名もなき少女のはじまり
私がどこで生まれたのか。
それはわからない。
記憶にあるのは、虫のような爬虫類のようなものが体の上を這いまわる感覚。
なにより、体を焦がす暑さ。
這いまわる感覚はすぐに消えたが、身を焦がす暑さは消えず、たまらず目を開けた。
目に入ったのは、あたり一面の砂漠と私の白い肌を焦がす輝く太陽。
風が吹くたびに熱が体に蓄積される。
あまり熱気で気持ち悪くなり歩き始めた。
炎天下の中、裸足で歩きながら、時々あるオアシスで水分を補給して木陰に隠れて暑さを凌いだ。
何度も限界が来て気絶した。
そんな中、体に異変が起き始めた。
徐々に、内側から渇望した欲求が湧き上がってきた。
のちにそれを『食欲』と呼ぶのだと教わった。
とにかく、何かを食べたい。
水を飲んでいるのに渇きが収まらない。
水面に映る自分の顔は飢えた白狼のようだった。
白い肌は砂埃で茶色くなり、髪はボサボサで砂が所々に入り込み薄汚くなっていた。
そんな中でも、この深紅の目の色だけが異彩を放っていました。
もはや、流浪の民のようにさまよい歩き、挙句の果てに道中で力尽きてしまい、倒れ伏すことを何回も体験していました。
倒れても起き上がれたのは一重に純粋な当たり前の願望を持っていたからだ。
死にたくない。
だけれど何度も体に無理をさせてきた結果、動かせなくなっていた。
ああ、この世界は私には優しくない。
動けないのに死にきれない。
倒れて灼熱の地面に焦がされるまま横たわっていると、誰かが駆け寄ってくる音が聞こえました。
さらに何かしゃべっている声が聞こえましたがすでに応対する気力もなく意識も薄れていきた。すると、私は持ち上げられ何かの乗り物に乗せられた記憶を最後に、意識がなくなりました。
再度、目を開けたときにどこかの施設に居た。
四方を頑丈な防護壁に囲まれ、手には手錠がかけられていた。
部屋を見回すと置いてあったトレーにはよくわからない果実や肉、穀物があり、飛びつくように食べた。
けれど、飢えは少ししか収まらないのに対してお腹はいっぱいだと体が主張し、ちぐはぐな感覚を覚えた。
唐突に、この部屋にあらかじめ用意してあったスピーカーから声が聞こえ始めました。
「おはよう、奴隷の諸君。今日も我々のために働いてくれたまえ」
その音声と共に胸の中から電子音が聞こえてきた。
これが私の覚えている最古の記憶。