第57話
精霊樹移植計画は今のところ問題なく進んでいます。
エストニアの王都オースルクナでも移植先の草原で大量の人が掘削作業をしています。
後はとりあえずドワーフ王からの連絡待ちです。
なので……暇です。
収穫祭の時期が近いですが、特にやる事が無くなってしまいました。
フォルナちゃんのところにでも遊びに行こうかな……
「リュデル王、シィナ様。伝書鳥が文を運んで来ました!」
リュデル王国からの文らしいです。
王様が受け取って中を確認しています。
「…………は?なんだと?」
「エドワルド様、なんと書かれているのですか?」
「ふむ……リンドブルグ領で緊急事態だ。お主の父に直接確認してくれるか?」
「え?緊急事態ですか?」
「ああ、娘に帰還して欲しいそうだ。」
なんでしょうか?つい先日も戻ったばかりですが。
緊急事態と聞いては急がないといけませんね。
レーアとミオに報告してからとりあえず一人で戻ります。
ええと……屋敷は特に騒いではいません。
誰かいませんか?お姉様の部屋は無人です。
じゃあロッカちゃんに会いに行きましょう。
……あ、お母様が居ました。
「シィナ!砦に向かって!」
「お母様?何があったのですか?」
「お祖父様が大変らしいのよ!」
「お祖父様?」
嫌な予感がします。
その場で砦に移動しました。
「うおっ!?おおっ!シィナ!」
「お祖父様?あれ?元気ですね?」
「ワシは元気じゃ!はっはっはっ!!」
……少しホッとしましたが……事情を確認させてください。
お父様やお兄様たちも砦にいましたので、緊急事態とやらを聞いてみます。
何か会議をしていました。
「シィナの……いや、他国の力を借りたい」
「砦の奥……密林で精霊樹らしき物を見たらしいんだ」
「え?精霊樹ですか?」
「ワシが見つけたんじゃ。遠かったがアレは間違いない」
どうやら海への開拓作業途中で、お祖父様が密林の魔物を追って奥に入っていったらしいのです。
以前上空から密林を見た事がありますが、ざっとしか見ていませんでしたね。
「精霊樹なら下に精霊結晶が埋まっている筈なのでいくらあってもいいですが……」
これは大変になりますよ。
未開の地ならではの驚きですね。
「まず精霊樹を確認してからですね。お祖父様、案内できますか?」
「道に印をしたから大丈夫じゃ」
「これから支援をお願いしてきます。少し待っていてください」
「助かる。こちらも準備しておこう」
エストニアへ行き、リュデル王や各国の王様に状況を説明します。
まだ未開の地なので危険なのですが、王族にとって精霊樹は絶対に保護するもののようで、積極的になってくれます。
今回は掘削作業ではなく、魔物対策の強い騎士が欲しいです。
そうお願いしたら一筆書いてくれました。
その書状を持って各国の精鋭を集めていきます……これは私の訓練にもなります。
たくさん移動魔法を使う事になりますからね。
そしてようやく最後の騎士を砦に連れてくる事に成功しました。
各国の精鋭がお兄様たちと会議をしています。
……100回近く移動魔法を使うのは疲れました。
また戻す作業もありますからね……それは後で考えましょう。
「では精霊樹探索を開始する!話をした通り素早い魔物もいるので警戒は常に!リンドブルグの魔物は一味違うので気合を入れろ!」
「「おおっ!!」」
お父様が格好良いです。
お兄様たちも普段より凛々しいです。
私はお祖父様と一緒に行きましょう。
「シィナ……もう肩に乗ってくれないのか?」
「少し大きくなったので恥ずかしいのです」
「まだシィナはちっこいままじゃぞ?……」
……結局お祖父様の肩に乗って移動していきます。
しょんぼりした可愛いお祖父様は卑怯です。
各国の騎士に見られながらはやはり恥ずかしいです。
「シィナ様、今回もしっかりお護り致します!ご安心ください!」
エストニアの騎士にはグエンさん率いる騎士たちが参加してくれました。
他にもエージントの船で一緒だった騎士も居ます。
結構知っている騎士が参加してくれたので心強いです。
……知っているからこそ恥ずかしいのですけど。
「お祖父様、疲れたらちゃんと言ってくださいね」
「確かに……少し重くってきたのぉ……成長しているんじゃな」
ちゃんと成長しているのです。
たまに成長痛で足が痛くなったりしていますから。
砦の外側を歩いて行軍していきます。
リンドブルグの兵士や騎士が200人。
各国の騎士が100人程です。
今回はお馬さんはいません……密林に入っていくので、全員が徒歩です。
