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黒髪賢者の恩返し  作者: しんのすけ
第3章 旅路
42/70

第37話



 今日も休日っ!

 昨日はフォルナちゃんと食事をしていたらおかしな展開になってしまった。

 あのエイドジクスとかいう料理人のせい……私を困らせる天才だね。

 はぁ〜……週明けにはアルベルト先生に色々と言われそうだな……

 ……ふと思う。

 逃げる時はどうしよう……と。

 もし賢者様や王族に捕らえられたりした場合どうしよう。

 私は自信がある……何か失礼をしてしまう自信だ。

 脚も自信はあるけど、走って逃げるのには限界がある。

 大人に囲まれたらそれまでだ……扇風機魔法で飛んで逃げる方法も一応ある。

 しかし室内では飛べない……頭をぶつけてジ・エンドだ。

 ……それこそ牢屋にでも入れられたら逃げる術が……どうしよう……

 杖がなくても私の魔法はそこそこ強い……やる気になったら牢屋くらいウォーターカッターで何とかなるかもしれない。

 鉄格子なら切れる自信もある。

 テレビだったか動画だったかは忘れたけど、ウォーターカッターで鉄を切っていたのを見たことがあるので、イメージは完璧です。

 だけど、鉄格子を切った後が問題ね……普通に怒られて終わる未来しか想像できない。

 ふむ……どうせ暇だし、少し考えてみよう。

 身を守るのは貴族令嬢なら当たり前だし、緊急の時に使える魔法があった方が心強い。


 レーアの淹れてくれたお茶を飲みながら考える。

 魔法の事なので検索しても出てこないだろう。

 ちなみに検索魔法は本で読んだ事のある知識のみだった。

 何故か動画やテレビで見たことのある知識は出てこなかった……

 ……映画のホリーホリーバッターくらいしかファンタジー知識が無い。

 何かないかな?バッターのホリーが使っていた魔法……分身魔法で活躍するホリー……分身は……逃げる為ではないよね?

 ラスボスとの草野球では4人になってホームランをしていた……

 少し卑怯なホリー……いいよね。

 他にも魔法はあった筈。

 色々と面白い魔法が出てきていた……瞬間移動とか使えるかな?

 遠く離れた野球場を瞬間移動していたシーンがあった。

 あれなら逃げるのには最強だね。

 できるかな?

 当然無属性魔法になる……例えばこの私の部屋から隣のレーアの部屋に瞬間移動できれば……

 レーアは今洗濯をしているので部屋には居ない……ちょっとやってみよう。

 私は願う……レーアの部屋に行きたいですっ!

 ……瞬間、視界がいきなり切り替わる……あ?ここは……レーアの部屋……


「うわっ!」


 私は椅子に座っていたので、座った体勢のまま尻餅をついてしまった。

 ……誰も居ないけどなんか恥ずかしい。

 お茶を持っていなくて良かった……私は立ち上がり、隣の自室へ入っていく。

 ……っていうかできてしまった。

 瞬間移動……ワープ?……凄くないですか?

 これなら捕まっていてもすぐに帰って来られる。

 捕まり放題である。

 椅子に座っては駄目だね……普通に立って使うか座るかしていないと転んでしまう。

 ……実家の部屋に行けるかな?

 少し怖いけど試してみるよ。

 ……お願いしますっ!実家の自室へ行きたいですっ!

 また視界が切り替わる…………いつもの実家だ。

 部屋には当然誰も居ない……でも窓は開いている……誰かメイドさんが空気の入れ替えでもしてくれているのだろう。

 ……これは凄い魔法です……バレないうちに寮の部屋へ戻ろう。


 無事に寮の部屋に戻ってきて、机のお茶を飲む……まだ温かい。

 ……凄い魔法を使ってしまった。

 感動していたけど、お母様の言葉を思い出した。

 

「無属性魔法の事は賢者様へ相談した方がいいわ。もし発表したら貴族に取ってどう影響するのか私では検討もつかないの」

 

