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黒髪賢者の恩返し  作者: しんのすけ
第4章 黒髪の賢者
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第54話



 世界会議は一旦中断する事になってしまいました。

 まず本当に魔石で魔素が吸収できるかの検証をするのです。

 魔文字という知識はエルフさんに任せるしかありません。

 もしかしたらまだ魔文字を知っているエルフさんが居るかもしれないという微かな希望を信じるしかないのです。

 私に出来る事は魔石の勉強くらいでしょうか。


「これだけ賢者が居ればあの魔石の力を試せるぜ」


 ドワーフのダイコ王は各国の賢者を引き連れて、エストニア王城の宝物庫へ 向かいます。

 なんでも大きな魔石をその昔、このエストニア国へ献上したとかなんとか……エストニア王も宝物庫の中にある物はなんでも使っていいと言っていました。

 皆必死なのです……ドワーフ王は凄く張り切っていますけどね。


 騎士が宝物庫の鍵を開けてくれたので中に入ります。

 ……たくさんの棚が整然と並んでいます。

 宝石や絵画……豪華な剣や鎧……これは目の保養になるのです。

 私も一応女ですので、綺麗な物は好きですが……ここは凄すぎて……お母様とシュアレお姉様ならもっと感動していたでしょう。

 確か……あの宝石はモガネル…………王妃様が身に着けるような装飾品もたくさんあります。

 ……私はハチカちゃんの首飾りが一番思い出があって好きなので、あのような装飾品は豪華すぎて似合わないですね。


 ドワーフ王はそんな宝石類には興味が無いのか、ためらわずに奥へ進んで行きます。

 目的の魔石の場所を何故他国の王様が知っているのでしょう……

 疑問はありますが、今はそれどころではないのです。

 私たち賢者一行も辺りを見ながら進んで行きますが……何か布地が掛けられている物があります。


「あったぞ!こいつが魔石だ!」

「「「え?」」」


 え?いや待ってください……大きな魔石と聞きましたが……大き過ぎませんか?だって……え?宝物庫の入口より大きいのですが。

 ドワーフ王が布地を持って、勢い良くバッと引くと……そんなバカな事が……お祖父様3人分くらいの高さがある魔石が現れました。

 これは他の賢者様も大きな口を開けて驚いています。


「この魔石はオレが若い頃に掘り当てた魔石だ!どうだデカいだろう!……こいつのせいでドワーフの王になっちまったがな」


 ドワーフさんの価値基準が分かりませんが……本人がそう言っているなら本当なのでしょう。

 それにしても大きい魔石です……黒光りしていてまるでコレは…………


「会議の時、耳長族が言っていた事……覚えているか?地中から魔素が出てくるとか言っていただろう?そこでオレは思いついたんだが……魔石は魔素の塊なんじゃないかってな」

「魔石が魔素の塊じゃと?聞いたこともない」

「魔石は地中から発掘される物だ。そもそも魔石ってのが何なのかのが良くわかっていないんだぜ……ただ魔力を溜め込む石ってことしかオレは知らない」

「魔素が……長い時間をかけて結晶化した……という事でしょうか?」

「おっ!さすが黒髪の賢者だ!オレが言いたかった事はそんな感じだ!」


 お姉さんの世界でも確かそんな物があったような……名前は忘れましたが、液体や気体が結晶化する現象を何かの本で読んだ記憶があります。

 お姉さんのお父様が持って来てくれた本でした。

 

