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虚数の嘘と、君の定理  作者: みずけんいち
第1章 沈黙の定理
11/12

第11話 それぞれの独白+α

 あのときは誇らしかった。


 ◇


 逃げるようにして家に帰った俺は、リュックを放り投げてベッドに倒れ込んだ。部活で実績を出すなんて話になれば大会にすぐに結びつくのは知っていた。しかし、俺は大会に出るのだけは無理だ。


(数学の大会には当時の俺を知る人が多い。()()()()()()俺という存在を知っている人が)


 あれだけ夢中にやっていた数学が一日にして嫌になるほどの周囲の嫌悪を示す視線。今は慣れたが、当時は耐えられなかった。それに俺の弁明を一切聞きもしなかった運営には今でも腹が立って仕方がない。


 俺の中で、ずっと押し込めていた醜い感情が、今にもあふれ出しそうだった。俺はこれを相良や佐久、鳴、相馬には見せたくなかった。特に、相良には。社会の闇の部分を一切知らずに生きてきたであろう相良が知れば、きっと俺からは間違いなく()()()()()だろう。それだけは確信している。たとえ、どれだけ佐久や鳴、相馬が俺を讃えたとしても、()()()()ことを社会は許さないだろう。そんなことは俺も知っている。当時の俺も知っていた。


「悠真、ごはんできたよー」

「わかった。今行く」


 俺はベッドから体を起こすと、一階へと向かった。


 結論は考えるまでもなく出ている。大会など二度と出るか。


 ◇


 ゆー先輩は私にとって命の恩人だ。あのとき、ゆー先輩が助けてくれたから、今の私がいる。確かに、最善の方法ではなかったのかもしれない。それでも私は助けられた。()()()()は社会のクズであることに変わりはないし、ゆー先輩が後ろ指をさされる社会のほうがどうかしている。


 それはそれとして。相良とか言う女はゆー先輩に馴れ馴れしすぎだ。ゆー先輩もまんざらではなさそうな態度が気に食わない。内藤鳴はうるさいし、中島佐久は今日はいなかったが、いたらやっぱりうるさい。


 もともと部活ではなく()()()を作りたいとゆー先輩は言っていたのに、あの二人が入部なんてしたせいで私の計画がパーになった。それも私をイライラさせる。


 ゆー先輩はきっと大会には出たがらないだろうな。()()()()()をされて、出たいと思うはずがない。でも、あのときのゆー先輩と今のゆー先輩はあまりにも変わり過ぎている。あのときのゆー先輩に戻ってほしい。あのとき、私の背中を押してくれたように。今度は私が背中を押す番だ。


 ◇


 数研部でいざこざが起こっている間、中島佐久はコンビニでバイトをしていた。


「いらっしゃいませ」


 働いている俺は今とてつもなく輝いている気がする。そんなことを頭の中で思いながら、掃除に励んでいた。


 ◇


 悠真先輩は私にとっては頼れるお兄ちゃんだ。つばめ園にいた頃、私は悠真先輩にくっついていた。一緒に宿題をしたり、本を読んだり。公園にも一緒に行って遊んだ。私がわがままを言ったとき、それとなく注意をしてくれた。私の親はどうしようもない人たちで、育児放棄なんて当たり前だった。我慢し続ければいいことはあるのかもしれないけど、私にはその可能性を信じ切ることが難しい。


 あるとき、悠真先輩が言っていた。『親は選べないけど、家族は自分で選んで作ることができる』って。確かにそうだ。生みの親は選べない。選べたらどれだけいいだろうと思うけれど、それを嘆くことには意味はない。割り切って前を向くしかない。


 だから、悠真先輩も前を向いてほしい。大会に出て、悠真先輩がすごい人なんだってことを証明してほしい。周りがなんて言おうとも気にせず、自分のできうる最大限を出し切って卒業していってほしい。


 私にそんなこと、できるかな?


 ◇


 一ノ瀬君の隣の席になって3日が経ちました。私のことを一ノ瀬君はどう思っているのでしょうか。二乗先生が『美人だ』『かわいい』などと言ってくれましたが、一ノ瀬君はどう思っているでしょうか。一度『美人だ』と言ってくれましたが、それ以降全く会話に出てきていません。それに数研部には女の子が私以外にも二人もいるのです。もしかしなくても、一ノ瀬君はモテ男なのでしょうか?二人とはどんな関係なのでしょうか。すごく気になります。一番興味のある話題かもしれません。彼女はいないとのことなので二人とは付き合っていないようなのですが……。


 数学の問題を解いている一ノ瀬君はいつも楽しそうだと感じています。部室で朝早くから活動をしているときも楽しそうでした。きっと、数学が好きなのでしょう。テレビに出ていた一ノ瀬君はカッコよかった。それに顔がすごくタイプなのです。だから、一ノ瀬君の隣の席になったときは飛び跳ねたいくらい嬉しかったです。まあ、教室にいるときは亜美ちゃんたちが一ノ瀬君と話そうとするのを阻止してくるせいで教室ではなかなか話す機会に恵まれませんが。


 あ、亜美ちゃんからラインが来てる。


《一ノ瀬ともしかして一緒に今日も帰ったの?》

《いえ、今日は一人です》

《え?そうなの?てっきり部活が終わった後、一緒に帰ったかと思った》

《いつも一緒ってわけじゃないよ》

《一ノ瀬ってむっつりって噂があるから気をつけてね》

《あ、あの……》

《………?》

《胸はどうしたら大きくなりますか?》

《明日早く学校来て。お話、しよ?》


 な、なんか亜美ちゃんの返信から嫌な予感がする。私は変なことを聞いてしまったのでしょうか。


「あっ」


 LINEで思い出しました。私はまだ一ノ瀬君とLINE交換ができていません。あした早速交換しないと。


 私は手帳に『LINE交換 一ノ瀬君と』と書き込みました。


 明日も頑張ろう。部活の実績を作ることも大切だけど、一ノ瀬君に大会に出てもらうために私にできることをやろう。それが私から一ノ瀬君にできる()()だと思うから。


 今日の一問

 問11 次の4人のうち、正直者は誰でしょうか

 田中:「鈴木は嘘つきだ」

 鈴木:「僕は嘘つきじゃない。加藤は嘘つきだ」

 加藤:「僕は嘘つきじゃない。山本は嘘つきだ」

 山本:「君たちは3人とも嘘つきじゃないよ」

しばらく休載します。休載している間は他作品を更新していこうと思います。よろしくお願いします。


よろしければブックマークと評価ポイントをくれると私自身励みになります。

また、解けた方は、ぜひコメント欄に答えや感想を書いていただけると嬉しいです!次回もどうぞよろしくお願いいたします

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