 確かにその通りだと改めて感じた……

 どう影響するか……いい事もあるだろうけど、よくない事もありそうだね。

 ……うん……やっぱり賢者様に相談した方がいいかもしれないね。

 …………ジュリエッタさんの料理食べ放題じゃない?この状況は。


「ぃやったね〜っ!」

「お嬢様?どうされました?」

「っ!?レーア驚かせないでっ!」


 いつの間にかレーアが洗濯から帰ってきていた……あ〜……ビックリした。

 一応レーアには全部話している。

 瞬間移動の事も説明したけど、もうレーアは呆れるだけだ。

 レーア曰く……「お嬢様なら不思議な事ではありません」とのこと。

 考える事を放棄したレーアは全てこの言葉で済ませている。

 逆に頼もしく感じる潔さです。



 休日も終わり、通常の授業が始まる。

 今日は昨日と違ってだいぶ秋の気配が強まった。

 もう暑くはないし、過ごしやすい気温ね。

 まだ夏服だったけど、特に問題はない……朝食を済ませて私は職員室へ向かう。


「アルベルト先生、おはようございます」

「おはようございます、シィナさん」

「……あの、先生……賢者様にご相談したい事があるのですが、まずはアルベルト先生に相談したいのです」

「……構いませんよ、ここでいいですか?それとも何処か二人きりの方がいいでしょうか?」

「ふ、二人きりの方がいいです」


 ううっこのイケメンめ……言い方がなんかアダルトだよ……


「……と言っても空いている場所は……ああ、屋上ではどうですか?」

「構いません、私は先に行っていますね」

「わかりました。少ししたら私も向かいます」


 職員室を出て階段を上がっていく。

 屋上なんて久しぶりだ……階段を上るのはいい運動になるよ。


 屋上の扉を開けると、以前のように花の香りがしていい気分。

 夏の花が元気に咲いている。

 休みの間に手入れがされたのか、土が真新しい……庭師でもいるのだろう。

 実家のモルトさんのように手入れが行き届いている。

 私は奥の椅子の方へ歩いて行き、少し疲れた脚を休ませる。

 やっぱりここはいいね……久しぶりの屋上は癒やされるよ。

 ……でも放課後とかは生徒の逢瀬の場になるんだよね?

 そんな場所にイケメンと二人きりになるのか……いやいや、意識し過ぎだバカモノめっ!