でも途中まで立派な石畳が出来ているので歩きやすそうです。
街道はこうやって作られていくのですね。
それに道幅が広くなっています……頑張っているのですね。
しばらく歩いて行くと魔物は出てきませんが、石畳に剣が一本刺さっていました。
お祖父様の印はあの剣のようです。
そして印から密林へ方向を変えます。
ここからは私もお祖父様から降りて険しい道を歩いていきます。
足元は太い木の根がたくさんあって歩き辛いです。
鎧を着ている騎士は更に苦労しています。
……こんな悪条件の中でお祖父様は魔物を追いかけたのですか……凄いです。
「進行方向左!魔物だ!素早いぞ!」
先頭を行くお兄様たちの方から声がします。
早速出くわしたようですが、騎士数人で仕留めたようですね。
後続の隊で魔物を地面に埋めていきます……こういう時は人が多いので手分け作業が出来て効率的です。
……たまに木が折れています。
大きな魔物の居る証拠です……気を付けましょう。
また獣の魔物が襲って来てしっかり退治していきます……しばらくこの繰り返しでした。
私も土魔法で埋めやすくしていきます。
騎士の中には貴族もいるので、魔法を使っている人もいます。
少し汗ばんできた頃、突然湖が現れた時は驚きました。
そこまで大きくはないですが、太陽の光と水の香りで爽やかになりました。
そしてお祖父様が叫びました。
「アレじゃ!アレは精霊樹じゃろう?」
……ん?確かに精霊樹です。
あの色は見間違う訳ありません…………ですが……え?
「お、お祖父様!何本もありますよ!?」
「だから言ったじゃろう!精霊樹がたくさんあると」
「私は聞いていません!」
「ん?そうだったかの?」
……ああ、普通の大木の陰になっていたのですね。
これでは空から見えなくても不思議ではありません。
少し遠いですが、軽く見ても10本近い精霊樹があるように見えています。
湖で小休止を取ってからですね。
森の動物が水を飲みに来ています……癒やされる光景です。
あ、逃げちゃいました。
「み、湖奥!!魔物です!」
「でかいぞ!!囲め!」
「後方からも魔物!!」
「こちらにも魔物多数!!」
「四方から来ます!!」
うっ!?囲まれています!大きい魔物や素早い獣です!
木をなぎ倒して魔物が進んで来ます。
「シィナ!空に居るのじゃ!」
「はいっ!」
お父様たちは湖を背にしていきなり危険な状態になっています。
空から援護ですっ!
大きな魔物へびーむこーせんですっ!
あれ!?当たったけど効いていません!びーむこーせんは細い光なので大きな魔物にはあまり効果が無いようです。
なら、連射でどうですかっ!
「やぁああっ!」
ドスドスっと鈍い音がして大きな魔物は倒れこみました。
よし、これならいけます!
素早い魔物を騎士たちがどんどん倒していきます。
さすが各国の強者です。
貴族は剣以外にも杖で大きな魔物を攻撃しています。
お兄様たちもしっかり強いです!
お父様は指示出しが的確でさすがです。
お祖父様は大きな魔物を……まっぷたつにしていました。
お祖父様の強さは例外です、ありえません。
でも次々と魔物が襲ってくるので凄い光景となっています。
私は湖の中央で傷付いた方を水魔法で癒しましょう。
「てや!てや!傷付いた方は湖へっ!てや!」
援軍を呼んで正解です。
密林の魔物は危険過ぎます。
そしてようやく魔物の襲来は収まりました。
魔物の遺体が凄い数です。
皆さんお疲れのようなので土魔法で埋めちゃいましょう。
「……なんじゃあの土魔法は……ありえん」
「シィナの魔法は相変わらず非常識だ……」
「賢者様すげー!」
よし、完了です。
怪我人を癒してさっさと目的地まで行きましょう。
ここはおっかないのです。
その後の行軍は凄く平和でした。周囲の魔物はあらかたやっつけたようです。
動物の姿は見られますが、特に怯えることなく木の実か何かをゆっくり食べていました。
あの様子なら大丈夫そうです。
色々とありましたが精霊樹の元に辿り着きました。
王都の精霊樹と同じように青く光っています。
この場所を一言でいうと精霊樹の森です。
森という程の数ではありませんが、軽く見ても50本以上あります。
それぞれ太く立派な大木です。
精霊さんも居ます……ふよふよ光が漂っていますね。
……魔素を確認してみましょう。
精霊さんが魔素で視界が見えなくなっていたのを思い出しました。
するとここには魔素が全くありません。
よくわかりませんが……精霊樹と精霊結晶のお陰でしょうか?