「……お前頭いいんだな……そんな現象は初めて聞いたぞ」

「ペアレン、言い方に気を付けなさい」

「わ、わかってるよ姉上……」

「そこの小僧、ほれ!その魔石へ魔力を注いでみろ」

「は!?こんな小さな魔石なんかに俺の魔力が耐えられる訳ないだろ!イタッ!」

「い・い・か・た……ドワーフ王に失礼でしょ」


 ドワーフ王は大きな魔石ではなく、手に持っていた指先程度の魔石をペ!アレンさんへ放り投げました。

 ペ!アレンさんは文句を言いながらも魔石に魔力を注いでいるようです……お姉さんのポーラさんが上手く誘導している感じですね。

 天才の扱いが上手です……さすがお姉さんです。


「……っ!?なんだこの魔石っ?破裂させる勢いで注いでも……破裂しない?」

「おう、それが魔石本来の魔力を蓄える力だ。その魔石は無加工だからな」


 天才賢者の魔力でも耐えられる程の魔石……なるほどそんな感じなのですね。

 ドワーフ王の話では、人が使いやすくするために魔石を加工しているとか。

 魔力の蓄える容量が小さくなる代わりに効率良く使えるようになるようです。


「くっ!……はぁぁあっ!」


 ペ!アレンさんは気合を入れて魔力循環をしているようです……するとパンっと弾ける音がしました。

 小さな魔石が許容量を超えて弾けたようです。


「おー!さすが賢者だな!魔力量が桁違いだ」

「ハァハァ……と、当然だ!俺はポニカデンの天才賢者だぞ」

「まあ、こんな感じで魔石の吸収する量はとんでもないんだ。どうだ?黒髪の……この特大魔石ならいけるんじゃないか?」

「…………」


 う〜ん……どうでしょう?どの程度吸い込むのかがいまいちよく分かりません。

 それに……


「私は……いえ、以前女神様が実験はしていたのですが、一度に魔素を消費しても…………世界中の魔素をこの魔石一つで吸い取れるかは……正直分かりません」 

「では各地に魔石があればできるか?」 

「エストニア王?……そうですね、各町や村などにこの大きな魔石があれば可能かもしれません」

「こんな大きな魔石は滅多に発掘できないぞ!?」

「いや、ドワーフ王……大きな魔石には心当たりがある。丁度各国の王がこの城にいるから丁度良い。会議を再開するぞ!」


 エストニアの王様には何か考えがあるようです。

 宝物庫を後にしてまた会議室へ向かいます。

 それにしてもどうやってあの大きな魔石を中に運んだのでしょう?

 ……入口を破壊でもしないと…………豪快なドワーフ王なら可能性がありますが、深くは考えないようにしましょう。



 そしてエルフ族以外の王様たちがまた会議室へ集まります。

 エルフの方々は早速情報を求めてどこかに行ってしまったようです。


「皆、精霊結晶を使う時が来たようだ」


 エストニア王が各国の王様にそう伝えると、会議室の王様方が一斉にざわつきました。

 精霊結晶?初めて聞いた単語です。


「あん?精霊結晶ってのはなんだ?ドワーフ王のオレが何故知らない?」


 ……そういえばドワーフ王もその呼び名の通り王様です。

 ドワーフ王以外の王様は人族以外にも居ますが……何故でしょう?

 そしてその答えは単純なものでした。

 

「先程の宝物庫の魔石が精霊結晶と呼ばれる物だ」

「は!?アレは魔石じゃないのか!?」

「それよりもエストニア王……良いのか?ここには王族以外も多い……」

「そうだ、これでは女神様に申し訳が立たぬぞ」


 各国の王様たちが否定的な事を言い合います。

 とりあえず静観しているほかありません。

 そしてエストニア王が立ち上がります……

 

「今この一刻が惜しい!精霊結晶はこの時の為に女神様が与えて下さった物とワシは考える!そなたらは地上が魔物で溢れ返った姿を女神様にお見せするつもりか!」


 エストニア王の目は真剣でした。

 他の王様たちはそれぞれ何か考え込んでいます……それはリュデル王も同じでした。

 あの大きな魔石……精霊結晶と女神様は何か関係があるのでしょう。

 私や賢者様たちも何の事かわからず、事の成り行きを見守っています。

 すると、意外にもリュデル王がゆっくり立ち上がりました。

 