 10歳前後離れていては恋愛もないだろう。

 そんな事より話す内容です。

 どうすれば穏便に説明ができるかだ……と、思っていたけど、さっきの扉が開いていく……

 言葉通りアルベルト先生はすぐに屋上に来てくれた。

 私を見つけた先生は噴水を通り越してゆっくりやってくる。

 ……日の光と噴水の効果で3割増しくらいでキラキラしているよ。


「お待たせしました……座っても宜しいでしょうか?」

「あ、はいっ!どうぞっ」

「ふぅ……屋上は疲れますね……シィナさんは大丈夫ですか?」

「毎朝走っていますので大丈夫です」

「魔法だけじゃなく、シィナさんは素晴らしいですね」


 アルベルト先生は最初に会った頃より少し柔らかくなった。

 最初はもっと愛想がなかったけど、今は笑顔もたまに見せてくる……

 イケメン度数が上がっているね。


「それで……賢者様へ何か相談事があるとか……どういった内容でしょうか?」

「……論より証拠です……先生、手をこうやってください」


 水を両手ですくうような感じにして見せると、アルベルト先生も同じ様にしてくれた。


「こうですか?」

「はい、ではそのまま動かないでください」


 私は四角の氷をイメージしていく…………すぐに手のひら辺りから冷気が発生していき、パキパキっと音が鳴る。


「こ、これはっ!?」


 もう慣れたもので、直ぐに四角い氷がアルベルト先生の両手に何個か落ちていった。

 一つ摘んで私は氷を口に含む。


「氷魔法です……あ、冷たくて美味しいですよ。お一つどうぞ」

「……氷魔法っ!?そんな魔法は聞いたこともありませんっ!!」

「なんかできました」

「コレは……冷たくて……本物の氷だ……」


 アルベルト先生は氷を摘んで観察している。

 驚いているけど、楽しそう……魔法大好き人間だね。


「シィナさんっ!これは大発見ですよっ!賢者様にもご報告しましょうっ!」

「あ……ええと、氷魔法だけではなくてですね……」


 ん〜っ……一番わかりやすいのはアレか。

 私は椅子から立ち上がり、噴水前の場所をよく見る。


「……シィナさん?」

「アルベルト先生、よく見ていてください」


 私は願いを込めて魔法を発動する。

 すると景色が変わり、私は噴水前に立っていた。


「はあっ!?えっ!?シィナさんっ!?」

「アルベルト先生、こっちですよっ」 

「ええっ!?い、一体何が起こったのですっ!?」


 アルベルト先生は立ち尽くして呆然としている……

 人が目の前から消えれば驚くか……種も仕掛けもないただの瞬間移動魔法です。

 あっちの世界ならマジシャンとして売れるね……

 私はゆっくりアルベルト先生の方へ戻っていく。


「ええと、無属性魔法を解明しました」

「無属性魔法を……解明?説明してくださいっ!貴女は……一体……」


 

 ……私は魔法道具店で貰った昔の賢者様の本を説明した。

 アルベルト先生は無言で私の説明を聞いていた。

 ただ、願いを込める方法はまだ黙っておく……これは賢者様に相談することだ。


「何度も言いますが、解明といっても私は昔の賢者様の本を読んだだけです」

「……その本を読めれば、誰でも無属性魔法が使える……と……」

「たぶんそうです、ただ私のお母様はこの事を発表したら貴族にとってどう作用するかわからないと言ってました……賢者様に相談しなさいと」

「……そうですね、誰でも無属性魔法が使えるとなると……どうなるかは私でも想像できませんね。確かに賢者様に相談した方がいいですね」

「昔の賢者様は解明できていました。ですが発表していなかったのでしょうか?本はあるのです」

「それは色々と検証が必要ですね…………その本は手元にありますか?」

「はい、寮の部屋にあります」

「シィナさん、これから城へ行きましょう。賢者様に直接相談した方がいい案件です」


 そうなるよね……でもどうしようか?不安で仕方ない。


「ええと、今日は帰って来れますか?私が戻らないとレーアが……側仕えのメイドが心配します」

「……ではそのレーアさんもご一緒にどうですか?もし一泊しても大丈夫です。城には来客用の部屋もたくさんありますから」

「……わかりました。ではどうしましょう?」


 トントン拍子に私のお城行きが決定されていく……学院長へはアルベルト先生が説明してくれたので、私はレーアに報告してから賢者様の本を持っていく。

 …………ついでに今までのレシピも持って行こう。

 エイドジクスさんには約束しちゃったからね。

 他にもかき氷のシロップとか泡立て器も一緒に持って行こう。

 なんんだかんだで背負い袋が必要になる。

 泊まる可能性があるので、レーアには悪いけど用意してもらった。

 まぁ瞬間移動ですぐに帰って来れるけどね。


「レーア、お城へは制服でいいですよね?」

「そうですね、以前第二王子様も制服姿でしたから大丈夫でしょう」


 うっ……そういえばお城はあの二人の王子様が居るんだった。

 今は授業中だから居ないけど……泊まらずに帰って来た方が安全そうだね。

 一応……フォルナちゃん宛に軽く手紙を書いてユエラさんへ渡しておいた。

 そろそろ馬車の時間なので、レーアと一緒に部屋を出た。

 マイヤーレ寮長に説明して、外出になるか外泊になるかわからないと伝えておいた。

 ……お城に行くだけで色々と面倒なのである。


 寮を出ると、既にアルベルト先生が馬車を手配して待っていた。


「アルベルト先生、お待たせしてしまい申し訳ありませんっ」

「いいえ、時間通りです。それに女性を待たせるのは貴族男性として失格ですので」


 くっ!このイケメンめっ!貴方はもっと無愛想キャラだったでしょ?

 よくわからないけど、紳士になってきたよ……

 

「シィナお嬢様の専属メイドをしております、レーアと申します。本日は宜しくお願い致します」

「ええ、こちらこそ宜しくお願いします……シィナさん専属教師のアルベルト・メイエットと申します」


 ……確かにそうなんだけど、専属教師と聞くとなんか違和感があるね。

 馬車に3人で乗り込んで、学院の敷地を離れていく……

 不安もあるけど、お城には行ってみたいと……少しは思っていた。 

 完全に観光気分になっていく。

 それと、みんなが授業中に私だけお休みみたいで、なんとなくいけない事をしている気分になるのよね。


「シィナさん、先程の移動した魔法はどこまでも移動できるのですかっ?」

「ええと……実際に行ったことがある場所で、頭に思い描け無いと……無理ですね……リンドブルグ領の実家には移動できました」

「それは凄い魔法ですっ!リンドブルグ領は馬車で何日掛かるのですか?」


 馬車では相変わらずアルベルト先生のテンションがおかしかった……

 レーアは何故か誇らしげにしていたけど。


 