因果関係を調べる事は今は出来ませんが……やはり精霊樹の近くは心地良いです。
ここは絵を描く必要はありません。
たぶん一生忘れる事はないでしょう……地面からはたくさんの枝……青い木々……精霊さんの話し声が微かに聞こえます。
……ここの精霊結晶はそのままにしておきたいです。
ですが……もし各国の精霊結晶で魔素吸収が間に合わないようでしたら……使うかもしれません。
そこは女神様に謝っておきます。
「お父様、ここまで街道を引く事は可能ですか?」
「ああ、可能だ。この光景は街道を引くに値するな」
耳長族が知ったら必ず住み着くでしょう。
それほどの光景が広がっています。
まだまだ密林は広大です……他にももしかしたらこんな精霊樹の森があるかもしれません。
お祖父様の発見を気長に待っていましょう。
こうしてリンドブルグ領の精霊樹騒ぎは一旦幕を降ろしました。
正直ここで掘削作業はできません。
街道が引かれれば可能かもしれませんが、今回のように300人規模の魔物対策を常にしなければなりません。
私が強引に土魔法で掘り返す方法もありますが、精霊樹を伐採でもしないとできないでしょう……王族が伐採を許可するとは思えないので、それは最終手段かもしれません。
ですがそんな事は私はしたくないですね。
こんなに美しくて神秘的な光景を傷付けたくありませんので。
……密林一帯を破壊しなくて良かったです。
やはり無駄な森林破壊は良くないと思います。
もしかしたら将来、ここに王族の城が建つかもしれませんが、それはまだまだ先の未来でしょう。
「報告は以上です、精霊樹の森は忘れてください。今は魔素吸収を第一に考えましょう」
「……王族として保護したいが、それは今ではないのだな」
「リンドブルグ領か……街道ができたら是非行ってみたいものだ」
エストニアで報告をしました。
疲れました……100人の移動魔法はしんどいです。
ですが、これからドワーフさんを各国に移動させないといけないので、いい練習になりました。
これからが本番なので気合を入れましょう。
ドワーフ王国へ進捗具合を確認をしに行ってみます。
精霊結晶が運ばれたのは城にある王家の工房です。
街には他にも個人の工房もたくさんありますが、ドワーフ王が全ての工房長を集めて作業を行っています。
詳しくはないですが、お祖父様の使う付与魔法を文字として彫り込んでいくような作業です。
その文字が魔文字らしいのです。
文字一つに色々な意味があるとかで、組み合わせると二文字で何十という深い意味になるとか。
それが何百何万と組み合わせていくので、途方もない意味を持ってくるのです。
正直難しすぎる言語です。
エストニアのエルフ族から忘れ去られたのも理解はできます。
小さな魔石に彫り込むのは技術も必要ですが、今回の精霊結晶は大き過ぎるので別の意味で苦戦しているようです。
「オレたちドワーフ族は文字を形で覚える。一度作ってしまえば早いんだが……いや、今回は彫り込むだけでも時間が掛かるな」
ドワーフ王は自分でも作業をしています。
エルンストさんの息子さんたちが魔文字指導をしながらの作業で、最初の作業が一番難しいようです。
差し入れで、美味しそうな物を用意してきましたが、全員真剣に作業をしているので邪魔はしないでおきましょう。
ちなみに中身はエルンストさんのところで採取されたキノコなどもあるので、種族に配慮した物です。
ドワーフ族は塩辛い物とお酒が大好物らしいです。
お酒って美味しいのかな?もうすぐ私も飲める年齢になりますが……
シュアレお姉様はたまにお母様とかお友達とゆっくり飲んでいました。
果実酒は美味しいと言っていました。
他にも果実以外にもお酒はありますが、詳しくないので今度勉強しましょう。
……ハチカちゃんたちやフォルナちゃんと飲むお酒は楽しみです。
まだ少し掛かるとドワーフ王は判断していたので、少し掘削作業も見て来ましょう。
リュデル王国の移植先の掘削作業場では、たくさんの男性が土を掘っています。
それから滑車や荷車で掘った土を地上へ運んでいます。
疲れた人は交代で休みながらの作業で、力仕事は大変そうです。
「シィナ様!視察ですかな?」
「はい、エイドジクスさん。問題はありませんか?」
「今のところ怪我人も居ないので大丈夫です。調理器具も充実しているので皆さん美味しそうに食べていますよ」
エイドジクスさんは作業場で調理をして、作業員への食事を作ってくれています。
私の屋敷で料理研究だけをして遊ばせているのも勿体ないので、ここで腕を振るっています。
