するべきは転校
とりあえず学校を休んで、テーブルを挟んで母と向き合った私はこれまでの話を整理する。
「要するに私に流れる吸血鬼の血が覚醒したんだね?」
「要するに。やっぱり血が濃かったみたい」
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼」
「うるさいなあ」
耳を塞ぐ母の肩を掴んで激しくてシェイクする。
「あんまりだよ‼ なんで目立つのは嫌いなのに‼ なんで吸血鬼は陽に弱いのにこうして目立つ容姿になっちゃうのさあ‼」
母は結構昔に日本へ来た吸血鬼の家系というか血筋で、その娘である私も当然吸血鬼の血を引いている。
そして吸血鬼といえば、日光に弱かったり、人の血を吸ったりとか、なんかまあ調べれば色々出てくるし、色んな能力持ってたりするけど、私の血筋というか、現代まで続いている吸血鬼にはある特徴がある。
日光は問題にはならず、陽に弱い。『陽』だ、『陽キャ』の『陽』。
陽の者にも弱いけど、一番弱いのは人に注目されること。自分が陽の者になり、人から見られるともうゲッソリ。
そのくせ吸血鬼の血を引いているから見た目は綺麗だし運動能力も高い。なんなら賢い。
容姿端麗、文武両道、まさに才色兼備、ラブコメのヒロインだね。中学の頃からそうだし、まだ高校生になって一週間だけど、学校一の美人の称号を我が物に――うえっ吐き気が……。全校生徒が私を見に来た時は倒れそうだった……。
「多分、更に陽に弱くなるよ」
「ははっ、もうダメだ。もう学校行けない。絶対目立つもん、やっとイケメンで有名な先輩に告白されるとかいう拷問イベント終わったのに、また目立つじゃん」
吸血鬼は鏡に映らないの話がどうにかこうにかで、べつに鏡には映るけど、でもカメラには映りにくいっていうのが唯一のメリットだけど、この世の人間の眼がカメラならよかったのに……。
もうどうにもならない。でも、なんとかしてほしいなーって顔で母を見る。
母は腕を組んで悩みに悩む。スマホを触って顎に指を当てる。
「えー……とりあえず……転校とか……?」
「白髪の超絶美人転校生とか目立つよ絶対」
今と変わらないじゃん。
「女子校とか?」
「あー……」
確かに……女子校なら、告白イベントとか無さそう。いや、でも女の子相手でもモテちゃうかも。
「あまり賢くない女子校とか? 髪染めてる子結構いそうでしょ?」
「でも陽の者じゃん」
「木を隠すなら森の中って言うじゃん?」
「髪色に関してはね?」
「あんたみたいな超絶美人がいっぱいいる学校とかないかな」
私の反論に困ったように呟いた母がスマホを置く。
「確かに、それなら目立つことは無さそう」
でも、そんな都合のいい学校なんて無いでしょ。
私の視線を受けて、罰が悪そうに肩をすくめる母。
「まあ、色々調べてみるから、あんたはそれまで休んどきなさい」
「はーい」
そう言ってこの場は解散となる。
母も私ぐらいの時――というか、現在進行形で苦労しているから、学校へ行けって言わないでくれている。そんな母の優しさに感謝しながら、私は少々遅めの二度寝と洒落込むのだった。