 学院の馬車はお城へ進んでいき、衛兵さんの検問もある。

 アルベルト先生は顔パスのようで、すぐに馬車は橋を渡ってお城の敷地へ入っていく……

 もう知らない場所だよ。


「レーア、お城は大きいですね」

「まさか私までお城に行けるとは思っていませんでした」

「いつでも来てください。もう手続きは済んでいますので、シィナさんもレーアさんも歓迎しますよ」


 いえ、それは結構です。

 王族には関わり合いになりたくないので……そう言えればいいんだけどね。

 シュアレ姉様はここで踊ったことがあるし、お祖父様も以前図書室に行った事があるよね。

 あくまで貴族は王様の配下……のイメージです。

 詳しくは知らないけど、なんとなくそんな感じかな。

 お父様やお祖父様より偉いのだ……ああ……権力者は怖いよ。


 橋を渡りきると、白を基調とした綺麗な庭園のような場所が現れてきた……

 学院の屋上のような綺麗な光景……さすがお城だ。

 どこもかしこも美しい……実家の屋敷も凄いと思ったけど、ここはまた別格……お城は大き過ぎて現実味がないよ。


「レーア……凄いです。」

「そうですね夢のようです……」

「もうすぐ降りますよ」

 

 更に城の奥へ馬車は入っていく……ようやくお城の正面玄関……のようなところで馬車が停まる。

 ここで降りるようだね。

 アルベルト先生が先に降りて、エスコートしてくれる。


「あ、アルベルト先生、賢者様の後でいいので、お城の厨房に用事もあるのです」

「はい?厨房ですか?」

「副料理長のエイドジクスさんに呼ばれているのです」

「はぁ、わかりました、手配しておきましょう。では賢者エトワルド様の研究室へ参りましょうか」

「はい、お願いしますっ」


 階段を上がって行くと衛兵さんたちが待ち構えている……ここもアルベルト先生は顔パスで、私も学院の制服を着ているので大丈夫だろう。

 大広間は広大で……凄すぎる。

 首が痛くなるくらい上も見る……大き過ぎるけど凄く綺麗に掃除もされている……使用人さんたちが大変そうだ。

 ん?アレは王様の肖像画か……大きい……他にも肖像画が壁に飾られている。

 お……第二王子も描かれている。

 なるほど、今の王家一家か……お妃様と王女様かな?綺麗な人は絵も綺麗だね……優しそうな人。


 更に階段を上がっていく……

 

「あらっ!アルベルト様っ!」

「ご機嫌よう、セシリア様」


 ん?……あれ?この人って……

 さっき見た肖像画を見比べる……うん、間違いなく彼女だ。

 え?いきなり王族のお姫様?……うわっ……本物のお姫様だよ。


「……な、なんですのっ!?そちらの可愛い黒髪の女の子はっ!?」

「私が教えている学院の生徒ですよ……シィナさん」

「は、初めまして、シィナ・リンドブルグと申しますっ」

「……っ!可愛いっ!……私はセシリア。セシリア・ミュルグニク・リュデルと申します。……リンドブルグというとシュアレさんの妹かしら?」

「はい、シュアレは私の姉様ですっ」

「まぁっ!じゃあ私とお友達になりましょうっ!お茶にご招待致たしますわっ」


 …………なんか、このグイグイ来る感じ……ルルエラ先輩とよく似ている。

 つまり苦手な感じの人です。


「セシリア様、大変申し訳ありませんが、これからエトワルド様のところへシィナさんを案内しないといけないのです」

「ええっ!?……それは仕方ありませんね……」

「申し訳ありませんセシリア様……」

「時間が取れましたらセシリア様へ連絡致します。では後ほど……」

「シィナちゃんっ!お待ちしておりますわっ!」


 ……凄く良く似ている。

 一応捕まらずに済んだので良かった……でもお姫様は綺麗だった。

 姉様とお友達なのかは知らないけど、知ってはいるみたい。

 とりあえずアルベルト先生について行く……お城は大き過ぎて迷子になるかもしれない。

 

「シィナさん、ここが賢者様の研究室です」

「はい……」


 お城に入って5分くらいなので、比較的入口からは近い。

 ここなら覚えられるよ……ここは2階だよね?