「ワシもエストニア王の意見に賛同する。きっと歴代の王たちもこの判断をするであろう」


 リュデル王は普段お茶目なところがありますが、この時ばかりはエストニア王のように真剣な表情をしていました。

 そして各国の王が立ち上がり、無言で頷き合います。


「……オレだけ何も知らん!なんなんだ精霊結晶というのは!?」

「ドワーフ王、説明する。各国の賢者も聞け!まず精霊結晶は精霊樹の真下に埋まっている魔石だ」

「はあ!?オレは精霊樹を切り倒すなんてバチ当たりな事はしていないぞ!」 

「ああ、先代ドワーフ王から事情は聞いておる」

「……何故オレに黙っていた?」

「そう睨むな……理由はある。ドワーフ族は魔法の適正が少ないであろう?その代わり腕力や体力……手先の器用さなどが優れている種族だ。そう女神様に創られた種族であろう?」

「お、おう。……改めて言われると照れるぜ」


 ドワーフ王は迫力がありますが、意外と可愛いのです。

 ……この世界や種族も……なにもかもが女神様の創造物……私も子供の頃にそう教わりました。

 なので知性ある種族は女神様に恥じない行動をするのです。


「精霊樹は女神様からの賜り物……だがドワーフ族にはあまり恩恵の無い物でもあった。人族なら杖の素材を、耳長族は精霊樹の側に居るだけで浄化されると聞く……ドワーフ王、あの魔石を掘り当てた時……先代から何か言われなかったか?」

「…………オレがまだ子供の頃……先代からそこを掘れと……言われた。何故知っている!」

「先代の王へ女神様から神託があったそうだ。お主に魔石を掘らせ、次の王にするようにと……そして精霊結晶をエストニアへ献上するようにとな。つまり女神様はこの世界会議も予知していたし、精霊結晶が必要になることも予知していたのではないか?少なくともワシはそう思っている」


 ……予知……女神様なら未来を見通す事も可能でしょう。

 もしかしたらこの魔素対策は成功するという事でしょうか?


「だが、精霊樹なんて何も無かったぜ!?何も無いまっさらな土地だった!」 

「先代によってお主が産まれる前……精霊樹は別の土地へ移植したらしい」

「…………先代……そんな事一言も……」

「ドワーフ族らしい無骨な王だったな……」


 エストニア王は優しくそう言いました。

 ドワーフ王は黙っています……先代の王様を偲んでいるのでしょう。


「帰ったら一発ぶん殴ってやる……あのクソジジイ覚悟してやがれ」


 …………まだご存命だったようです。

 手加減してあげてください……女神様の元に強制的に向かわせるのはダメなのです。


 ですがなんとなく全体像は見えた感じがします。

 精霊樹の下に埋まっている精霊結晶という大きな魔石。

 精霊樹は各国が大事に管理しているので、もしかしたら大陸中……いえ、世界中で魔素を吸収する事が可能かもしれません。

 一気に未来への展望が明るくなりました。

 エストニア王の話しでは、女神様の予知も後押ししてくれていますからね。


「話の途中で失礼……長耳族の同胞へ聞き取り調査をしてきました」


 おっ!エルフの族長たちが戻って来ましたっ。

 これで魔素問題が解決したかもしれません。


「申し訳ありません……やはりエストニア王国中の同胞に魔文字に詳しい者は誰も居ませんでした」


 あれっ!?そ、そんな!?今の流れは一気に喜び合うところでしょう!?  

 なんで誰も居ないのですかっ!

 本も無いし、誰も継承していないなんてあんまりです!!

 誰もが大きく落胆したのです……絶望です……どうしましょう?

