第7話
久しぶりに更新。
だけど、久しぶりすぎて書き方がちょっと…orz
おかしい。
絶対何かがおかしい。
つい先日にもこんなことを考えた気がするが、それでもやっぱり何かがおかしい。
「春樹さん、起きてください」
「早く起きなさい」
おかしさ二倍(当社比)のこの現状。いつも朝見上げる視界の中に女の子が二人。
「何が…、起きているんだ…」
「タイソンが起きてんのよ」
「体調が優れませんか?」
「いや、そういう意味じゃ…」
下校のとき校門で別れるから二人とも家の方向は違うはず。それが何故態々うちまでやって来る必要があるんだろう。
はぁ、やっぱり夢だ。長い夢を見ているに違いない。よし、寝よう。
「夢、それはドリーム、だね」
「って、その意味の無い直訳はなんだよ」
ああ、これどうしたことか。
「なんでお前らまで居るんだ。そして心の中を勝手に読むな」
陽太と良介までもが僕の部屋に居た。ただでさえ狭い部屋なのに、もう人が座れるようなスペースなんてありゃしない。しかも比率的に男が多いのがいただけないです。
「…で、皆さんお揃いで何か御用ですか? 今日は休日だったと思うんだけど」
「なんだ、忘れたのか? 今度の休みは皆で遊びに行くって決めたろ?」
「………あー、そういえば…」
曖昧な記憶の中に、そんなことを喋っていた良介がいる気がする。
「して、どちらまで?」
「それさえも忘れたか! これを見ろ!」
と言って良介が小さな冊子を投げつける。
それは何やら楽しげな一家の写真が散りばめられたもので、思い出の一コマの数々…、のようなコンセプトで作成されたであろう遊園地のパンフレットだった。トレジャーランドというなんともベタな名前で最近オープンしたばかりのスポットだ。
「友達と遊んで愛を育もうという企画だ」
「うん、とりあえず同性で愛は育みたくないな」
「だから今日は女性陣もいるんだよ、春樹」
「と言ってもだな、人数的に合ってないよな?」
冴草、赤松さんの女二人と、僕と良介と陽太の男三人。
いや、別にデートってわけじゃないんだから、人数は合ってなくてもいいんだけど、なんかなぁ。
「心配は無用だぜ!」
「僕の妹が参加するよ」
陽太の後ろからひょっこりと顔を出した女の子。というか今までそこに隠れていたというのか。だとしたらなんという隠密スキル。
「春樹には必要ないと思うけど、一応紹介しておくよ。妹の月子だよ」
「よ…、よろしくおねが…………」
声が小さくて最後の方は聞き取れなかった。
勿論僕は月子ちゃんのことはよく知っている。陽太と同じく小学校からの仲。僕らの一個下だ。とても恥ずかしがり屋で、付き合いの長い僕にでさえこんな感じである。陽太の話では内弁慶であるようだが、正直それは全然想像できない。
「人数は揃ったわね! それじゃあ行きましょう!」
「おい冴草が仕切るなよ。計画を立てたのは俺なんだぜ?」
「分かってるわよ。でも早く行かないと、人気のアトラクションはすぐいっぱいになっちゃうんでしょ?」
「そうですね。トコちゃんの言う通りです」
「い、行きまし………」
「ってか今何時さ?」
早く行ったってあんまり変わらないと思うんだけど。
「四時半だ。タイソン」
「早っ!?」
何すんなり起きてんの自分!? え、うぇっ!?