「先生入りますよっ!」


 そうかアルベルト先生は賢者様の弟子だから先生呼びか。

 つまり、もし賢者様に私も弟子入りしたらアルベルト先生は兄弟子になるのかな。

 扉の奥でうっすら声がしたので、アルベルト先生は部屋に入っていく。

 ……うっ……部屋が……爆発している?凄い散らかっているよ。


「なんじゃアルベルトか……今日は学院に行かなくてよいのか?」

「先生……またこんなに散らかして……今日は素晴らしいお客様がいらしたのですよ」


 賢者様はこちらを向かずに何か机で作業していた。

 大きな部屋だけど、本や何かの魔法道具が散乱していて、おとぎ話に出てくる魔女の部屋のような感じになっている。

 レーアも辺りをキョロキョロと見ている……レーアの性格からしたら掃除したくて仕方ないといった感じかな。


「客?」

「私が教えている生徒を連れてきました……賢者の称号を与えられる方ですよ」


 賢者様はようやくこちらを振り向いて、私と目が……合わなかった。


「侍従ではないのか?ん?…………おおっ!すまんすまん。ちっこくて気付かんかったっ!」

「……シィナ・リンドブルグと申します」

「おおっ!リンドブルグ家の娘か……あの時の黒髪の娘か、入学式を覚えておるぞ…………賢者の称号と言ったか?アルベルト」


 ……そうだった。

 賢者様は賢者様っぽくないのだった……こう……近所に住んでいる元気なおじいちゃんみたいな感じだったよ。


「シィナさん、エトワルド先生に見せてあげてください」

「は、はい」

「ほう……何やら面白そうじゃのぅ……リンドブルグの娘、こっちじゃ」


 賢者様は立ち上がり、部屋の奥へゆっくり歩いていく……

 アルベルト先生もそれについて行った。


「……アレが賢者様ですか?」

「一応そうみたい……」


 レーアは変人を見た時のような顔をしていた。

 私も同感なんだけどね。

 とりあえず私も奥へ進んでいく。

 すると……アレ?ここ2階だよね?ベランダだと思っていた所は広かった。

 1階の屋根部分だろうか……土台と言ってもいいのかな……この大きなお城を支えている感じの場所だね。

 大き過ぎで非常識にも感じるよ。

 

 外?に出ると風が気持ちいい。

 見晴らしも良くて、王都の町並みも見えるいい所です。

 テーブルや長椅子も置いてあり、読書するのにはいい環境かも。

 お城の外壁で日差しもないので、夏は涼しそう。


 レーアと一緒に賢者様が座っている場所まで行く。


「どれ……リンドブルグの娘よ、腕前を見せて貰おうかのぉ」

「エトワルド先生、手をこうやってください」

「ん?こうか?」 


 アルベルト先生は屋上での出来事を再現していく。

 賢者様の両手で水をすくう手の中に私は氷を発生させた。


「…………これは……氷……の魔法かの?」 

「はい先生っ!新しい属性の魔法ですよっ!」

「ふむ。……間違いなく氷じゃな……これは凄い」


 キンキンに冷えている氷を賢者様も観察していた。

 アルベルト先生と同じ動作だったので少し面白かった。


「……これより大きな氷は出せるかの?」

「出せますよっ!」


 真夏の夜に出していた氷柱を出して見せる。

 レーアの身長くらいはある氷の柱だ。


「「はぁっ!?」」


 おお……フォルナちゃんと同じリアクションだ。

 さすがの賢者様も驚いたようだ。


「リンドブルグの娘よ……お主、魔力枯渇にはなっておらぬかのか?」

「問題ありません。真夏の夜はもう10本くらいは出していましたから」


 そういえば魔力枯渇ってなったことないね。

 みんな心配してくれるけど、体に影響はない。

 賢者様とアルベルト先生は氷柱を調べていた……軽く触っていたり、コンコンとノックしていたり。

 