 

「じゃあエストニア王国以外で探せばいいんじゃないか?」

「「…………」」

「そ、それですっ!天才ですっ!」

「お?おお?俺は天才賢者だからな?」

「リュデル王!ちょっと行ってきますっ!」


 私はすかさずリュデル王国の王城前に移動しました。


「うわっ!賢者様!急に現れないでください!」

「失礼!緊急です!エルフ……長耳族の族長はどこですかっ!」


 お城には居ないとの事なので、今度は王都近くの精霊樹へ瞬間移動します。

 足元は草に覆われて、森の香りが凄く爽やかです。

 精霊樹は何も変わらずそこにあります。

 ……以前来た時は、学院の授業で杖の素材を取りに来ましたが、その時は騎士の姿は見かけましたが……エルフさんは何処でしょう?

 騎士の待機しているお家へ行ってみます。


「すみませ〜ん。誰か居ますか?」

「誰だ?……賢者様!?この場所へ何か御用でしょうか?」 

「長耳族に会いたいのですがどこに居ますか?急ぎですっ」

「あ、案内致します!!失礼します!」

「うっ?」


 何故か騎士の方に抱き抱えられてしまいました。

 ちょっと恥ずかしいのですが、楽ちんです。

 突然来た私が悪いのですが、下半身は騎士の格好で上半身は鎧を身に着けていません……なかなか格好良い青年です。

 精霊樹をグルっと回り込んで奥へ走ってくれます……この奧にエルフさんは居るのでしょうか?


 意外とすぐに立ち止まりますが……誰も……何もありません。

 ただ森があるだけです。


「おーい!緊急だ!誰か来てくれ!」

「ん?」

 

 ……どこに向かって声を出しているのです……か?…………ああっ!木の上に家がありますっ!これは盲点でした。

 恐らくエルフさんたちの住処でしょう。


「待たれよ……」


 すぐに上の方から返事がきます……エルフの習性や文化などは勉強したことがなかったので、この光景は初めて見ました。

 結構背の高い木なので真上は本当に盲点でしたね……よく見ると吊橋が沢山あります。

 意外と大きな家もあって、なかなか面白そうです。

 

「耳長族の家は初めて見ました」

「そうでしたか。なんでも大昔、魔物避けの為に高い木に住み着いたと言っていました」

「なるほど……森は魔物が多いですからね」


 ……賢者である私が騎士に教えてもらっています……もっと勉強しましょう。

 どうやってあんな高いところから降りて来るのかを考えていたのですが、答えはそのまま落ちて来るという荒業でした。

 かなり驚きましたが……登る時はどうしているのでしょう?

 エルフ族は人族よりも細身で身体能力も高いので、私の常識は通用しないかもしれません。


「どうされたか?」

「族長は居ますか?魔文字が無いと世界が魔物で溢れてしまいます!」 

「……意味不明だが、族長に伝えよう……賢者シィナだな?」 

「はいっ!急いでくださいっ!」


 無骨な感じの男性エルフは、振り向いて……飛び上がりました。

 ……木に飛びつき、また別の木にピョンピョン飛び移って行くのです。

 

