舐めまわしたい
「それにしても、甲斐田家の情報網はあまり正確とは言えないことが判明しましたね」
「そうね」
まさか、私の父のことだけなんて。
「私達、四乃宮家に犯意を持っている御家、全員がお姉ちゃんの魔法で手中に収められているなんて思いもしないでしょうね?」
それも仕方がない。
無能な人間とはどこにでもいるものだ。
他人の脚を引っ張る人。
責任を他人に擦り付ける人。
傍観に徹する人。
いろいろな人種がいる。
そういったことが常態化するのは好ましいことではない。
だからこそ、使える人間と使えない人間に分別して使えない人間の『魂』を破壊した。
意識は、朧ながらもあるが徐々に衰退していき過労して死んでいくように仕向けた。
そして、感づきそうな人間にも意識の改ざんを行い、『あの人たちはあれが普通である』と誤認させることに成功していた。
まさか、新入社員がでしゃばるとは思ってもみなかった。
おかげで、あの人の家から査察官として『甲斐田香織』が来るとは思ってもみなかった。
でも、何もかも———。
すべては『あの人』のため!
五年という歳月の間、私はただ待っていたわけではない。
あの人を受け入れられるように、幼いながらも事業の経営者として研究所の成果とその利益を用いて四乃宮家をさらに拡張していった。
事実、すでにこのコロニー内で私達に進言できる人がいないまでに。
あとは———。
「少し癪だけど、あの子の条件を飲みましょう」
「いいの?」
「ええ。それにあの人の反応をみれば、お互い徐々に歩み寄る必要がありそうだから」
それにしても———。
なんて可愛らしい反応だったことか!
私は今、あの愛おしい顔を———。