愚かで臆病な私のはなし
いつも誰かのせいにして、流されているだけの『私』
見た夢をメモしたらなんかホラーっぽかったので供養がてら。 (設定の性別はご自由に)
新しい職場で馴染めなかった私は心を病み、見兼ねた家族が私を連れて田舎に観光に行った。
辿り着いた宿は療養にふさわしい場所なのだろう。案内された部屋の窓から見る景色は、まるで作品のように美しい。
初夏の爽やかな風が緩やかに木々を揺らし、葉音は私の心を優しく包み込もうとする。
川の流れに乗った木漏れ日は、宝石がはじけたかのように水面を煌めかせた。
こんなに美しい景色を見たのはいつぶりだろう。酷く不愉快だ。
だが家族は朗らかに寛いでいる。それを見ると一人孤独になったかのように息が苦しくなり、耐え切れずその場から逃げ出した。
外に出たはいいものの、部屋からの景色とは違い酷く荒れ果てている。その中を観光客たちが叫ぶように騒めいていた。
なんと車ほどの大きさの獣が道を堂々と歩いていたのだ。観光客たちは此処が動物園かのように写真を撮り、食べ物を掲げている。
近づいてくる獣に警戒心を抱かない彼ら。私はその様子を見て大丈夫なのだろうかと心配していた。私自身もその中にいることを忘れて。
一人襲われてからようやく動き出し、私もすぐに逃げ出そうとするが、獣は一頭だけではなかった。
人ごみに紛れて逃げ出したが、狙いを定められたのがわかる。
恐怖からだろうか。吐く寸前に出るような嫌な唾液が溢れて息がしづらい。
鼻水も涙も唾液も区別なんてなく、わからないぐらい汚らしい自分。
ごめんなさい、ごめんなさいと喉を震わせながら宿に逃げ込む。家族に危険が及ぶと罪悪感に苛まれながら。
宿の室内には家族は既に居らず、無事逃げていた事に力が抜けそうになった。だが獣は来ている。女将の案内のもと地下の避難部屋に逃げ込んだ。
避難部屋といっても壁の土は剥き出しで出入り口の扉は鉄格子。まるで地下牢だ。そんな中に近隣住民も含め、皆は避難していた。
見張りはどうするか。数秒の議論の末、私一人で出入り口を見張ることになった。私のせいで扉を閉めるのが遅くなったと眉を顰められたのもある。
しばらくするとイタチぐらいの小さな獣が来た。どうやら入れて欲しいとのことだ。
当然断るが、哀れみを誘うように懇願してくる。その様子を見た他の人は、獣を入れない私を糾弾する。しかし決して自分で入れようとはしないのだ。まるで責任は自分には無いように。
糾弾が辛くて、苦しくて。つい鉄格子の隙間から手を伸ばすと獣はおとなしく撫でさせてくれた。それは私を喰いたい訳ではなかったのだ。
言葉を交わしている内に小さな獣には親しみを持ち、次第に他の人間よりもよっぽど信じられる存在に思えてきた。
だが他の人間が怖くて扉を開けるのを拒否し続けていると、その言葉はそのうち私の心を削る様なものに変わっていく。しまいには馬鹿にするようにゲラゲラと笑い始めた。
私を見下して笑い続ける小さな獣に対し、裏切られたかのような心持ちになった私は、怒りのあまり扉を開けてそれを踏み殺した。
そこで漸く気がついた。言葉が通じようとも獣は獣。心を傾けてはならない存在であることに。
なぜならば私がそれに気を取られている間に大きな獣がすぐそこにいたから。
後ろの人間が私を責め立てる。
うるさい、そもそもお前らが悪いんだろう。私の話もきかずに押し付けて貶すばかりの役立たずのくせに。
死体はゲラゲラ笑い続ける。
私は騙された、騙されたのだ、私は悪くないんだ。だってそう思わないと私は愚かだからいつも信じる相手を、違う、違う!私は悪くなんてない!
目の前にはアレがいる。
もう逃げられない。怖い足も動かない、許して、腕に爪が食い込んで引き寄せらて、ごめんなさい、目が私を見て、お願い、だれか助け……
ここで目が覚めた。目覚まし時計ありがとう愛してる。