「凄い身体能力ですね」

「ええ、あれが森の民と言われる耳長族です」

「……そ、そろそろ降ろしてください」

「失礼しました!……どうぞ」

「ありがとうございました」


 若い男性に抱っこされるのも良いものですね。

 お祖父様とはまた別で…………いけません。

 今はそういう事は考えないようにしましょう。



 しばらく待っている間も少しだけエルフさんの事を勉強させてもらいました。

 お年を召した方の睡眠時間が長いとか、加工された食べ物は食べないなど食文化も違うようです。

 甘味を食べないと聞いた時は信じられませんでした。

 一度ショートケーキを食べさせてみたいです。

 そして騎士と雑談をしていると、先程のエルフさんが見覚えのある方を連れて来てくれました。


「シィナ様、久方ぶりでございます。なにやらご用件があるとか?」

「えっと……エルンストさんでしたよね?ここの族長だったのですか」

「ええ、精霊樹の側に我ら耳長族は住み着きますから」 


 以前、賢者就任式で会話をしたエルフの族長さんでした。

 あの時はかしこまった衣装でしたが、今はもっと楽そうな服装です。

 ……若干お肌の露出が多いので目のやり場に困りますが……今はそんな事を言っている場合ではありません。


「エルンストさん!魔文字を知っていますか?」 

「知っていますが……どういった経緯でしょう?詳しくお話頂けますか?」

「では、詰め所でお茶でもどうですか?」

「そうですね、説明致します」


 歩きながらも世界会議の経緯を説明していきます。

 魔素の説明、精霊結晶や、ドワーフ族の事……王様たちの会話内容。

 騎士の詰め所でお茶を飲みながらお話していきました。


「……なので魔文字が無いと精霊結晶が魔素を吸収できないのです」

「ここ数百年はエストニア方面へ行ってませんでしたが……あちらの耳長族は魔文字を失っていましたか……情けない」 

「という事は!エルンストさんは魔文字を扱えるのですかっ!?」

「ええ。リュデル王国の耳長族は、親から子へ……知識も経験も受け継ぎ学ぶ。それは自然な事でしょう?」


 なんとかなるかもしれませんっ!

 世界中のエルフさんを訪ねる覚悟をしていましたが、いきなり知っている方に巡り会えました!


「エルンストさん!魔文字をドワーフ族に伝えて欲しいのですっ!」

「ふむ……私の子らで構わないか?族長としてこの地を離れられぬ」

「はいっ!よろしくお願いしますっ!」

「では数名連れて来よう。急いでいるのですよね?」

「ではこの詰め所へ来るようお願いします。私は一度報告に行ってきます!」



 詰め所からエストニア城の会議室へ移動して、王族やエルフ族へ吉報をお届けしました。

 精霊結晶を使う案しか無かったのでとても喜ばれました。

 リュデル王は若干得意気に自国のエルフ族を誇りに思うと言っていました。 

 これを期に、エストニアのエルフ族も魔文字を習得しようとの発言がありました……全てがいい方向へ向かっています。

 困った時は、お互いこうやって力を合わせて乗り越えればいいのです。


 少し緊張の糸が緩くなったので、世界会議は昼食兼休憩をする事になりました。

 なんだかんだで、王族の話しを聞いているだけでも結構頭を使うので疲れるのです。


「黒髪の賢者よ、そなたの移動魔法で随分助かったぞ……感謝する」

「リュデル王、お褒めの言葉は自国の耳長族へお伝え下さい。彼らが勤勉でいてくれた事に感謝しましょう」

「そうだな……エルンスト殿へ感謝の言葉を尽くそう」


 立食形式で色々な方から話しかけられます。

 良かった……皆笑顔で食事を食べています。

 お父様やお母様からも頭を撫でられたので、素直に嬉しいです。

 ……何故かドワーフ王とお祖父様がお酒を酌み交わして大笑いしています。 


「シィナ様、甘味をお持ちしました」

「ミオ、ありがとうございますっ」

「シィナお嬢様、こちらの甘味も美味かと」

「レーアもありがとうっ」


 ……ミオのお皿はサルの甘味が美味しそうです。

 ですがレーアのお皿はエストニアの食べたことのない甘味ばかりです。

 一口ずつ食べますが……幸せです。

 サルの甘酸っぱさもいいですし、食べた事のない果物を使った味わい深い甘味も最高です。


「シィナお嬢様、お茶をどうぞ」

「シィナ様、エストニア南方の果実を使った果実水でございます」


 レーアのお茶は私の好みで完璧です。

 ミオの持って来てくれた果実水はとてもさっぱりしていて……これも美味しいのです。


「「…………」」

「ああ……幸せです」

「シィナお嬢様、お茶のおかわりはいかがですか?」

「シィナ様、甘味もまだまだお持ちしますよ?」


 …………ん?なんだか二人が少し……怖いです。

 何かを張り合っているような…………いえ、気のせいでしょうか。


 部屋中笑顔の人が多いなか、何故か私の周囲だけ空気が違いました。

 私……何もしてないですよね?

