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こうなれば焼け野原ですわ

けほっ、けほっ。

私は自分自身の身を護ることで必死だった。


自分の身体を魔力のシールドで覆う。

ボロボロと木々がこぼれ落ち一瞬で先程まであった教会は崩れ落ちてしまった。


「……うぅ、ひどい目にあいましたわ……」

自分の上に乗っかかってきた瓦礫を取り除く。


ぐおおおおおおおっ!!

と叫び声が聞こえて私は思わずそちらへ視線を移す。

ドラゴンが燃えクズとなった教会を踏みつぶしている。


私の世界が……。

勇者が守り切ったこの世界がドラゴンによって破壊されていく。


教会が何を企んでいたのかまったくわかりませんけど、

この状況は望ましいと言える状況ではありませんわね。


もしかしたらこのまま村の方へ進出されてしまえばどうなるかわからない。

ま、少しは女神としての責任を果たすことにするとしましょうか。

世界を守ること、少しでも人々を守る行動を取ることで支持率を取り戻しますわ。


私は力を溜め込む。

サメを呼び出すときに使った魔力とは違い、自分の身体から搾りだすかのように。

手に集まった力を一気に放出しようと身構える。


これを喰らえばドラゴンでも倒せるはずでしてよ。

私が魔力の弾を一気にドラゴンへと放つ。

魔力の弾は段々と熱が込められていき、炎へと包み込まれて行く。

燃え盛る炎となった弾はドラゴンの腹を抉るかのように当たる。


「っぅ!!?」

ドラゴンの息が漏れる。

硬い鱗が炎に身を焦がされてごうごうと音をたてて燃えていく。


「ぐぎゃっ!!?ぐぉっ!!」

ドラゴンは炎をなんとか消そうと体をジタバタと動かして身をよじる。

体を地面にぶつけてコロコロと転がろうとしている。


「させませんわっ!!」

私は手を伸ばしてドラゴンの体を抑えるかのように魔力で作った縄でくくりつける。

ドラゴンは地面に抑えつけられて、身動きがとれない。


「ふふん、私がこの世界を壊すものは許さなくてよ」

決めポーズと言わんばかりに格好をつけることにした。

口元をにやりとつり上げてとどめを刺そうとした。


「これで最期ですわよ!!」

「ま、待ってくれェ……お、俺はぁ……」


「お、おい……何しているんだ」

村人がこの騒動に気が付いたのか集まってきた。


「いえいえ、たいしたことは何もしていませんことよ」

私は謙遜する。

ま、女神ですからこれくらいして当然でしてよ。


ニヤリと口元を緩ませた。

ふふん、私のためにみんなが集まってきてるわ。

これならば、褒めたたえられるかもしれませんわね。


私は胸を突き出す。

どう、好きなだけ崇めてよくってよ。


「しゅ、守護龍を倒すとは……やはり女神様は魔王の使いだったのかもしれん」

「へ?」

思わず声が漏れ始めてしまう。目を大きく開け、私は村人を見た。

そこからはあっという間だった。


力を使いきった私は簡単に村人に取り押さえられた。

「ちょ、ちょっとぉ……どこ触ってるのですか!!?」

「うるさい、悪魔の手先め!!」

村人の手が私の体を掴む。手首を掴まれ、力が入る。

振りほどこうにも、段々と力が強まっていく。


私は口を大きく開き「あ、悪魔の手先ィ?私は女神なんですけど!!」

と叫んだ。


「嘘を言うな、守護龍様を倒すなんて本物の女神様ならそんなことをするはずがない」

私の言葉には耳を貸そうとしない。

どうしてこんなに私の信用度が低いのですわ??


「な、なんでですの……それに守護龍って」

私の言葉を聞いて、村人は鼻で笑う。

「はっ、やっぱり偽物は知らねぇか」

身動きを取れないように私に手錠をつけた。


「教祖様がおっしゃってたんだ、女神様がドラゴンを召喚してくださったって」

あの教祖……なんでそんな勝手なことを……。


「そんなの私は知りませんわ!」

「だから偽物だって言ってるんだろ」


村人は私を踏みつける。

綺麗に染まった髪の毛は村人の足によって汚されていく。

くぅ……屈辱的ですわ……。

私は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。


少しでも信じてもらおうと私は大声で叫ぶことしか出来ない。

「違いますわ、私が本物ですのにぃ!!」

じたばたと震え、手錠を外そうとするも外れることはない。


「それくらいにしなさい」

背後から人の声が聞こえてきた。

気高く、麗しい女性の声だ。私がふと、振り向くと勇者パーティーで僧侶であった女性が現れた。


「聖女様!!」

「彼女に罪はありません、許してあげなさい」

なんですの、この状況。

聖女が女神よりも立場が下、だなんて。


「でも、こいつは守護龍を」

「関係ありません、彼女は我々の女神様です」

村人はぐぬぬといった顔をして渋々私の手を離す。


「た、助かりましたわ……」

私は聖女の方を向く。ゆっくりと言葉を交わしてお礼を口にする。

「い、いえ……たいしたことはしてませんですし」

聖女はにっこりと私に対して微笑むと顔をグイっと近づけた。


「ところで、ですが……」

ちらりと視線が合う。ふふん、私を崇めるものがまだいたということですの。

オーホッホッホ、とても愉快、愉快ですわね。


「勇者様をどこに隠したのでしょうか」

彼女の声はとても低く、凍るような鋭い声だった。













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