正月遊戯部というふざけた部活
生徒会長の橘氷奈――名前の由来は知らないし、人の名前でこういうことを言うのはあまり良くないのは解っているけど言わせてほしい。
その名の通り、氷のような冷たさで却下された‼
「却下です! 一年の高橋さんでしたっけ? なんなんですかこの正月遊戯部というふざけた部活は! こんな訳の分からない部活、許可するわけないでしょう!」
「別のふざけてないですよ! 私は真剣です、炬燵――じゃなくて、正月遊戯というのは日本の古くからの文化であって、炬燵――じゃなくて、デジタルが猛威を振るう昨今、デジタルに負けず! 古き良きを大切にしようと、炬燵――じゃなくて――」
「鳴月、心の声が漏れてる」
先輩に肩を叩かれてハッとした。部活動申請書は生徒会に提出するらしく、だから私は早速生徒会室へとやって来た。そして今目の前にいる氷、生徒会長の橘氷奈先輩(二年生)に提出をして今に至る。
「永海先輩……、どうして先輩でもあろう方が、こんなふざけた部活に参加を?」
生徒会長は頭痛をこらえるように、唸るように永海先輩に問いかける。永海先輩が正月遊戯部というふざけた部活に参加すると書いてあるのを見て混乱をしているようだ――って、なにがふざけた部活だ!
ここはいっちょ言ったって下さいよ! と私は期待の眼差しを向ける。先輩は三年生だし、私と同じ超絶美人で賢い、いい感じに説得してくれるはず。
「ん。頼まれたから」
「「えぇ……」」
気まずい沈黙が漂う。なんとも言えない眼差しを向けてくる生徒会長に、私も同じ眼差しを返す。
「冗談」
そして次の先輩の一言で私と生徒会長はズッコケそうになる。いや、私は耐えたけど生徒会長はズッコケた。ベタだな。
生徒会長が立ち上がるのを待って、永海先輩は口を開く。
「元々部活というものに興味があったの。でも――」
「待ってよおーーーーーーー!」
先輩が理由を話そうとしてくれたところで、生徒会室の扉が物凄い勢いで開かれた。カーテンを開いて西日が射し込むのと同じで、いきなり私に陽が刺さる。
ようやく追いついた佳が息を切らしながら生徒会室へと入る。
「もー、なっちゃんも先輩も……早すぎる……。あっ、氷奈会ちょー」
「……やっぱり畑中さんも来ますよね」
生徒会長は佳を見て、ちょっと肩を落とす。口ぶりからして佳と面識あるらしい。
さりげなく陽から守ってくれる先輩の後ろから二人の観察を始める。
佳はいつも通り明るく笑顔、それはいつもクラスの友達と話している感じで、まさに陽の者。
いったいいつ、どこで生徒会長と知り合ったのか気になるけど、生徒会長の表情も柔らかい。ん〜、これは可愛がられているやつ。なんで?
いや、それはいいや。この感じ、佳に任せたら良い気がする。
「うちら部活作りたいんですけどー……ダメですか?」
「うう〜ん……流石に、正月遊戯部という活動を認める訳には……」
明らかに生徒会長の口調が柔らかくなっている。
「お願い!」
おおっと、ここで佳の攻撃、相手の手を握ってのお願いが炸裂! これは生徒会長にも大ダメージ! 私なら倒れている。見ているだけでも陽が凄いもん。
「えぇ〜……」
「氷奈会ちょー!」
お願いだけでここまで押せるものなんだと、改めて佳のコミュニケーション能力の高さに驚く。あの固そうな生徒会長をお願いだけでヘニャヘニャにするなんて。氷が溶けていってる。
「もぅ……分かりました」
「やったーー! 会ちょーありがとー!」
そして遂に溶け切った生徒会長に佳は喜びのハグをする。そこまでする必要ある……? うーん、でも佳ならそうするよね。
まあなにはともあれ、無事に部活を作ることができそうだ。
「あの生徒会長が懐柔されてる」
「そういえば生徒会長ってどんな人なんですか……?」
喜んでいる佳から視線を先輩に移して、私は小声で永海先輩に聞く。
「見て分かる通り、常に一人。他の役員もいるけど、生徒会長はお堅いから避けられている」
「あぁ……」
つまり――。
「でも本当は寂しくて、そんな中佳は親しくしてくれて、だから佳には甘いと……?」
「ん。だいたいそんな感じ」
そっか……生徒会長、寂しかったんだ。
少し温かい気持ちで生徒会長を見る。照れているみたいで、少し頬が朱に染まっている。うんうん、微笑ましい。
それから、なんやかんや色々手続きをして生徒会室を後にする。
「じゃーたまには遊びに来てねー!」
おい。
「わっ、分かりました。それでは……お邪魔させていただきます……」
なんでそう素直に頷く?
扉が閉まる前のやり取りに、とんでもない約束をしてくれたもんだ。
でも、今日の佳の功績が大きすぎてなにも言えない。
「佳」
「んー?」
だから言うのは感謝の気持ち。
「ありがとう」
「へへー」
先輩……あとは頼みました……。