私の財産は……今とんでもない額になっているようで、使い道のあまりないお金でここを支援しています。
普通の貴族令嬢はおしゃれやお化粧品、お茶会とか服とか宝石とか……まあお金が掛りますが、私は甘味と料理くらいで十分幸せなのです。
お金を使って経済を回していかないとですね。
「シィナ様、新作がたくさんあるので、屋敷へも帰って来てくださいね!」
エイドジクスさんの新作なら楽しみです。
今度ゆっくり頂きましょうか。
以前ずっと放っておいたら泣きついてきたので大変でしたから。
定期的に帰らないと面倒な事になるのです。
……さて、今日は色々と現地を訪ねてみますか。
報告だけでは見えてこない部分もありますからね。
完全に暇になった私は、まだ行っていない小国へ向かう事にしました。
と言っても一度行った事のある、大きな国から船や馬車で数日程度の旅です。
大きな国を中継点にすれば結構早く着きます。
小国と言ってもリュデル王国並の大きさだったり、リンドブルグ領くらいの国もあります。
全ての国に精霊樹があり、近場の大国が移植作業の援助をしています。
なのでどこの国に行っても同じような進行具合で、道具も人も方法も十分事足りています。
これがエストニアで王様が集まっている効果です。
助け合わないと国が滅びるかもしれませんから、みなさん真剣です。
「お嬢様、これで……全部の国ですよね?」
「……たぶん……そうだと思いますが……あれ?何か忘れているような気が……」
世界地図を見ながら私とレーアは首を傾げます。
東西南北の大陸や島国を確認しますが……国は全部制覇したと思います……が、何か引っ掛かります。
「……ヒルデルート国じゃないですか?」
「ああっ!忘れていました!」
……ヒルデルート国の皆さんごめんなさいっ!
自国の大陸をよく見ていませんでした。
気付いたミオに感謝です。
ということで、早速ヒルデルートに向かうのですが……海から船で行くか、陸から馬車で行くか……どうしましょうか。
……よし、フォルナちゃんに会いたかったので、レーゼンヒルク領にしましょう。
恐らく船でもそこそこ時間が掛かると思うので、レーゼンヒルク領からの方が気が楽ですね。
……ヒルデルート王には予定通りと言っておきましょう。
予定通り、最後に向かう国はヒルデルート王国です。
本当はエストニアの北から船で向かうのが最短なのですが、大きな船が魔物に沈められたようで、今は小船しか無いようです。
エストニアの南には大きな港と船はあるのですが、北にはあの漁村しかないのです。
文句を言ってもしょうがないので、予定通りレーゼンヒルク領から向かいます。
なんだか久しぶりの光景です。
やっぱり自然が豊かな街はしっくりきます。
「シィナちゃん!お久しぶりです!」
元気なフォルナちゃんと再会できました。
今は秋休みの時期ですし、フォルナちゃんとは文のやりとりはしていましたからね。
「……シィナちゃん背が伸びましたね」
「……フォルナちゃんはお胸が大きくなりましたね」
約1年ぶり……かな?フォルナちゃんはすっかり大人らしくなっています。
恋をすると大きくなるのでしょうか……フォルナちゃんの成長は凄いです。
多少……背は伸びましたが、私のお胸は成長する気配がありません。
……解せません。
少しだけお家にお邪魔して、お茶を一杯だけ頂きました。
たまには女の子同士の会話を……と思っていたのですが、フォルナちゃんも学院を休学するかもしれないようです。
貴族としてのお仕事をするとか……精霊樹移植の計画の余波は、このレーゼンヒルク領にも来ているようです。
王都とヒルデルート国の両方に人を派遣していて、大変だとか。
領の維持管理も領主一族の仕事ですからね。
「もう少し頑張ってください。近い内に解決させますから」
「……シィナちゃん無理してない?大丈夫?」
「私は全国の美味しい物を食べているので大丈夫ですっ!……今度他国に案内しますね」
「はいっ、楽しみにしていますっ」
早々に話は切り上げて、用意してくれた馬車に乗り込みます。
騎士の護衛は断わりましたが、ヒルデルート国へ派遣している騎士の交代要員を出すと言われたので断れ切れませんでした。
人手が足りなくて忙しいというのに……申し訳ないです。
なるべく早く着きたいので、荷物は最小限です。
レーアとミオは今頃屋敷で色々と用意してくれています。
私と騎士たちの食事や、お馬さんの分の草まで色々と頼みました。
なんなら夜は屋敷で泊まってもいいようにしてあります。