 


 昼食休憩が終わり、会議の続きが行われます。

 休憩中にエルンストさんのお子さん四名を運んでおきました。

 お子さんというと語弊があるでしょうか……普通に見た目は青年のエルフさんたちです。

 ドワーフ王やエストニアのエルフさんたちと別室で専門的な会話をしていました。

 あちらは専門的過ぎるので任せるしかありません。


 こちらは精霊結晶の発掘作業、精霊樹の移植などを話しあう必要があるそうで、先代のドワーフ王のやり方を参考にするそうです。

 あんな大きな大木を移植するのは一大事業と言っていいですからね。

 大量の人手や地面を掘る道具なども作る必要があります。

 大きな国なら揃えられますが、小国への援助も必要になります。

 島国へも同様に人を派遣する予定のようです。

 これは世界中が一丸になる最優先事項なのです。

 お姉さんがいつ顕現するのか分からない状況なので、女神様に恥じない行動をしなくてはなりません。

 これは貴族も平民も関係なくやらなくてはいけない事です。

 貴族なら土魔法があるので、いろいろと貢献できそうです。


「よし、これで決定する。細かい事は後ほど詰めよう。……黒髪の賢者よ」

「はい?なんでしょうか、エストニア王」

「先程リュデル王とも話し合ったが、お主には各国へ旅に出て貰うことにする」

「え?あ、はい?…………ん??旅ですか?」

「一度行った場所ならば移動する事が可能なのであろう?」

「そうですが……各国と言いましたか?」

「ああ、そなたの協力でだいぶ事が早まる。……頼まれてくれるか?黒髪の賢者よ」

「ワシからも頼む」

「リュデル王……」


 王様二人が膝を着いて私にお願いしてきます。

 その行動を見た各国の王様も同様に同じく……膝を着いて……こんなの断れませんね。


「……私は女神様へ恩返しが出来るならなんでも致します」


 こうして私の世界一周の旅が決定されてしまいました。

 ……元々お姉さんも大陸一周とかを考えていましたから、いい機会です。

 魔石や精霊樹関係は私が手を出さなくても大丈夫でしょうし、私に出来る事をすればいいのです。

 皆さんの助力になれれば幸いです。


「おい、ポニカデンへ来いよ。いい国だぞ?」 

「……いえ、エージント国からにします。飛竜が出たのなら駆除した方がいいですから」

「おおっ!我が国は歓迎致しますぞ!黒髪の賢者様!」

「………………」

「はぁ……残念でした。もっと男として精進なさい」


 どうせなら島国から巡って行くのも悪くはありませんね。

 ポニカデン国はテンがあるので興味はありますが、今は飛竜討伐の方が最優先です。

 天才賢者は無視でいいです。


「シィナ、これは各国の王からの王命でもある。しっかり役目を果たしなさい」

「はい、お父様」

「また何か困った事があれば、ワシら家族に任せろ!」

「お祖父様、ありがとうございますっ」

「シィナ、頑張りなさい。いつでも帰ってきていいですからね」

「はい、お母様」

「……お母様は回復薬が欲しいから定期的に帰ってきなさいって言っているのよ」

「……わかっています、お姉様」


 本当にいい家族です。

 ……ダリルお兄様は遠くでお肉を食べていました。

 いいお兄様なのですが、たまに残念に思います……頑張ってください、色々と。



 準備もありますが、初めての船旅です。

 何を準備したらいいのかもわかりません。

 ですが、不安よりもワクワクした気持ちの方が大きいです。


「魔素を吸収することに成功したぜ!」

「まだ検証が必要ですよドワーフ王」


 会議室に大きな吉報が響き渡りました。 

 世界会議はまだ続きますが、私は信じて待ちましょう。

 女神様、もうしばらくでいいので私たちを見守っていてくださいね。

 

 

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