やばい、時間が分かったら眠たく…。
「ぐー…」
「寝るなバカたれ!!」
へいへい、起きればいいんだろ、起きれば。
と、いうわけでやって来るはトレジャーランド。
休日というせいか、開園前だというのに人がごった返している。短い休日をどうしてこんな気を使う場所で過ごそうというのか。まったくそんな連中の気が知れないな。
「って、回りから見れば僕もそのうちの一人なんだけどね」
「何独り言しゃべってるの、春樹」
「陽太、きっと今日はよくないことが起こる」
「なんで?」
「勘だよ」
「よっしゃ! 皆行くぞ!」
開園時間と同時に良介が号令をかける。
入場券は既に買ってあったけど、人の列が長い長い。結局入るまでに十分程度かかってしまった。
「ここがトレジャーランド…」
冴草が恍惚とした表情で思わず呟いていた。
「そんなに行きたかったのかよ?」
「当たり前でしょ!!」
「うおっ?!」
冴草が怖いを思いっきり近づけて反論する。
だけど、すぐににこやかな笑顔になって遊園地の中を見渡す。
「遊園地初めてなんだからはしゃいだって別にいいじゃない」
「冴草さん遊園地行ったことなかったんだ」
「そうなのよ! うちは家族旅行とか温泉ばっかりでこういう場所に縁がなかったのよ!」
初遊園地か。僕も初めて行ったときははしゃいだなぁ。
「何よその顔」
「いやいや、強烈脚力の冴草の微笑ましい姿を、後々いびるネタとして触れられるように鮮明に記憶させておこうと思って」
「遊園地の中心で悲痛な声を叫ぶ?」
「やめてくれ」
ナイスな笑顔で恐ろしいことを言う冴草に、僕もナイスな笑顔で答える。
「普通なら人気のアトラクションから潰していくのが定石だが、今回は別の作戦でいこうか」
「と言うと?」
「なに、順番を逆にするだけの話さ」
「不人気のアトラクションから乗っていくわけだね」
「ざっつらいと!」
「だけどそううまくいくもんか?」
「谷田さんにさん……」
「おお、陽太妹、よく言った!」
「僕もそれで構わないよ」
「私もいいですよ」
皆良介の意見に賛同している。僕も特に断る理由はないし、良介の話に乗っておくか。
「じゃあ僕も…」
「異議あり!!」
僕の声を遮っての割り込み命令が入りました。
「どうしてみんなそんなに控え目なの? もっと強気で攻めないと回りに呑まれちゃうわよ! 今日という日を私はとっても楽しみにしてたのよ! 今日は戦争に出向くくらいの意気込みでやって来たのよ! それじゃダメよ! ダメダメなのよ! ね! タイソン!?」
「そんな熱血な言い種で振られても…」
「だってタイソン何も言ってなかったでしょ? 遅刻魔の意見に賛同するか悩んでたんでしょ? ちょうどいいじゃない!」
言う前にお前が言ったんだろうに。それに何がちょうどいいのかわからん。
「だから僕は良介の意見にさ…」
「異議を認めよう!」
割り込み命令再び。
「確かに冴草の言うことも一理ある。ならばチーム分けをしようじゃないか」
「チーム?」
「ここに六本の棒がある。都合よくな」
良介が竹串のような棒を握りしめていた。本当に都合いいな。まぁ、遊びに真剣な良介なら用意していても不思議じゃないか。
「さらに! 何故か色分けまでされている用意周到さ! 同色を引いたもの同士がチームだ。ちなみにチームはツーマンセルだぜ!」
「確かにそれが手っ取り早いね」
「ならば引け!」
全員が思い思いの竹串に手を伸ばす。
「いいか? せーの! で見るんだぞ?」
「わかったから早く」
「せーの!」
引っこ抜かれた竹串。その先には緑色のペンで色が塗られていた。
「あ、トコちゃん一緒ですね」
「さよぽんなら安心ね」
「陽太か」
「はは、僕女の子役やろうか?」
「いらんわ!」
みんな相棒が決まっているようだ。
となると、僕の相手は…。
「春樹お兄ちゃん、よろ………」
「うん、よろしく月子ちゃん!」
正直、相手が月子ちゃんでよかったと思う。冴草や赤松さんと二人きりになるのは、今はちょっと居心地が悪いだろうから。
「それじゃあ全員相手は決まったな。今は9時30分くらいだ。昼には一旦、この場所に全員集合だ。昼くらい一緒に食べようぜ?」
「わかったわ。さよぽん行きましょ!」
「あ、トコちゃん待って!」
アリスはウサギを追って不思議の国を冒険するんだっけ。冴草をウサギに仕立てるには少々凶暴かな。赤松さんをアリスに仕立てたいところだけど、雰囲気がちょっと違うし。
「陽太、アーケード行こうぜ!」
「素直にゲーセンって言いなよ」
この二人はいつも通りか。というか、良介、君は遊園地に何をしに来たんだ。
「春樹お兄ち………」
隣から消え入りそうな声が聞こえる。
このメンツの中だと、月子ちゃんはやっぱり影が薄いな。
「ごめんごめん。月子ちゃん、何か乗りたいものある?」
「春樹おに………」
「ん?」
「ジェットコース………」
「あ、ジェットコースターだね。じゃあ行こうか」
一瞬変な返答を耳にしたようだけど気にしない気にしない。
でもなんだろう。馴れ親しんだ月子ちゃんのはずなのに、なんでこんな冷や汗をかいてるんだろう。
こんな日は決まって良くないことが…。
「………」
ああ、朝起きた時点で良くないことは始まってたんだったな。