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吸血鬼が憩える保健室  作者: 坂持


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32/33

なんやかんやで金がかかる

「ん。おはよう」


 目が覚めたのは恐らく最終下校時間近く、放課後の喧騒が引いていき、物悲しさを感じる時間。


「おはようございます……」

「あっ、なっちゃんおはよー」

「おはよ」


 二人だけで部活なんてさぞ退屈だろうと、申し訳なさを覚えたが先輩も佳も、表情は満足した感じ。佳は先輩と二人だから分からなくもないけど、先輩はなんで……?


「ずっと二人でかるたしてたんですか……?」

「生徒会長が遊びに来て、三人でやってた」


 あの生徒会長が⁉ やっぱり遊びに来たんだ! それにしても昨日の今日で早すぎる気もするけど、まああの生徒会長なら仕方ないか。


「それなら良かったですよ、もう」


 安心した。


「鳴月、起きられる?」

「はい、大丈夫です。明日こそは、倒れずに頑張りたいと思ってます」

「ん。頑張って」


 起き上がって体をほぐす。佳からの陽に耐えられるような正月遊戯を考えなければならない。これは……外遊び、凧揚げをするべきか。凧揚げなら、個人技だし、佳の陽はあまり関係ない。周りからの目は……これは、分からない。けど、室内遊戯は佳との相性が悪いということが判明した。凧揚げなら尊敬の眼差し的な感じで見られることもないだろうし、凧揚げに上手い下手ってあんまり無いと思うし、凧揚げがいいかもしれない。


「帰る準備しますね」

「無理は駄目だよ」

「いやいや、和室に取りに行くだけですから」


 パタパタと音を鳴らしながら和室に入る。うん、楽しんだみたいだ。テーブルの上に綺麗になおしてるかるたがある。


「棚とかあった方がいいよね」


 私の後ろに着いてきていた佳に話しかける。


「なんでー?」

「いやほら、正月遊戯を置くためにさ」

「あー、なるほど。いる!」

「じゃあ今度の休み、必要そうな物を買いに行く?」


 佳の後ろからやって来た先輩も和室の中を見て言う。


 みんなで必要な物を買いに行くという活動もいいかもしれない。


「あっ、でもまだ部費出てませんね」

「あ〜、海幻ちゃ〜ん」

「ごめんねぇ、貰えるの来月からかもしれないのぉ」


 六月も半ばだから来月まで待てってことなのか。佳がお願いすれば、あの生徒会長なら首を縦に振りそうな気もするけど、現実の生徒会長はそんな権限持っていないか。


「残念」


 表情の変わらない先輩の顔を見ているとふと頭に浮かんだ。


 正月遊戯部の活動には、正月遊戯が必要で、その遊戯は買わなければならないはず。かるたは佳が持っていたからできたものの、凧揚げの凧とかは買わないと駄目だ。え〜、来月までまともに活動できないじゃーん。


「正月遊戯って揃えるのにお金かかりますね」

「トランプなら持ってるよ」

「多分今日と同じことになります」


 ババ抜きならと思ったけど、佳は顔に出やすいタイプだと思うし、多分今日と同じ展開になる。


「明日はすごろく持ってくるかあ……いや待てよ……。すごろく作ればいいじゃん」


 すごろくなら、適当な紙とペンがあれば作ることができる。よしよしよし、これなら私が陽にやられることはないはずだし、みんなで楽しく活動ができる! はず!


「正月遊戯部のオリジナルすごろく、いいと思う」

「めっちゃ楽しそー!」


 ははは……陽が……。


「じゃあ明日はすごろく作りってことで」


 私はにゅるりと陽から身を守る(ナチュラルに先輩を盾にした)


 明日の活動が決まったことで、荷物を持って今日は解散だ。


 先生に挨拶をして保健室を後にする。


                 △


 なんとか今日も無事に帰ってくることができた。毎日が決死の登下校、母もさぞ心配していることだろう。


「よかった、生きて帰って来てくれて」

「ガチトーンで言われると胸がきゅっとなるね」

「そりゃあ心配してるからね」


 体育祭の日もあれだけ心配してくれていたんだからまあ当然か。でも別に悪いことしていないのに罪悪感が凄い。この感じだと、陽からのダメージを回復する方法とかなさそう……。


 考えて自分で納得しても、それが正解な訳無いだろうから一応聞いてみる。自分一人の意見より、同じ陽に弱い者の母と考えた方がいいに決まっている。


「あのさ、陽からの回復方法って他に無いの? 今は寝てるんだけど」


 私の質問に母はうーんと悩む、色々と思い出してくれているのだろうか。母は吸血鬼の血筋だから若く見えるけど普通に歳だ。若々しいのは見た目だけであとはもう錆びついてきているはず。


「見た目だけじゃなくて中身も若いままだからね、あんたが考えていること、お母さんも昔考えたことあるから」

「……吸血鬼って何歳まで若々しいの?」

「ええ? いくつだっけなあ……でもおじいちゃん結構歳なのに、歳のわりに若いからなあ……」


 ちなみに母の父が吸血鬼の血筋だ。私が生まれる前の話だけど、祖母が祖父の若々しさにムカついて投げ飛ばしたらしい。なんで人間側がこうも武闘派なのだろう。


「心配しなくてもっていうか、あんたは気にするよね。お母さん友達いないから気にしなかったけど、見た目に関しては」


 やはり中身も若く、私の奥底に潜む心配事まで当てられてしまう。別に母相手に隠す必要無いし、気づかれたのなら大人しく白状すればいい。


「将来さ、私の若々しさを見て佳はどうなるのかなって考えるときあるよ。吸血鬼のことを話ても話していなくても。寿命だってどうか分かんないし」


 先輩もどうなんだろうか、人魚の血ってどれ程影響を及ぼすものなのか。


 佳も先輩も、私にとっては二人共大切な友達だ。そんな二人と生きる時間が違うのは……我ながら結構つらい。今考えても仕方ないけど不安はやっぱり消えない。私の例からすると母や祖父、その先祖のことは当てにならないかもしれない。自分の内側と向き合える時間ができると、いつもこんなことを考えてしまう。


「…………ごめん、本当に分からない。それっぽいことは言えるんだけどさ、お母さんみたいに友達がいない人間が言ってもって。まあ、あんたが佳ちゃんを信じてあげるしかないってのは言えるけど」

「はあ……友達って大事だね」

「別にいいし、結婚して子供もいて幸せだし!」

「話戻すけど、陽からの回復方法って寝る以外に無いの?」

「ごめん知らない」

「これだからぼっちは……」


 私の言葉に、どこか誇らしげな母。


 そりゃ友達いないから陽にやられても寝ていられるもんね‼ 他の回復方法試さなくてもいいんだもんね!


 全く、頼りになるのか頼りにならないのか。でも、こうして肩の力を抜いていられるって、実際かなり貴重なんだなって最近実感している。


「甘い甘い、友達はいなくても頼れる兄はいる。聞いといてあげるよ」


 ちっちっちと指を振った母の言葉、頼るのは叔父なのになぜか偉そうだ。


「じゃあこれから叔父さん頼った方がいいよね」

「ちょっとぉ?」

「いやごめんて」

「まだ負けないから‼」

「なにが⁉」


 なぜか必死の表情、でもなんか落ち着くなあ……。

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