移動魔法を利用した最速の旅です。
景色を楽しむような事は考えていませんので…………あ、いい景色です。
……景色くらいは楽しみましょう。
普通の馬車なら20日以上掛かるそうですが、目標は10日です。
お馬さんへ回復薬を与えていくと、かなり早く行けますから。
でも無理はさせません。
回復薬は万能ではないので、お馬さんを休ませる事は必須です。
少しでも早く行きたいですが、焦って何かあったら駄目なのです。
こうしてヒルデルート王国への旅が始まりました。
途中の村や街を通り過ぎ、どんどん進んでいきます。
見通しが良くて魔物の心配があまりない場所で休憩したり、夜は騎士やお馬さんをリュデル王国の屋敷に招待したりします。
レーゼンヒルクの騎士たちは驚いていましたが、数日も経過するとだんだんと慣れていきました。
馬車自体は街道付近に放ったらかしになっていますが、紋章入りの馬車をどうにかする人は居ないでしょう。
山脈からの大きな川があったり、草木の感じも少し違います。
リンドブルグ領やエストニア国とも雰囲気が違っていて、地続きですが他国という感じが出てきます。
ヒルデルートの王都へ近付いていくと、街道の多くの人が色々と物資を運んでいました。
王都再建の物資だそうです。
魔物の氾濫で復興をしている最中のこの国は皆忙しそうに働いていました。
ですが、多くの人が笑顔でいました……この国の民もいい人ばかりで頑張っているのです。
支援をしているのはリュデル王国だけでなく、エストニア王国やポニカデン王国など近隣の国も支援しています。
確か会議室の資料で読みました。
港があるのはいい事ですね……陸路以外にも海路からも支援物資が運びやすいですから。
以前船で行った北国程ではありませんが、やはりこの国も少し寒いです。
季節はもう秋を終えた頃ですからね。
もう少ししたら雪が降ってくるかもしれません。
冬が始まると旅ができなくなるので、この国が最後の国で良かったです。
目標の10日ではありませんでしたが、12日目に王都が見えてきました。
少し離れたところから見えているだけでも、城壁の一部に亀裂があります。
遠視の魔法でよく見てみると、多くの人が修復作業をしているようです。
魔物があそこから入り込んだのでしょうか……恐ろしい光景です。
城壁に近付くにつれて、壁に魔物の痕跡の跡も見えてきます。
王都の中はどうなっているのでしょう……不安になります。
ですが、その不安が的中しなかった事に感謝です。
王都の中は活気があって、傷付いた建物は多いですが修復作業をしながらも笑い声が聞こえています。
本当はこの場所を覚えたら移動魔法を使う予定でしたが、教会へ向かいます。
エストニアの女の子のように傷付いている人がいるかもしれません。
「シスター、回復薬は十分間に合っていますか?」
「ええ、今は十分備えもありますが…………黒い髮……もしかしてシィナ・リンドブルグ様でしょうか?」
「はい、重体の人はいませんか?怪我の治りが遅い人はいませんか?」
回復薬の備えはあるとの事……良かったです。
一応確認しましたが、この教会には聖女様が居るそうです。
若い聖女様が回復魔法を頑張ったらしいので、今は軽症の人も居ないとか……ここは大丈夫そうですね。
女神様の像にお祈りをします……魔物の氾濫でお亡くなりになった騎士や民が、女神様の元に迷わずいけますように……
城に行って賢者エトワルド様に面会もしました。
ヒルデルートの王族と一緒に復興会議をしていて、忙しくなされていました。
精霊樹関係の現状報告などはしましたが、ヒルデルート国の復興を頑張るそうです……
「そっちは任せた……賢者として頑張りなさい」
そう……言っていました。
いつもの飄々とした感じではなく、私の成長を望んでいるような……お祖父様もたまにああいう表情を見せます……お年を召された方特有の優しい笑顔でした。
……あれが第三王子のお兄さんたちですね……年上で格好良いです。
良かった……第三王子ことドノヴァン王子は、この国に戻って来ているようですが、今は近くの街へ視察に行っているようです。
またモガネルとか渡されても困りますから、移動先も覚えたし絵はまた今度にしましょう。
リュデル王国の屋敷まで移動して、ヒルデルート王国への旅が無事に終わりました。
これで全国各地へ移動できるようになりました……何気に凄いのです。
後はドワーフ族の精霊結晶の加工次第ですね。
気が抜けたのか、少し疲れました……今日は屋敷でまったりしましょう。
……ああ、足が痛いです。




