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私ィ……女神なんですけどぉ……。

さて、無事逃げ出すことができましたがここはどこなのでしょうか。

私の体は垂直に落下している。

「……!!」

思わず息を呑む。目をパチパチと開いて再度確認する。


「お、落ちますわよ~~~~~!!」

大声で叫び、私は指をパチンと弾き魔法を私自身にかける。

魔力を全身にまとう。体がふわりと宙を舞っていく。

ゆらゆらりとゆっくりと落ちていく。

ふふん、これしきピンチでもなんでもありませんわ。


私は優雅に空の上からここはどこなのかを確認する。

文明は中世というところですわね、というかどこかで見たことある世界ですわね。

大きな協会が1つ。そして私を讃える像が……。


なるほど、ここは以前勇者によって救われた世界ですわね。

タンッと、音をたてて地面に着地。

まず人を探さないといけないですわね……。


辺りをキョロキョロと見渡した。

居ましたわ、人が。極々普通の農民だろうか、一般的な庶民だろう。


私が声をかけたらうれションしてしまうかもしれませんわね!!

口元を緩ませて、私は声をかける。

「御機嫌よう、庶民の方々」

「……え、えっと、女神様?」

あまりにも私が神々しいからか、庶民は視線を逸らしている。


あらやだ、可愛らしいですわね。

思わず口元を緩ませてしまい、生温かい視線を送る。

「緊張しなくて大丈夫ですわよ」

優しく声をかける。

私はそっと庶民に手を伸す。

庶民もにこやかな笑みを浮かべて私の手をギュッと握り返した。

目を大きく見開き、ぴくぴくと眉が蠢いた。

「よくも勇者様を他の世界へ連れていきましたね!!」

ぎちぎちと私の手のひらに食い込む指の力。

いたたたたたた!!痛すぎィ!!……な、なんなんですのこの力は!!


「ちょ、ちょっとぉ!!離してくださいましぃ!!」

ぶらぶらと手を動かすも庶民は離さない。

さらに握りしめる力が強まった。


「や、やめてくださいまし!!」

「離しません!!勇者様を誘拐したのはわかっていますから!!」

大声で叫ぶ声、その声に導かれてわらわらと人が集まってきた。


ちょ、ちょっとぉ……どういうことですの~~~~~!!?

私ィ……女神なんですけどぉ……。

まさか勇者を転移させたことを誘拐だと思われているってことですの!?

どれだけ人望有りますの、この私を超えるなんて由々しき事態ですわよ!!


とはいえ、皆さま殺気だってらっしゃるようで、とても怖いですわ。

「何故勇者様を連れ去ったのですか!!」

「俺たちの勇者を返せー!!」

大きな声を出し、武器の代わりに農作業の道具を手にしている。

このままだと私が先に殺されてしまうかもしれませんわね……。


なんとかしなくては。

私は手のひらに魔力を込める。小さな弾を作り、威嚇として庶民の頬を掠るように放った。

「っ!!」

私を掴む手が離れた、ここがチャンスですわね!!

「オーホッホッホ、私はそれだけじゃ捕まりませんことよ」

後ろへ飛ぶ。庶民の手から離れて逃げようと走り出す。


次から次へと立ちふさがる住人たちをビンタで弾き飛ばす。

いい加減、めんどくさいですわね。


私は地面に手を当てて魔力を注ぎ込んだ。

「さぁ、お行きなさい!サメよ!!」

地面からぼこぼことサメが飛び出て人々を襲う。


この世界は一気に地獄へと変わり果てた。

でもすこしくらい人数を減らしてもバレませんでしてよ。


やはりサメ、サメはすべてを解決するのですから。

この状況もなんとか収集をつけてくれるはずでしてよ。

それが最後に爺やから教わったことでしてよ。


小さく息を呑む。

爺やへ、私は今あなたに教わった知識を活用して必ず勇者をぶち殺しますから。


指を鳴らす。

サメには適度に人を脅かすように襲えと命令を送る。

理解したのか、イルカのように跳ねるサメたち。


さぁ、私はこの隙に逃げ出しますわよ~!

女神である私が住民たちに襲われる、不思議なことがあるものですわね。

唇を少しだけ強めに噛む。


いったい、なぜ私がこんな目に……。

何が起きているのか、勇者も関係ありそうですしここで情報収集をいたしますわよ!!

爺や共に……。ってもう居ないんでしたわね、私……。一人でもやりますから見守ってくださいまし。

胸にそっと手を当てた。大丈夫、私なら絶対にやれる、ぶち殺すことができますわよ。

そう何度も何度も言い聞かせた。


とはいえ、教会へ向かうべきかもしれない……。

ですが、このまま教会に向かったとして敵の陣地に乗り込むのと同じですわね。


私は少しばかり考える。

「ごめんあそばせ~~~!!」

どっかーん!と音をたてて、扉を蹴り破った。

協会の中にダイナミック入室をする。


「お、お前は……女神様ァ!?」

数人の神父たちがざわざわと話を始める。

私のことをじーっと見つめて何やら警戒をしているようだ。


「如何にも、私が女神ですわよっ!!オーホッホッホ!!」

声をあげて高らかに笑う。

ふふんと鼻を鳴らし、私はこちらを警戒する神父たちを見上げる。


「あいつだ、あの女神が勇者を連れ去った犯人だ」

「勇者を連れ戻すためにもあの女神をひっ捕らえるのだ!!」

神父の呼び声と共に数人の人々が武器を持って現れる。


「いやですわ、捕まるなんて……ですが、私は知らなければなりませんわ」

小さく唇を噛んだ。

次々と人の波を乗り越えていく。小さな魔力玉を押し込んで次から次へと敵を倒していく。


「なぜ、勇者を転生させたからと言ってここまで命を狙われることになったのかを確かめないといけませんわね」

私は一歩踏み出して、教祖の目の前にまでたどり着く。

そしてグイっと胸倉を掴んだ。

「……お話聞かせていただきますわね」

「は、はい……」

教祖は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて仕方なく従うようだ。


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