「これだけの魔力を使って枯渇になっていないとは……ありえん」

「先生、シィナさんは黒髪です。魔力総量が桁違いだと私は思っています」

「黒髪だったとしても……おかしい……シィナといったか……もう一度この氷を出してくれんか?ワシの手を掴んでな」

「はいっ……いきますよっ」


 賢者様の手はシワがあって冷たい……あっちの世界の私のおじいちゃんみたいだね……少し懐かしい……

 魔力制御をして2本目の氷柱を発生させる。


「……なんじゃこれは?」

「え?普通に魔力制御をしましたけど?」

「いや……使った魔力の半分も減っていない……お主、体内の魔力以外どこから魔力を使っておる?魔石でも使っておるか?」

「はい?意味がわかりません」

「……なんじゃこの娘は……ワシも意味がわからん…………まるで……」


 まるでなんだろう?賢者様は黙ってしまった。

 普通に魔法を使ったけど変なのかな?


「エトワルド先生、これだけでも賢者称号は間違いないでしょうが、それだけではないのですっ」

「…………と言うと?」

「シィナさん、また使えますか?無属性魔法を」

「はっ!?その年で無属性魔法も使えるのか?」

「……では、よく見ていてください」


 さっきの賢者様の部屋の入口を思い浮かべてから瞬間移動をする。

 移動した先で、乱雑に積まれている本を一冊持って、賢者様の元に歩いていく。

 私が部屋から出てくると、賢者様はいいリアクションをしていた。


「これは部屋の入口に積まれていた本です」

「……確かにその本は見覚えがあるの……アルベルトよ、賢者どころではないぞ?それこそ大賢者……いや、それ以上の逸材じゃぞ」

「賢者様、無属性魔法を解明したのですが、どうしたらいいでしょう?これが相談したい事なのです」

「解明!?」

「レーア、あの本を出して」


 レーアは背負い袋から昔の賢者様の本を出して、テーブルにそっと置いてくれた。


「この本はなんじゃ?」

「昔の賢者様の本で、無属性魔法の使い方が書かれています。私は解明というか解読しただけです」


 賢者様は本を開き、ペラペラとページをめくる。


「こんな古い本どこで手に入れたのじゃ?ワシでも読めんぞ」

「学院近くの魔法道具屋さんから頂いた本です」

「学院の近くというと……ブリットの店かっ!あそこは確かに古い店じゃ……こんな掘り出し物があったとは…………これを読めるのかっ!?」

「完全ではないですが、1年以上かけて勉強しました」

「はっ!?1年?たった1年で…………アルベルトよ……ワシはもう疲れた……甘味が食べたい……」

「あっ!ありますよっ!甘味っ!今作りましょうか?」

「はえっ?作る?甘味をか?」

「まぁ、見ていてくださいっ!」


 おおっ!甘味が好きなんて賢者様は私と同類だねっ!

 アルベルト先生にスプーンだけ用意して貰って、私はかき氷を作っていく。

 最近はお皿も氷で作るのが好きなので、テーブルに人数分の氷皿を作ってからかき氷を削り出していく。

 今日も少し暑いから丁度いい。


「レーアっ!シロップっ」

「はいっ!お嬢様っ」

「……できましたっ!甘くて冷たくて美味しいかき氷ですっ」


 氷皿なので解けにくい仕様だよ。

 シロップは2種類の果物で作ったオリジナルシロップ。

 甘くて後味がサッパリしたお気に入りのシロップなので気に入ってくれると嬉しい。


「アルベルトよ……なんなのじゃこの娘は?」

「私も初めて見た魔法で……驚いています……」

「どうぞご賞味くださいっ賢者様っ」


 レーアと一緒に席について4人でかき氷を堪能する。

 丁度お茶の時間くらいだから、休憩にはもってこいだね。

 

「うまいのぉ……これは美味いっ……疲れた頭に丁度良いのっ」

「えへへ……レーア、賢者様が美味しいって」

「良かったですね、お嬢様」

「……これは……氷を細かく削って……この甘いソースが堪りませんね」

「アルベルト先生も甘味は好きですか?」

「ええ、甘い物を食べると疲れが取れますからね」


 おじいちゃんとイケメンは美味しそうにかき氷を食べてまったりしていた。

 王都の町並みを見ながら食べるのはいい感じだ。

 もう……帰ってもいいかな。

 あ……厨房へ行かないと。


 ……アレ?何をしに来たんだっけ?


 

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