈夫っぽいかな。


 とりあえず佳が貰ってきてくれた紙をちゃぶ台に広げる。


「この模造紙どこから貰えたの?」

「新聞部。いっぱい紙あったんだよ」

「壁新聞とか書いてるしね」


 確か毎月一回壁新聞を張っている。あまり行かないけど、職員室近くの掲示板の横の壁。今月の内容は去年の夏休み、生徒達のお出かけ先の統計を取ったもの。割と真面目な内容で、ためになる。そして不定期で配布物として配られている物もある。それが先週にあって、内容がこれからの季節に向けた熱中症対策と去年の熱中症事例を纏めたもの。かなり有用な新聞だった。


「うーん流石新聞部」

「なっちゃんが急に褒めた⁉」

「なんで驚く? 新聞部の有難さ実感してないの? ちゃんと読みなよ」

「なっちゃんが早口になってるぅ……」

「なっちゃんはぁ、ちゃぁんと読んでくれてるんだねぇ」


 その熱中症に関する新聞は、養護教諭の不知火先生も携わっている。


「ためになることを書いてくれてますからね」


 先生は私に微笑み、次は佳に向く。


「佳ちゃんもぉ、これからの時期は熱中症に気をつけないとダメだよぉ? はぁい、もう一回あげるからぁ、永海さん来るまで読むことぉ」

「読んどいた方がいいよ」

「う~ん、そこまで言うならぁ……」


 読んどいた方がいいのは間違いないし、佳がそうしていてくれると私の身の安全にも繋がる。まさに一石二鳥ってやつ。


 とりあえず、その間に私はさり気なくベッドまで移動してダメージを回復させる。先輩が来るまでの短い時間だけど、できるだけ回復させておく。


 今は佳が呆れた感じだったから無事だったけど、それでもダメージは受けている。


 できるだけ、できるだけ回復。こうして目を閉じているだけでも回復はすると思う。


 あれ、目を閉じて回復するのなら、趣味は瞑想だと言って、しょっちゅう瞑想するキャラになればいいんじゃないだろうか。今更苦しいキャラ設定だろうか? でも私は超絶美人だし、美人のゴリ押しでどうにかなるかもしれない。まあ佳はそれで誤魔化せることができるか分からないけど、他の同級生なら誤魔化すことはできるかもしれない。なんて、自分で考えていながら否定することにする。私はあまり周りのことを気にしていないというか、関心が無いというか、自分を守るのに精一杯であまり見てないけど、周りは私のことを結構見ているはず。私は見た目が良いだけじゃなくて頭も良い。それもかなり良い。


 そんなことを考えていたら欠伸が出てきた。ちょっとだけなら寝られるかなって思った直後、保健室の扉が開かれた。


「あっ先輩!」

「ごめん、遅くなって」


 私は身体を持ち上げて、和室へと戻る。


「おはよう」

「おはようございます」

「あれ、なっちゃん寝てたのー?」

「うんまあ……目を閉じてただけだけど。佳は読んだの? 新聞」

「ちょっとだけ!」

「新聞?」


 事情を知らない先輩に、とりあえず新聞部の話をする。


「私も結構読んでる、ためになるよね」

「えー先輩も読んでるんだー……。うちも読んだ方がいーのかな……?」


 佳が悩んでいる内にすごろく作りのセッティングを終える。とりあえずは鉛筆で下書き、最後はペンで書くというシンプルな手順でいこう。


「とりあえず、先輩も来たことだし始めよう」


 ぬるっと自然流れで正月遊戯部の活動が始まる。


 まずすごろくで決めるのは、マスの数だろう。


「じゃあまずは、すごろくのマスの数から決めよう」

「ん。この紙の大きさだから、マスを大きくして控えめにするか、マスを小さくして長くするかのどっちか」

「あまり長すぎるのも疲れるよねー」


 紙はだいたい一メートルともう一辺がそれより長い長方形だ。方眼があるおかげで何マス作れるか確認はしやすいかな。


 佳がスマホを使って調べてくれている。


「だいたい三十ぐらいかなー……」

「三十ね」


 三十がどれくらいかは分からないけど、多分丁度良いんだろう。


「じゃあ三十マスで、形はまあ適当にグネグネってする?」

「ん。私が下書きする」


 先輩が鉛筆を持って、とりあえず三十マスのすごろくを書いてくれる。


 紙の大きさを把握して、等間隔に丸を書いていく。そしてそれを端から端まで、紙全体を通るように道にする。


 パパっと書いてくれたにしては結構様になっている。


「おおー、丁度良いですね」

「わーすごろくだー!」

「ん。良い感じ」


 先輩も満足そうだ。


 形も申し分ないから、もうペンで清書してもらう。


 これも先輩が請け負ってくれて、太い黒いペンですごろくを確かに作り上げてくれる。


 よく定規も使わずに綺麗に線を引けるよなーっと感心しながら(私もやろうと思えばできるけど‼)私はマスになにを書くのか、そして一人何個、全部で何個書けるのか考える。


 とりあえず半分は使ってもいい気がする。十五個を三人で割ると、一人五個。これを多いとみるか少ないとみるか。十五個書いてみて、少なければまたみんなで書いていけばいいか。


 別に考えるまでもなく簡単なことだけど、そうしている内に先輩が綺麗にすごろくのマスを書いてくれた。


「できた」


 少し微笑んでいる先輩。とても可愛いと思います。


「一気にすごろくって感じー!」

「ん。あとはマスを書くだけ」

「半分は書いても大丈夫そうだし、とりあえず一人五つ書いていこう」


 私は鉛筆を佳に渡しながら考える。とりあえず私自身が一回休みたい――じゃなくて、どこまでの理不尽な指示を書いていいものか。性格上私以外の二人は常識の範疇で書くと思う。佳は女子高生っぽいことを書きそうだけど。多分尖った指示は書かないと思う。せっかく自分たちで作ったのだから、普通のすごろくじゃ書いていない、ここでだからこそ書ける指示を書きたい。


「どこでもいーの? 書くの」

「いいと思う。好きに書いちゃっても」

「面白いことを書きたい」

「やっぱオリジナルですもんねー」


 あれ? もしかして、これは私は真面目な指示を書かないと収集がつかない感じ?


 なんか佳と先輩の笑顔が邪悪なものに見えてきた。


「なんか負けたくないな……」


 けど、そうなると私もなぜか負けたくない気持ちが湧いてくる。下書きだし、地獄絵図のようなすごろくができてもいいじゃないか‼


「私も負けない」

「うちも負けないもん! これなら先輩にもなっちゃんにも勝てるかもしれないし!」


 すごろくのマス作りに勝ち負けは無いはずなのに、絶対に負けられない戦いが始まる!

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