夏の燦々と降り注ぐ陽光を浴びた私の美しさには、嫉妬することすら勿体ないと思う。
六月は梅雨――のはずだけど、今年は例年より雨の日が少ない。
でも空は六月らしく曇り空、気分だけが下を向いてしまう。
今日も今日とて保健室のお世話になっている私は、身体を回復させるため目を瞑る。見ていても楽しい空模様じゃないからね。
時間が経っても私のこの体質は変わらない。寧ろ、これから夏服になるせいで『陽』に焼かれる面積が増えるのではないかと不安になってしまう。
母から聞いた話だと肌の露出で陽に対するダメージは関係無いと言っていたけど、病は気からという言葉もある。それなら考えないようにすればいいのに、どうしても考えてしまう。
目を閉じて休もうとすれば、こうしてどうでもいいことを考えてしまう。
「あーもう嫌だなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「なっちゃんどうしたのぉ?」
シャっとカーテンが引かれて不知火先生が現れる。
そこまで大きな声は出していないから注意じゃなくて少し心配した様子の先生だ。
「半袖だと陽に当たる面積増えるじゃないですかー」
「そういうものなのぉ?」
「そういうものじゃないらしいんですよ」
「えぇ……」
まあ母が大丈夫と言っているだけで、本当に大丈夫かは分からない。でも私は大丈夫な方に賭けたいんだけど、駄目な方に考えてしまう。
「でも考えてしまうんですよね……」
「うーん……なるほどぉ……。それは難しいよねぇ」
「こうして喋っていると考えずに済むんですけどね。でもずっと喋っている訳にはいかないんで……」
「実際に試してみるしかないよねぇ」
「そうなりますよね」
もうそろそろ衣替えだし、先んじて半袖で登校するのがいいかもしれない。今でもだいぶ暑いし、既に半袖で来ている人もいるし。
△
翌日、私は早速夏服を着て登校する。心なしか視線が刺さるような気もするけど大丈夫だ。これで大丈夫だったらまあ大丈夫だと思う。うん、安心。
「なっちゃんおはよー!」
「おはよう」
佳の放つ陽はどうしたって防げない。物理的に離れれば大丈夫だけど、それは服装云々の話じゃないし。それに……いや、それは別にいいか。
そういえば先月、佳はなんで永海先輩には緊張するのに私には緊張しないんだろうか聞いてみようと決めたけどまだ聞けていない。そうやってホイホイ聞けたらここまで困っていない。
私という誰もが声をかけるのを躊躇する超絶美人相手に、こうして笑顔で明るく挨拶をしてくれる。これが永海先輩相手だと、佳は緊張してこういう風に挨拶なんてできない。誰とでも分け隔てなくコミュニケーショを取れる、超人的なコミュニケーション能力を持つ佳だからこそ、私にも臆せず話しかけることができたんだと考えていた時期もありました。
なんとも釈然としない。いやまあ陽がかなり辛いんだけど、嬉しいんだよ? こうして佳といられて。
「なっちゃん夏服に変えたんだねー」
「結構暑くなってきたからね」
ちなみに、この私の綺麗で美しい白髪と、半袖の白いブラウスは非常にマッチしていた。どう足掻いても超絶美人の私だから、これ以上評価を上げることはできないけど、夏の燦々と降り注ぐ陽光を浴びた私の美しさには、嫉妬することすら勿体ないと思う。
でも、それでも佳は緊張してくれないんだよね……別にいいけど。
「うちももー夏服にしよっかなー」
「まあ暑いしね」
白い半袖のブラウス、増えた肌面積に綺麗な金髪が映える。
似合うだろうな……。それを口には出さないけど。褒めてしまうと陽が凄いことになると思う。
私に緊張しないくせに、褒めたら滅茶苦茶喜んでくれるんだよね。別に嫌じゃないけど、やっぱり釈然としない。
「ジメジメしててくっつくんだよねー」
「雨降らない分まだマシだよね」
「そーんなんだよねー」
できるだけ佳の視界に体が入らないようにして、怪しまれない程度に会話する。教室に着いても佳は喋りっぱなしだし、なんでか席替えとか無いし、ずっと佳が前に座ってるしずっと後ろ向いて話しているし……日陰は無いのか……?
いやでも佳と席が離れたら離れたでなんか嫌だな。うん、このままでいいと思う。いや、待てよ? 私が授業中によくリタイアするのは佳が前にいるからであって、席替えをして、佳と離れられれば私は保健室に行かなくてもいいんじゃないのか……?
考えれば考える程、それで解決する気がしてきた。
「そういやあさ、席替えってしないのかな?」
できるだけ自然に、別に佳が嫌という訳じゃなくて、私の身を守るために、佳に問いかけてみる。
「えっ、もうしてるよー?」
「……え?」
もうしてる? いやだって、佳と私の席が変ってない――いや、変わってるわ。私と佳は変わってないけど、他は変わってるわ。
アレだ、私を介抱するためっていうのと、シンプルに私が超絶美人過ぎてクラスで浮いているだけ。順序としては、学年全体から一目置かれている、超絶美人で近寄りがたい私は身体が弱く、半ば保健室で過ごしているようなもの。私のあまりの超絶美人力によって、誰も私を保健室に連れて行くことができない中、そんな私と唯一親しいのが佳だ。
佳なら、体調を崩した私を保健室に連れて行くことができる。だから席は近くになったんだ。
「なんかごめん、私のために」
「えっ、別にいーよー」
佳の表情は、全く気にしていない様子。
他の人ならまだしも、佳は私に緊張していないのに、どうして気にしていないんだろう。仮に私が永海先輩なら、佳が気にしていないというのに納得できるんだけど……でも佳の良い人レベルだとおかしいことじゃない……。
なんかなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼ なんだろうこの言いようのないモヤモヤ感‼
別にいいんだけどさ、別にいいんだけどさ? なんだろうね⁉
「なっちゃんどーしたの?」
「いや、なんでもない」
「ふーん」
「あいたっ」
額に鋭い痛み、目の前に佳の指がある。
「急になに?」
「なんでもなーい」
「えぇ……」




